コロナ禍が訪れてから3年が過ぎ、今の働き方に慣れ切った中で、政府から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを「5類」に移行する方針が示された。コロナ禍以前の暮らしが戻りつつある今、働き方を戻すかどうかが企業にとっての問題だ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が日本および世界の経済活動に大きな悪影響を与えてから3年が経過した。2023年3月は、COVID-19の感染者数の落ち着きやマスク着用ルールの緩和、イベント開催に伴う人出の回復、インバウンド需要の持ち直しなど明るい話題も増え、アフターコロナに向けた動きが進んだ。
さらに政府は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、2023年5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を示した。そこで帝国データバンクは、COVID-19の分類移行に伴う働き方の変化に関して企業の見解を探るために、全国2万7628社を対象に調査を実施した(調査期間:2023年3月17日〜31日、有効回答企業数:1万1428社)。本稿では、その調査結果を紹介する。
COVID-19の感染症法上の分類が「2類」から「5類」へと移行した場合、勤務先の働き方はコロナ禍以前と比較してどう変化するかと尋ねた結果をグラフ化したものが以下の図だ。
15.5%の企業が「半分以上異なる」と回答した。内訳は、「全く異なる(100%異なる)」が0.9%、「8割程度異なる」が3.1%、「半分程度異なる」が11.5%となった。また、「2割程度異なる」(22.5%)も含めた「新型コロナ前と異なる」とした企業は38.0%だった。一方で「新型コロナ前と同じ状態」とした企業は39.1%と4割近くに上った。なお、「2割程度異なる」(22.5%)を合わせると6割を超え、「5類」移行に伴って多くの企業がコロナ禍以前に近い働き方に戻る傾向が見て取れた。
働き方が「新型コロナ前と異なる」とした割合を業界別にみると「サービス業」が45.5%で最も高く、その中でも「広告関連」(60.2%)や「情報サービス」(54.4%)では半数を超える企業が「コロナ禍以前の働き方には戻らない」と回答した。一方で「農・林・水産業」(29.5%)は3割を下回った。従業員数別に見ると、テレワーク継続の声もあり、従業員規模に比例して、新型コロナ前と働き方が異なる割合は高くなった。特に「1000人超」(52.9%)の企業では5割超だった。
COVID-19の感染拡大から3年が過ぎ、経済活動の正常化も徐々に進みつつある。2023年4月5日に発表された「TDB景気動向調査(2023年3月調査)」でも、感染者数の落ち着きやマスク着用ルールの緩和に伴い、消費者のマインドが明るくなるなどアフターコロナに向けた動きは進んでいる。
本調査の結果、COVID-19の感染症法上の分類が「5類」へ移行した後の働き方について、コロナ禍以前より「半分以上異なる」と回答した企業は15.5%にとどまった。変化の濃淡はあるものの「新型コロナ前と異なる」とした企業は、「情報サービス」などを含む「サービス業」を中心にその割合が高いことが明らかになった。さらに、従業員数が1000人を超える企業では5割以上となるなど、従業員に比例して働き方を変える企業は増加傾向にある。一方で、「コロナ禍以前と同じ状態」へ回帰する企業は39.1%と4割近くに上り、「農・林・水産業」や「建設業」などの企業でその傾向は高い。
引き続きテレワークを継続する企業がある一方で、感染対策を意識しながらも徐々にコロナ禍以前の働き方に戻す企業も多い。今後、企業を取り巻く環境は働き方だけではなく、コロナ禍で本社を郊外へと移転した企業の都市部回帰など、新たな変化が生じる可能性もあるだろう。
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