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新型コロナ「5類」移行後の働き方調査 コロナ禍前に戻すか否か、企業の判断は?

コロナ禍が訪れてから3年が過ぎ、今の働き方に慣れ切った中で、政府から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを「5類」に移行する方針が示された。コロナ禍以前の暮らしが戻りつつある今、働き方を戻すかどうかが企業にとっての問題だ。

» 2023年04月26日 07時30分 公開
[キーマンズネット]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が日本および世界の経済活動に大きな悪影響を与えてから3年が経過した。2023年3月は、COVID-19の感染者数の落ち着きやマスク着用ルールの緩和、イベント開催に伴う人出の回復、インバウンド需要の持ち直しなど明るい話題も増え、アフターコロナに向けた動きが進んだ。

 さらに政府は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、2023年5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を示した。そこで帝国データバンクは、COVID-19の分類移行に伴う働き方の変化に関して企業の見解を探るために、全国2万7628社を対象に調査を実施した(調査期間:2023年3月17日〜31日、有効回答企業数:1万1428社)。本稿では、その調査結果を紹介する。

「5類」移行後の働き方、コロナ禍以前に戻すか、継続か

 COVID-19の感染症法上の分類が「2類」から「5類」へと移行した場合、勤務先の働き方はコロナ禍以前と比較してどう変化するかと尋ねた結果をグラフ化したものが以下の図だ。

5類移行後の働き方、勤務先ではどうするか(出典:帝国データバンクのリリース資料)

 15.5%の企業が「半分以上異なる」と回答した。内訳は、「全く異なる(100%異なる)」が0.9%、「8割程度異なる」が3.1%、「半分程度異なる」が11.5%となった。また、「2割程度異なる」(22.5%)も含めた「新型コロナ前と異なる」とした企業は38.0%だった。一方で「新型コロナ前と同じ状態」とした企業は39.1%と4割近くに上った。なお、「2割程度異なる」(22.5%)を合わせると6割を超え、「5類」移行に伴って多くの企業がコロナ禍以前に近い働き方に戻る傾向が見て取れた。

「コロナ禍前には戻らない」、社員数1000人超では5割を超える

 働き方が「新型コロナ前と異なる」とした割合を業界別にみると「サービス業」が45.5%で最も高く、その中でも「広告関連」(60.2%)や「情報サービス」(54.4%)では半数を超える企業が「コロナ禍以前の働き方には戻らない」と回答した。一方で「農・林・水産業」(29.5%)は3割を下回った。従業員数別に見ると、テレワーク継続の声もあり、従業員規模に比例して、新型コロナ前と働き方が異なる割合は高くなった。特に「1000人超」(52.9%)の企業では5割超だった。

「働き方を戻さない」とした割合、業界別(出典:帝国データバンクのリリース資料)

「コロナ禍前には戻さない」とした企業の声

  • 在宅勤務の環境が整い、以前と変わらない生産性を確保できているので、従業員を職場に戻す意味はない(靴卸売、東京都)
  • コロナ禍によって働き方改革が進んだことは良いことだと思う。当社はほぼ完全な在宅勤務体制となった(ソフト受託開発、東京都)
  • 今後もコロナ禍以前に戻ることはなく、テレワークなどは引き続き継続されるのではないかと思う(広告代理、大阪府)
  • 出勤や外出に関する制限がなくなり、従業員の出社がコロナ禍前の水準に戻る。ただし、拠点間や取引先との会議は相互の出張が減少し、Web会議の活用が続くと思われる(ゴムベルト製造、兵庫県)

「コロナ禍前に回帰する」とした企業の声

  • 様子を見ながらコロナ禍以前の状態に戻す(一般管工事、静岡県)
  • 工場勤務の人は(工場への)出勤が必要だった。中小企業は従業員の一体感や公平感が大事なので、バックオフィスだけリモート勤務というわけにはいかない(じゅう器卸売、群馬県)
  • 当社は現場作業なので、コロナの前後で働き方の変化は特にない(築炉工事、神奈川県)

 COVID-19の感染拡大から3年が過ぎ、経済活動の正常化も徐々に進みつつある。2023年4月5日に発表された「TDB景気動向調査(2023年3月調査)」でも、感染者数の落ち着きやマスク着用ルールの緩和に伴い、消費者のマインドが明るくなるなどアフターコロナに向けた動きは進んでいる。

 本調査の結果、COVID-19の感染症法上の分類が「5類」へ移行した後の働き方について、コロナ禍以前より「半分以上異なる」と回答した企業は15.5%にとどまった。変化の濃淡はあるものの「新型コロナ前と異なる」とした企業は、「情報サービス」などを含む「サービス業」を中心にその割合が高いことが明らかになった。さらに、従業員数が1000人を超える企業では5割以上となるなど、従業員に比例して働き方を変える企業は増加傾向にある。一方で、「コロナ禍以前と同じ状態」へ回帰する企業は39.1%と4割近くに上り、「農・林・水産業」や「建設業」などの企業でその傾向は高い。

 引き続きテレワークを継続する企業がある一方で、感染対策を意識しながらも徐々にコロナ禍以前の働き方に戻す企業も多い。今後、企業を取り巻く環境は働き方だけではなく、コロナ禍で本社を郊外へと移転した企業の都市部回帰など、新たな変化が生じる可能性もあるだろう。

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