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SAPとGoogle Cloudがパートナーシップを大幅に拡張 ユーザーのメリットを解説

SAPとGoogle Cloudはパートナーシップを大幅に拡張すると発表した。企業のデータ環境をシンプルにしてビジネスデータの力を引き出すための、オープンデータサービスを提供するという。その機能の詳細は。

» 2023年05月15日 12時45分 公開
[大島広嵩キーマンズネット]

 SAP SE(以下、SAP)とGoogle Cloudは2023年5月12日、パートナーシップを大幅に拡張すると発表した。企業のデータ環境をシンプルにしてビジネスデータの力を引き出すための、オープンデータサービスを提供する。

SAPとGoogleがパートナーシップを拡張する狙い

 SAPは、「SAP Datasphere」のソリューションとGoogleのデータクラウドを組み合わせて、企業全体からデータを取り込むエンド・ツー・エンドのデータクラウドを構築する。企業はデータ資産全体をリアルタイムで確認し、Google CloudとSAPソフトウェアへの投資から最大限の価値を引き出せるようになるという。

 データはDX(デジタルトランスフォーメーション)とAI(人工知能)開発の基盤となる。企業は、蓄積してきたデータの価値を実感するまでに、複雑なデータ統合や、カスタム分析エンジンやジェネレーティブAI、自然言語処理(NLP)モデルの構築など、多大なリソースを費やしてる。

 SAPシステムから得られるデータは組織にとって貴重な資産の一つであり、サプライチェーンや財務予測、人事記録、オムニチャネル小売などに関する重要な情報を含んでいる。SAP Datasphereは、ミッションクリティカルなデータがどこにあるかに関係なく、企業全体のデータとして統合する。

 あらゆるデータソースからSAPデータと非SAPデータをGoogle Cloud上で簡単に組み合わせてビジネスに関連する明確に定義されたデータ基盤を構築することで、企業はDXを加速できる。

 SAPのクリスチャン・クライン氏(CEO兼エグゼクティブ・ボード・メンバー)は次のように述べた。

 「SAPのシステムとデータをGoogleのデータクラウドに統合することで、企業はあらゆるデータからより多くの価値を引き出す新しい機会を得られます。SAPとGoogle Cloudは、オープンデータへの取り組みにコミットしており、パートナーシップの拡張は、異なるシステムやデータベース、環境に保存されたデータ間の壁を取り払うのに役立ちます。私たちのお客さまは、当社のシステムにすでに組み込まれているビジネスAIだけでなく、統合されたデータ基盤からも恩恵を受けられます」(クライン氏)

 また、Google Cloudのトマス・キュリアン氏(CEO)は次のように述べる。

 「SAPとGoogle Cloudは、エンタープライズAIの将来の基盤となる、非常に包括的でオープンなデータクラウドを提供することが可能になりました。DXにとって、データほど重要なリソースはありません。SAPのデータとシステムを我々のデータクラウドと統合することで、お客さまはGoogle Cloudの分析機能だけでなく、高度なAIツールや大規模言語モデルを活用して、データから新しい見識を見出せるようになります」(キュリアン氏)

新サービスの具体的な機能

 SAPとGoogle Cloudが提供する新しいオープンデータサービスは、Google Cloudのユーザーや、Google Cloud上で「RISE with SAP」ソリューションを利用するユーザーに、以下の機能を提供する。

ビジネスクリティカルなデータにリアルタイムでアクセス

 SAP Datasphereと「Google Cloud BigQuery」(以下、BigQuery)の統合により、重要なデータに重複することなくリアルタイムでアクセスできるようになる。また、「SAP S/4HANA」や「SAP HANA Cloud」などのSAPソフトウェアシステムのデータを統合できるため、Googleのデータクラウド上で最も重要なデータを包括的に把握できるようになる。

データ環境の簡素化

 SAPとGoogle Cloudは、強力なデータレプリケーションおよびフェデレーション技術を共同開発した。これにより、企業はSAPソフトウェアのデータをBigQuery環境に簡単に統合し、SAPとGoogle Cloudのデータ分析機能を活用できるようになる。

 また、SAP DatasphereとBigQueryを横断するクエリをフェデレーションし、SAPと非SAPのデータを結合できる。これにより、マーケティングや販売、財務、サプライチェーンなどにわたるソースで発生するデータのサイロ化を解消できる。例えば、卸売業の流通モデルを持つユーザーは製品が販売経路を経て顧客に届くまでの過程において、その全容を把握できる。

Google CloudのAIおよび機械学習で信頼性の高いインサイトを作成

 GoogleのAIおよび機械学習(ML)のサービスを利用して、SAPおよび非SAPシステムからのデータに基づいてモデルをトレーニングできる。

高度な分析を実行

 Google Cloudの「SAP Analytics Cloud」ソリューションの分析機能を活用して、モデルの精度を向上させながら、財務やビジネスの成果を分析できる。SAP Datasphereを使用してBigQueryのデータを統合することで、単一かつ包括的な視点でビジネスの計画を立てられる。

サステナビリティーのために共同ソリューションを活用

 SAPとGoogle Cloudは、SAP DatasphereとGoogle Cloudが提供する広範なESGデータセットやインサイトを組み合わせて、実用的なインサイトでサステナビリティーに向けた取り組みを加速する方法を模索している。

グローバルでGoogle Cloud上のSAP BTPを利用

 SAPは、SAP Analytics CloudとSAP Datasphereのサポートを含む、「SAP Business Technology Platform」(SAP BTP)と「SAP HANA Cloud on Google Cloud」の地域サポートを拡大することでマルチクラウドサービスを推進する。SAPとGoogle Cloudは、2023年に新たに5つのリージョンでSAP BTPの提供を開始し、2025年までに合計8つのリージョンでサポートする計画をしている。

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