似た機能を持つITツールが増える中、「なぜ定着する製品とそうでない製品が生まれるのか」。IT関連の主要50製品を対象に、利用イメージや認知度の違いから、企業が選ぶツールの条件を探った。
業務効率化などを目的とした新たな製品やサービスが次々とリリースされている。近ごろは、業務ツールにもAI機能が搭載されるなど、従来の製品カテゴリーを超えた機能拡張も進んでいる。一方で、選択肢が増えたことで、企業には「自社の課題解決に本当に適した製品はどれなのか」を見極める難しさもある。IT担当者は、単に新しい技術や製品を理解するだけではなく、数多くの選択肢の中から自社の業務や既存システムとの適合性を判断し、導入後の運用まで見据えて選定しなければならない。
そこで今回キーマンズネットでは、6分野・50製品を対象に、「IT製品・サービスの認知度調査」(2026年6月実施、有効回答238件)を実施した。
今回の調査では、「AIチャット・AIアシスタント」「AIコーディング支援」「データ分析・BIツール」「チャット・コラボレーション」「グループウェア」「端末管理・エンドポイント保護」の6つの製品分野で代表的な製品を挙げ、「名前だけ知っている」「何ができるか知っている」「具体的な利用イメージができる」「何も分からない」に分け、製品・サービスの理解度を聞いた。
まずは「AIチャット・AIアシスタント」の回答割合をまとめたものが、以下の表だ(単位:%、以下同)。
| 製品名 | 名前だけ知っている | 何ができるかを知っている | 具体的な利用イメージができる | 何も分からない |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT | 4.6 | 27.3 | 67.2 | 0.8 |
| Microsoft Copilot | 9.7 | 22.3 | 66.0 | 2.1 |
| Google Gemini | 9.7 | 26.1 | 60.1 | 4.2 |
| Claude | 21.8 | 23.1 | 37.8 | 17.2 |
| NotebookLM | 19.3 | 16.8 | 28.2 | 35.7 |
| Perplexity | 11.3 | 16.0 | 7.6 | 65.1 |
| Genspark | 23.5 | 15.5 | 5.5 | 55.5 |
| Stable Diffusion | 11.8 | 10.1 | 7.1 | 71.0 |
| Zoom AI Companion | 26.5 | 15.5 | 6.7 | 51.3 |
| Notion AI | 25.2 | 13.0 | 5.5 | 56.3 |
| Confluence AI | 15.1 | 5.5 | 3.4 | 76.1 |
なぜ、同じIT製品でありながら、現場での理解度や利用イメージに差が生まれるのか。今回の調査からは、現場に浸透しやすいITツールの共通点も見えてきた。
「AIチャット・AIアシスタント」では、「ChatGPT」「Microsoft Copilot」「Google Gemini」の3製品で、いずれも6割以上が「具体的な利用イメージができる」と回答した。これらの製品に共通するのは、「文章作成」「メール作成」「会議内容の要約」「情報検索」など、日常業務と結び付きやすい用途を持つ点だ。生成AIの利用経験にかかわらず、自身の業務に置き換えた活用シーンを想像しやすいことが、高い理解度につながったと考えられる。
一方、「Claude」や「NotebookLM」は一定の認知を得ているものの、具体的な利用イメージでは主要3製品との差が見られた。また、「Perplexity」や「Stable Diffusion」では、名前や機能を知っている回答は一定数あるものの、業務でどのような価値を発揮できるのかについては、まだ十分に浸透していないようだ。
「AIコーディング支援」は、AIチャット・AIアシスタントと比べると認知度は限定的だが、「GitHub Copilot」や「Claude Code」では具体的な利用イメージを持つ回答も多かった。一方で、「Cursor」や「Amazon Q Developer」などは認知拡大の途上にあると言えるだろう。
その背景には、AIコーディング支援の主な利用者がソフトウェア開発者に限られるということが考えられる。職種を問わず活用される生成AIとは異なり、開発業務に特化したツールであるため、一般的な認知は広がりにくい。一方で、開発人材不足や生産性向上へのニーズを背景に、開発現場では導入・検討が進んでおり、生成AI活用の次なる成長領域として注目される。
| 製品名 | 名前だけ知っている | 何ができるかを知っている | 具体的な利用イメージができる | 何も分からない |
|---|---|---|---|---|
| GitHub Copilot | 31.1 | 19.3 | 14.7 | 34.9 |
| Cursor | 13.0 | 10.9 | 10.1 | 66.0 |
| Claude Code | 17.2 | 23.1 | 19.7 | 39.9 |
| Gemini Code Assist | 20.6 | 17.2 | 13.4 | 48.7 |
| Amazon Q Developer | 14.7 | 6.3 | 5.0 | 73.9 |
| Visual Studio IntelliCode | 13.9 | 11.3 | 8.4 | 66.4 |
データ分析・BIツールは、6分野の中でも「具体的な利用イメージができる」と回答した割合が低く、「何も分からない」とする回答も目立った。「Microsoft Power BI」や「Tableau」は比較的認知されているものの、その他の製品では理解度に差が見られる。
背景には、BIツールが日々の業務で直接利用するコミュニケーションツールや業務アプリとは異なり、データ分析や意思決定を支援する「裏側の基盤」として利用されるケースが多いことがある。経営企画やデータ分析部門では活用が進む一方で、一般社員にとっては「何を改善できるツールなのか」「自身の業務でどう役立つのか」をイメージしにくい。
企業ではデータ活用の重要性が高まっているものの、ツール導入だけで成果につながるわけではない。分析するデータの整備や活用する部門間の連携、現場への利用定着まで含めた取り組みが求められており、BIツールの価値を社内全体へどう浸透させるかが、今後の普及に向けた課題となりそうだ。
| 製品名 | 名前だけ知っている | 何ができるかを知っている | 具体的な利用イメージができる | 何も分からない |
|---|---|---|---|---|
| Microsoft Power BI | 24.4 | 26.1 | 18.1 | 31.5 |
| Tableau | 18.1 | 19.7 | 14.3 | 47.9 |
| Looker Studio | 10.1 | 8.0 | 4.6 | 77.3 |
| Qlik Sense | 9.2 | 7.6 | 7.1 | 76.1 |
| Domo | 8.0 | 5.9 | 2.9 | 83.2 |
| MotionBoard | 10.5 | 9.2 | 8.8 | 71.4 |
| Zoho Analytics | 10.5 | 5.5 | 1.7 | 82.4 |
| Dr.Sum | 10.9 | 12.2 | 10.5 | 66.4 |
チャット・コラボレーション分野は、「具体的な利用イメージができる」と回答した割合が全分野で最も高く、日常業務に欠かせないコミュニケーション基盤として定着していることが分かる。特に「Slack」や「Microsoft SharePoint」「LINE WORKS」は高い理解度を得ており、社内外の情報共有やコミュニケーション手段として広く認知されている。
一方で、「Confluence」や「NotePM」「ナレカン」など、ナレッジ共有を主目的とする製品では「何も分からない」とする回答も多く、同じコラボレーション領域でも理解度に差が見られた。その背景には、チャットツールが「メッセージを送る」「会話を共有する」といった利用場面を想像しやすいのに対し、ナレッジ共有ツールは情報の蓄積や活用による中長期的な業務改善を目的としており、導入効果を実感するまでに時間がかかることがある。単なるツール導入ではなく、情報を蓄積・活用する文化づくりまで含めた運用設計が、普及に向けたポイントになりそうだ。
| 製品名 | 名前だけ知っている | 何ができるかを知っている | 具体的な利用イメージができる | 何も分からない |
|---|---|---|---|---|
| Slack | 23.9 | 26.1 | 29.0 | 21.0 |
| Chatwork | 23.1 | 22.3 | 18.5 | 36.1 |
| LINE WORKS | 30.3 | 23.5 | 21.8 | 24.4 |
| Confluence | 10.9 | 8.8 | 7.1 | 73.1 |
| Notion | 18.9 | 18.5 | 14.3 | 48.3 |
| Microsoft SharePoint | 13.9 | 24.4 | 46.2 | 15.5 |
| NotePM | 11.3 | 5.5 | 4.6 | 78.6 |
| ナレカン | 7.6 | 4.2 | 1.3 | 87.0 |
グループウェアでは、「Microsoft 365」が「何ができるかを知っている」「具体的な利用イメージができる」と回答した割合が高く、企業の業務基盤として広く浸透していることが分かる。また、「Google Workspace」や「Zoom Workplace」「サイボウズ Office/Garoon」なども一定の認知を獲得しており、企業規模や業務環境に応じて複数の選択肢が定着している。
近ごろはAIアシスタント機能やセキュリティ強化、他システムとの連携など、単なるコミュニケーション基盤にとどまらない価値が求められている。今後は、既存業務を支えるツールとしての使いやすさに加え、AI活用による業務効率化や情報活用をどこまで実現できるかが、製品選定の重要なポイントになりそうだ。
| 製品名 | 名前だけ知っている | 何ができるかを知っている | 具体的な利用イメージができる | 何も分からない |
|---|---|---|---|---|
| Microsoft 365 | 5.0 | 22.3 | 68.9 | 3.8 |
| Google Workspace | 14.3 | 30.7 | 45.4 | 9.7 |
| Zoom Workplace | 22.3 | 19.3 | 23.1 | 35.3 |
| サイボウズ Office/Garoon | 29.0 | 23.9 | 25.6 | 21.4 |
| desknet's NEO | 11.8 | 18.1 | 16.8 | 53.4 |
| Lark | 5.9 | 5.5 | 3.4 | 85.3 |
端末管理・エンドポイント保護分野は、サイバー攻撃対策やテレワーク環境の整備など重要性が高まる一方で、「具体的な利用イメージができる」と回答した割合は比較的低く、製品による理解度の差も見られた。「Microsoft Intune」や「Google Endpoint Management」など、端末管理やクラウド環境との連携を想像しやすい製品は一定の認知を得ているものの、専門性の高いセキュリティ製品では、一般利用者にとって導入目的や効果が分かりにくい傾向がある。
その背景には、端末管理・エンドポイント保護が利用者自身の業務を直接効率化するツールではなく、情報システム部門が企業全体の安全性を維持するための基盤であることが考えられる。導入によるメリットが日常業務の改善として実感しにくい一方で、インシデント発生時には企業活動を支える重要な役割を担う。
ゼロトラストやクラウド活用が進む中、端末やアカウントを継続的に保護する仕組みの重要性はさらに高まっている。今後は、単にセキュリティ機能を提供するだけでなく、導入効果や必要性を社内で共有し、経営層や利用部門を含めて価値を理解してもらうことが普及に向けた課題となりそうだ。
| 製品名 | 名前だけ知っている | 何ができるかを知っている | 具体的な利用イメージができる | 何も分からない |
|---|---|---|---|---|
| Microsoft Defender for Endpoint | 20.6 | 26.5 | 23.5 | 29.4 |
| Microsoft Intune | 15.1 | 13.0 | 17.2 | 54.6 |
| Google Endpoint Management | 18.1 | 11.8 | 8.0 | 62.2 |
| SKYSEA Client View | 19.7 | 19.3 | 21.4 | 39.5 |
| ジョーシス | 22.7 | 10.1 | 3.4 | 63.9 |
| AssetView | 14.3 | 8.8 | 6.7 | 70.2 |
| LANSCOPE Endpoint Manager | 14.3 | 13.4 | 12.2 | 60.1 |
| HENNGE Endpoint & Managed Security | 18.5 | 11.3 | 6.7 | 63.4 |
| Cybereason | 8.4 | 5.0 | 2.1 | 84.5 |
関連して、日頃利用しているITツール・サービスについて感じていることや業務上の課題をフリーコメントで聞いたところ、大きく3つの傾向が見えてきた。
1つ目は、「自社に適したサービスを選定する難しさ」だ。IT製品・サービスの数が増え、さらにAIをはじめとした技術革新のスピードも加速する中、「どの製品が自社に適しているのか判断しづらい」という声が多く寄せられた。
「進化のスピードが速く、費用対効果の算定が難しい」「AI関連の新しいツールやサービスが次々と登場し、情報収集だけでも負担になっている」「複数の製品に似たAI機能が搭載され、ツールの整理や統廃合の判断に迷う」といった意見からも、選択肢の増加そのものが新たな課題になっていることが分かる。
2つ目は、「継続的なコスト負担への懸念」だ。近ごろ、多くのITサービスが買い切り型からサブスクリプション型へ移行しており、導入後も継続的に発生するライセンス費用を課題とする声が目立った。
「経営層から継続的な支出への理解を得にくい」「海外製品が多く、円安による価格上昇が不安」「物価高騰によってPCやネットワーク機器の更新費用が増え、限られた予算内での調整が難しい」といった意見から、IT投資において初期費用だけでなく、長期的な運用コストをどう抑えるかが重要な判断軸になっていることがうかがえる。
3つ目は、「セキュリティと利便性の両立」という課題だ。企業では情報漏えいやシャドーIT対策の重要性が高まる一方で、過度な制限によってツールの活用が進まないというジレンマもある。
「セキュリティ上の懸念は理解しているが、もっと柔軟にITツールを利用したい」「社内ポリシーによる制限で、サービスの機能を十分活用できない」「導入したいサービスがあっても、簡単に試せる環境がない」といった声からも、企業には安全性を確保しながら新しい技術を取り入れるための運用設計が求められている。
今回の調査から見えてきたのは、企業のIT活用における課題が「良い製品を見つけること」だけではなく、「増え続ける選択肢の中から自社に合うものを選び、コストやガバナンスを考慮しながら定着させること」へ移っているという点だ。
以上、前編では6分野50製品を対象に、認知度や導入・検討状況を中心に分析した。後編では、製品選定時に重視するポイントや注目しているサービス、情報収集において重視する点などをさらに掘り下げ、企業がIT投資を判断する際の視点を掘り下げていく。
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