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情シスが地方で働くにはどうしたらいい? 給与やスキル、働き方を徹底整理

情シスは全国津々浦々に仕事があります。都内の情シスがフルリモート可能な企業に在籍して地方に住む選択肢もあるでしょう。地方情シスへのインタビューやキャリア相談をしてきた経験を基に、地方情シスを取り巻く環境を整理します。

» 2023年07月14日 07時00分 公開
[久松 剛エンジニアリングマネージメント]

情シスのキャリア戦略

エンジニアリングマネージメント社長の久松氏が、情シス部長を2社で担当した経験を基に、情シスのキャリア戦略で役立つ情報を発信します。

 コロナ禍はニューノーマルな働き方が叫ばれ、フルリモートやワーケーション、地方創生を含めた都心から離れた生活などが取り沙汰されていました。しかし、コロナの感染症法上における分類が2023年5月に5類になり、テレワークを出社に切り替える企業が増加しています。

 仕事が東京や名古屋、大阪、福岡に集中しやすいプログラマーと違い、ITを利用している企業さえあれば、情シスは全国津々浦々に仕事があります。都内のフルリモート可能な企業に情シスとして在籍し、地方に住む選択肢もあるでしょう。

 私が採用コンサルタントとして地方の情シス人材へのインタビューやキャリア相談をしてきた経験を基に、今回は地方在住の情シスをテーマに取り上げます。情シスの方は地方移住や転職の参考にしてください。

地方企業の情シスと都内企業のテレワーカー情シスの違い

 地方在住の情シスには、大きく地元企業に勤めているケースと、東京の仕事を受けて地方でテレワークしているケースの二つがあります。

地方の企業に勤める情シスの傾向

 都内でも情シスの待遇にはばらつきがありますが、情シスによってはDXコンサルタントとしてコンサルティング企業から引き抜きがあり、高年収が提示されることがあります。またコンサルタントにならなくても、社内システムをクラウドシフト&リフトできたり、「Python」などで基幹システムと事業サービスの連携部分をプログラミングできたりするなど、レアリティーの高いスキルセットがあると高年収になるでしょう。

 一方、地方部は未だ待遇が低い傾向にあります。地方情シスの方に聞いた話をまとめると、東京>名古屋>大阪>福岡(ただしスタートアップを除く)で待遇が低下するようです。それ以外の地域は、東京の市場感における待遇を上長に伝えることで、ごく希に改善されたり、士業のように地方であってもキャッシュフローを理解している組織に関わることで、待遇が良くなることがあるようです。

 給与が低い組織の傾向について解説します。評価制度や給与制度がエンジニア職とそれ以外の職種で独立をしていないケースや、情シスについてはエンジニア職にカウントされていないケースです。

 ある地方の医療系の組織に在籍する情シスのお話ですが、給与制度が全職種共通であり、診療報酬点数ベースで給与決定がされていました。情シスは当然診療をしないため、何をやっても0点であり、低い基本給しか支払われず、年収200万円強となってしまい、誰も応募がないという嘆きがありました。

 こういう場合は制度の改修も難航します。評価を適用する対象者が組織に少なく、評価や給与制度の設計の費用対効果が小さいためです。正社員契約を諦めて業務委託になるほうが待遇を改善するには現実的でしょう。

 また、地方の情シスは社内システムのプログラミング担当と情シス担当が同じケースを多く見かけます。社内PCやサーバの面倒をみつつ、内製の勤怠管理システムなどを「VBA」で開発しがちな傾向にあります。プログラミング思考ができる、業務設計ができるなどは転職市場で評価されるものの、VBAは給与提示が低い傾向にあるため、モダンなプログラミング言語を使うことを強く勧めます。

都内企業にテレワークする情シスの傾向

 フルリモートや全国採用といった働き方は、都内に本社があるベンチャーやスタートアップが人員確保の観点で開始しました。2018年頃からスタートアップを中心に始まり、2020年のコロナ禍で採用する企業が増えました。これらは好景気を背景に人材が不足し、企業側が多少条件を譲歩したことによって成り立った働き方ではないでしょうか。

 コロナ禍におけるテレワークの拡大と共に、地域創生の文脈で地方移住が取りだたされるようになりました。地方のデジタル人材と話すと、「大自然で子供を育てたい」といった楽しげな移住は少なく、介護・看護問題を理由とした不可抗力による移住をされる方が多い印象があります。

 情シス人材でもテレワークを達成されている方はいました。かなり新しい働き方と言えます。共通する要素として2つの条件がありました。

  • 代わりになる人がほぼいないスキルセット
  • 全員フルリモートであるため出社しても人が居ない。もしくはキッティングやヘルプデスク担当の人材が別に在籍している

 前者については「社内システムをクラフドリフトできる」や「社内システムと自社サービスを連携させるプログラミングスキルがある」などが挙げられます。こうした人材の待遇は都内並みです。

 また、月一回程度の本社出張によってコミュニケーションを取る方もいます。職種を問わずテレワークを円滑に進める上での天敵の一つは「彼は仕事をしているんだろうか」という疑心暗鬼にあります。オフラインコミュニケーションも交えることで存在をアピールしたり、従業員とのコミュニケーションや情報格差を埋めたりするような取り組みをするのがポイントです。

2023年現在、都内情シス人材が地方移住をするという選択肢

 2022年11月から始まった外資系IT企業やメガベンチャー、スタートアップなどの業績の低迷により、財政を緊縮した組織は多く存在します。収支が厳しい組織の共通点として、職種問わずテレワーク人材の出張頻度が大幅に減少しています。中には全く出張が無くなった人もいます。

 こうなると現職に限界を感じ転職を視野に入れる方も少なくありませんが、地方で都内の待遇を維持した転職はかなり難易度が高いものとなります。余裕を持って転職活動し、活動は長期戦になることも想定した方がよいでしょう。

 企業選びの一つの着地点として、自身が住む地域から通える範囲にある、在籍している企業の支社に出社するという選択肢があります。私も地方在住の転職希望者とお話しすることが多いのですが、「フルリモートは厳しいが、支社への出社であれば可能」という企業を何社か見つけることができました。交渉の過程で打診してみるとよいでしょう。

 テレワークが上手くいっており、ほどほどの本社出張が残っている企業の場合は事業が上手くいっている証拠なので、現職を大切にすることをお勧めします。

著者プロフィール:久松 剛(エンジニアリングマネージメント 社長)

 エンジニアリングマネージメントの社長兼「流しのEM」。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学で大学教員を目指した後、ワーキングプアを経て、ネットマーケティングで情シス部長を担当し上場を経験。その後レバレジーズで開発部長やレバテックの技術顧問を担当後、LIGでフィリピン・ベトナム開発拠点EMやPjM、エンジニア採用・組織改善コンサルなどを行う。

 2022年にエンジニアリングマネージメントを設立し、スタートアップやベンチャー、老舗製造業でITエンジニア採用や研修、評価給与制度作成、ブランディングといった組織改善コンサルの他、セミナーなども開催する。

Twitter : @makaibito


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