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1番導入されているERPは? 利用実態を企業規模別、業界別に徹底調査ERPの利用状況(2023年)/前編

ERPは経営資源を可視化し、企業の意思決定スピードを早めるため、環境変化の激しい昨今において重要なツールだ。キーマンズネットが実施したアンケート調査を基に、企業規模別、業界別のERP導入状況を紹介する。

» 2023年08月24日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 ERPは経営資源を可視化し、企業の意思決定スピードを早められる。環境変化の激しい昨今において重要なツールの一つだ。「ITR Market View:ERP市場2023」によると、2021年度のERP市場の売上金額は1467億円と前年度比16.3%増、2021〜2026年度におけるCAGR(年平均成長率)は10.5%と予測され、今後も利用企業は増加する見込みだ。

 そこでキーマンズネットは「ERPの利用状況に関するアンケート(2023年)」(期間:2023年7月28日〜8月16日、回答件数:188件)を実施した。前編となる本稿は、企業規模別、業界別のERP導入状況を紹介する。多くの企業が導入しているERP製品は何だろうか。

企業規模別、業界別のERP導入状況

 はじめにERPの導入状況を聞いたところ、43.1%が「利用中」、10.1%が「導入予定」となった。ただし従業員規模別では、501人を超える中堅企業や大企業の過半数が導入済みの一方、100人以下では1割未満、加えて8割が「導入予定もない」と回答し、大きな差が見られた(図1)。

図1 ERPの導入状況(従業員規模別)

 100人以下の中小企業がERPを導入しない理由としては「導入やリプレース予算を確保できないため」(35.5%)が最多であった。「個別機能のパッケージソフトで間に合うため」(25.8%)、「『Microsoft Excel』や『Microsoft Access』などで間に合うため」(22.6%)のように、予算の都合上、他製品で代用しているのが実情と見られる(図2)。

図2 ERPを導入しない理由(従業員数100人以下)

 どのような領域でERPを活用しているのかを聞いたところ、全体では「財務会計」(57.0%)、「購買管理」(54.0%)、「販売管理」(51.0%)が上位に挙がった。業種によって差は大きく、例えばIT関連業では「在庫管理」領域での利用が少なく、製造業では「生産管理」や「在庫管理」、サービス業では「顧客管理」領域での利用が多いなど、業界特性が色濃く出た(図3)。

図3 ERPの利用領域(業種別)

 最も多くの領域でERPを利用しているのは製造業で「購買管理」「生産管理」「販売管理」「在庫管理」「財務会計管理」の5領域で利用率が過半数を超た。製造業においては、国内外に散らばる拠点の情報を素早く収集・管理し、意思決定スピードを早めるニーズが高いことやニーズが高いことや法対応があること、旧来より多くの企業でERP導入が進められてきたことなどが背景にあるだろう。

 今後の動向としては、2022年1月の改正電子帳簿保存法や2023年10月のインボイス制度などの法改正を背景に、業種問わずニーズが増加すると予測される。

一番導入されているERP製品は……?

 企業ではどのようなERPが利用されているのだろうか。具体的なサービス名を聞いたところ、全体では「SAP S/4HANA」(28.0%)、「SAP ERP(ECC6.0)」(21.0%)などのSAPのERPの利用率が高かった。

 従業員規模別に見ると、SAP製品は特に5001人以上の大企業、「奉行 V ERP」や「GLOVIAシリーズ」は500人以下の中堅・中小企業、「OBIC7」は501〜1000人規模の中堅企業、「Microsoft Dynamics 365」は規模問わず利用されている傾向にあるなど、サービスごとに特色が見られた(図4)。

図4 導入済み・導入予定のERPサービス名

 また、導入ERPの選定理由をフリーコメントで集めたところ「グローバルな導入実績」「海外と共通化するため」といった「グローバル対応」や、「ニーズに合わせてカスタマイズしたい」「機能拡張性が高い」にような「カスタマイズ性の高さ」の2つに意見が集中した。

 昨今、国内市場から国外市場に商機を求める企業が増える中、言語や通貨、商習慣や法規制が異なる国に対応しやすいことも重要なポイントになっている。

「オンプレ型→クラウド型」への移行理由TOP3

 ERPの導入形態からも動向を考察したい。現在のERP導入形態は「オンプレミス」(48.0%)とクラウド型の「SaaS」(36.0%)、「IaaS、PaaS」(20.0%)が二分しており、カスタマイズ性に優れるオンプレミス型を選択している企業が半数を占める(図5)。

図5 ERPの導入形態

 また、オンプレミス型のERPを導入している企業の64.6%が、今後オンプレミスのシステムをクラウドサービスへ移行する可能性が「ある」と回答。この値が2022年7月に実施した前回調査から10.5ポイント増加していることからも、企業におけるERPのクラウドリフト&シフトは進むと予測できる(図6)。

図6 オンプレミス型ERPからクラウド型ERPへの移行可能性

 クラウド移行の理由としては「ハードウェアの更新があるため」(38.7%)や「システム集約による運用コスト削減のため」(32.3%)、「ビジネスや業務処理スピード向上のため」(32.3%)が上位に挙がり、コストメリットに加えビジネススピードの向上も大きな目的となっている(図7)。

図7 クラウド型ERPへの移行理由

 つまり、ビジネス環境の変化に対応できる体制をコストバランスを見つつ構築していくことが、これまで以上に求められているのだろう。カスタマイズ性の高いオンプレミスという選択肢だけではなく、クラウドサービスも活用し、カスタマイズやアドオン開発などの手法を用いた上で、自社にあったERP環境構築の最適解を模索する企業が増えていると見られる。

お詫び:記事中の表現「はじめにERPの導入状況を聞いたところ、43.1%が『利用中』、10.1%が『導入予定』となり、過半数の企業でERPの導入に前向きであることが分かった」において、導入に前向きな企業は10.1%であるにもかかわらず、過半数が前向きと表現していたため、該当する表現をカットいたしました(2023年9月6日)

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