アンケート回答者にERPに対する満足度やリプレースの予定などを尋ねたところ、従業員規模500人がボーダーラインとなり、多くの点で傾向が異なることが分かった。また、「SAP2027年の壁」への対応策の一つの「あるサービス」も導入率に開きが見られた。
ERPを利用している企業を従業員数500人で分けると、利用に対する満足度やリプレースの予定など、多くの点が異なるという。「SAP2027年の壁」への対応策の一つと考えられる「あるサービス」も導入率に差があった。
前編の「1番導入されているERPは? 利用実態を企業規模別、業界別に徹底調査」に引き続き、「ERPの利用状況に関するアンケート」(期間:2023年7月28日〜8月16日、回答件数:188件)の結果を基にその内訳を紹介する。
はじめに、ERP導入企業に「満足度」を調査したところ「とても満足している」(6.2%)、「満足している」(48.1%)となり、これらを合計すると「満足」とした割合は54.3%となった(図1)。この結果を従業員規模別でみると、501人以上の中堅企業、大企業で高い傾向にあったが、500人以下の中小企業においては低い結果となった。
不満の理由をフリーコメントから探ると「処理が遅い、動作が遅い」や「トランザクションが複雑」といった処理や速度に関するコメントや、「自前のシステムとのインタフェースがやりづらい」「機能は良いが、UIが不十分」のような使用感に対する意見、「メジャーバージョンアップを控えていて費用が高額となること」といった予算面に不満が多かった。
中小企業はIT部門の従業員が不足しがちで問い合わせに対応工数を割きづらい傾向にあるため、使い勝手の悪さが業務効率の低下に直結するのだろう。従業員の操作ミスによる非効率な作業を発生させないためにも、従業員の声を反映しながら業務プロセスを整理し、自社に適したERPを選定する必要がある。
満足度はリプレース意向の有無とも相関する。ERPを「利用している」と回答した人に対してリプレース予定を聞いたところ、比較的不満の多かった500人以下の中小企業では「リプレース予定はない」(11.8%)となり、5年以内にリプレースを予定する企業が35.3%と4割近くに上った(図2)。対して従業員数501人以上の企業では「5年以内」と回答した割合は18.8%となり、500人以下の企業と比較すると約半数になる。
ERPにリプレースが必要と考える背景にはどのような課題があるのだろうか。「ERP運用の課題」をフリーコメントで聞いたところ、ERPの導入目的と運用にギャップが生じている状況が分かった。具体的には、経営層は、業務標準化や情報可視化などBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)による業務改革を目的にERPを導入するが、現場は現行システムを変えることに抵抗を示す。
この橋渡しができていないため「標準機能に合わせた業務プロセスの見直しを行うことが難しい(業務系部門の抵抗が大きい)」や「業務を標準機能に合わせた結果、誤入力がどうしても発生してしまう」といったエラーの発生に関するコメント、「パッケージに業務を合わせずに業務に合わせてパッケージをカスタマイズして使っているため、カスタマイズ費用が掛かる」といったERP導入のROIが見合わない事態を引き起こしている可能性がある。
参考までに、現在導入しているERPを、ERPベンダー以外に保守を任せる「第三者保守サービス」の利用割合を調べたところ、中小企業では11.8%、中堅・大企業では35.9%と実に3倍もの開きが見られた(図3)。
EOLなど正式保守以外のノウハウや経験を持つ第三者保守サービスは、前述の難題に対する解や対応策を提供しているものも多い。社内に専門人材が不足している企業は、こうしたサービスの活用も視野に検討を進めるのも一案だろう。
お詫び:記事中に一部間違いがあり訂正いたしました。見出し「中小企業で頻発する、ERP運用の課題」内において、「『リプレース予定はない』(47.1%)」を11.8%に修正しました(2023年9月6日)。
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