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情報漏えいにライセンス違反……IT資産管理のヒヤリハット集IT資産管理ツールの利用状況(2023年)後編

柔軟性のある業務環境が整備された半面、IT資産管理の難易度は高まっている。IT資産管理で生じたトラブル例を参考にIT資産管理の課題や今後を考察する。

» 2023年11月09日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 テレワークやBYODなどで柔軟性のある業務環境が整備された半面、企業におけるIT資産管理の難易度は高まっている。

 そこでキーマンズネットは「IT資産管理に関するアンケート(2023年)」(実施期間:2023年10月6〜20日、回答件数:188件)を実施した。後編の本稿は、IT資産管理で生じたトラブル例を参考に、IT資産管理の課題や今後を考察する。

 また、IT資産管理ツールと併せて利用されることが多い、「WSUS」(Windows Server Update Services)の利用状況についても紹介する。

退職者にも在職者にも要注意

 はじめに、企業で実際に生じたIT資産管理にまつわるトラブル事例を紹介する。IT資産管理にまつわる問題やトラブルが発生したことがある企業は24.9%も存在し、今やどの企業にとっても対岸の火事とは言えない事態となっている。

 まずは「会社で管理していないデバイスに機密情報がコピーされた」や「デバイスの使用規定に違反していた者が複数人いた」といった、利用端末の不正利用による情報漏えい事故が挙げられた。特に「退職者のデータ持ち出し」や「担当者が退職したので機器の存在が確認できなくなった」にあるように、在籍者ではなく退職者による事故が多い。

 在籍者でありがちなトラブルは「管理外のライセンス違反」や「管理が不十分だったためデバイスが紛失された」に見られるライセンス違反や紛失事故、サービスの更新漏れなどが挙がった。

 中には「管理部門が把握していないドメインが購入されており、しかも購入した従業員の退職時の引き継ぎが不十分だったため、突然サービスが停止した」のように、管理の不十分と退職リスクの両方が合わさって重大事故を引き起こした例もある。

 情報漏えいやライセンス違反は企業にとって重大なリスクの一つだ。賠償金の発生や訴訟問題への発展などにより多額の対応コストが発生したり、社会的信用の失墜を引き起こしたりすることもある。これらの事例をIT資産管理体制の見直しに生かしてほしい。

IT資産管理ツール「導入しない企業」に聞いた2大理由

 企業によってIT資産管理の方法はさまざまで、ツールを導入しない管理方法もあるだろう。実際、回答者全体の約3割はIT資産管理ツールを未導入で、今後も導入予定はない(前編参照)。その理由は2つに大別できる。

 一つは、前編で触れた全体の2割が回答した「必要性を感じるが検討しない」といった理由で、自由記述回答として「理事長や幹部職員の理解が得られない」や「稟議(りんぎ)承認が得られない」などが寄せられた。

 背景には「予算とヒューマンリソースがないため」や「情報システム担当部門が慢性的な人手不足であるため、必要性は感じているが他の優先度の高い事柄に忙殺され検討に入れていない」が挙がった。必要性は認識しているもののリソース不足により、提案で最も重要な「費用対効果を社内で説明するのが大変」という現場の苦悩が垣間見える。

 もう一つは、全体の1割強を占める「必要性を感じない」といった理由で「今のところペーパー管理で問題ない」や「『Microsoft Excel』で十分対応できている」といった声だ。前編でも100人を超える従業員規模からツール導入率が過半数以上になる点に触れたが、1100人未満の企業規模では既存ツールでの運用でカバーした方が効率的かつ費用対効果が高い可能性がある。

WSUSとIT資産管理ツールの組み合わせ利用が一般的か

 ツール導入以外の管理手法としてWSUSを活用する選択肢もある。実際「他ツールへの切り替えを検討している」(2.7%)を含め、「現在利用している」は42.0%と約半数で利用されており、この傾向は2022年の前回調査から続いている(図1)。

図1 WSUSの利用状況

 WSUS利用のメリットとしては「更新プログラムの適用状態の把握」(42.0%)や「『Windows OS』やOffice製品など配布する製品の管理」(22.0%)など、社内外に点在する端末のOSやソフトの更新、ライセンスを無償で集中管理できる点に票が集まっている(図2)。

図2 WSUSを利用することで得られたメリット

 注目すべきはWSUSがIT資産管理ツールの代用とされているわけではなく、IT資産管理ツールと組み合わせて活用しているケースが多かったということだ。このようにIT資産管理において、ツール導入だけではなく他の選択肢もうまく組み合わせ、状況に応じ効率的な管理体制を模索していく企業が今後一般的になっていくものと予測される。

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