メディア

ERPはMRPから生まれた それでもMRPを使う意味(1/2 ページ)

現在のERPはMRP(資材所要計画)が発展する中で生まれた。それぞれの違いを理解することで効果的に使い分けられるようになる。MRPも廃れたわけではなく、場合によっては現在でも役に立つこともある。

» 2024年02月27日 08時00分 公開
[Dave TurbideTechTarget]

 ERPとMRP(資材所要計画)の違いを理解することは、これらのシステムを最大限に活用するのに欠かせない。

 ERPはMRPから進化したシステムだ。MRPは生産に必要な資材量の計算に的を絞ったシステムであり、大半のERPのバックボーンになっている。しかし両者は全くといっていいほどの別物であり、関連しながらも異なる領域で使われている。

ERPとは何か

 ERPは「企業のニーズに応えるシステムをひとまとめにしたセット」だ。この定義には2つの側面があり、これが大きな差別化要因になっている。

 1つ目は、ERPが包括的なものだということだ。そこには、経理や請求書の作成、財務、販売、カスタマーサービス、倉庫管理、流通、製造、資材の調達、フィールドサービスといった、企業の運営に関わるあらゆる機能に対処するシステムが組み込まれている。

 2つ目は統合されているという点だ。互いに連携し合うシステムが組み込まれているだけでなく、ERPの中心には企業全体のデータを全て保持するデータベースがある。データは遠く離れた工場や倉庫、パートナーの工場、配送センター、外部委託のサプライヤーやサービスプロバイダーといった、その企業に関連するさまざまな場所から集められる。

MRPとMRP II、ERPの歴史

 MRPはもともと、製品の製造に必要な資材(各コンポーネントや材料、その品質、それが必要になるタイミングなど)の計算に特化したシステムだった。これもまた有用なものであり、ビジネスツールとしてのソフトウェアの歴史に起きた大きなブレークスルーだった。

 しかし、MRPにできることは1つしかない。基本計画の計算だ。その計画を実際の業務に生かすには追加のシステムが必要だった。MRPが計画を更新する過程で、進捗状況を追跡して「プロセスを完結させる」ことを可能にする情報を集めてくれる仕組みだ。

 そうしたシステムとしては、例えば在庫管理や生産活動追跡、仕入れ、受注管理があった。これらのシステムが事業の他の領域にも広がっていくと、MRPは基本計画のための計算機を大きく超える存在になった。そして、それを説明するための新たな呼称も必要になった。それが「製造資源計画(manufacturing resource planning:MRP II)」だ。

 あいにく「製造資源計画」のイニシャルは「資材所要量計画」のそれと同じ「MRP」だった。そこで、MRPの後ろにローマ数字の2が付けられることになり、「MRP II」がこのシステムの一般名になった。

 1990年代初期には、MRP IIの広範性と包括性が高まり、非製造業者もこのシステムの導入が可能だと気付くようになった。しかし組織によっては、製造業者ではないという理由で、MRP IIの導入の検討を見送るところもあった。

 そこで、新しい名称が必要になった。ERPという言葉が登場したのはその頃だった。ERPの当初の定義には、リレーショナルデータベースやクライアント/サーバアーキテクチャといった技術要件もいくらか規定されていた。こうした詳細は当時その後、標準となったものもあれば廃れたものもある。いずれにせよ、今やERPは、業務管理のための包括的かつ総合的なソフトウェアスイートを指す言葉として受け入れられるようになった。

 重要なのは、ほとんどのERPの計画機能は、MRPやそこから派生したシステムをベースにしているという点だ。しかし、MRPは古い技術であり、その限界が知れ渡っていることもあり、この事実を隠そうとするソフトウェア開発企業は多い。最新のシステムは進化して、こうした限界をさまざまな形で乗り越えてきたが、その根底には基礎となるMRP的アプローチが今もある。

 もう一つ指摘しておくべきポイントがある。それは、もはやMRP IIという言葉がほとんど使われなくなっているという点だ。現在、MRPという言葉が使われている場合、かつてMRP IIと呼ばれていたソフトウェアスイートを指すと考えていい。MRPと呼ばれるものがあったら、それはほぼ間違いなく、かつてMRP IIと呼ばれていたものだ。包括性と性能を下げたERPという意味では「ERPライト」と呼ぶのが正しいかもしれない。

MRPとERPの主な違い

 その名前が示しているように、MRPが重点を置くのは、製造関連の計画とスケジューリングであり、受注管理や在庫管理、仕入れ、経理といった、それに関連する機能だ。対するERPが提供するのは、それよりもずっと幅広いビジネス機能であり、例えば、顧客関係管理(CRM)や財務管理、人事、高性能な事業計画機能、ビジネスインテリジェンス(BI)といったものがある。

 ERPが企業情報の大部分を管理する総合的なソフトウェアスイートであるなら、本来の意味でのMRPはそのスイートのモジュールの一つだ。一方、現代の定義におけるMRPは、基本的な製造業務や経理のためのサポートシステムを本来的なMRPに加えたものである。製造業者の場合、そのニーズに合わせて、どちらを選んでもいい。非製造業者の場合、MRPの利用価値は低いため、関心が向くのはERPだろう。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。