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洋菓子ブランドのルタオが「あるツール」でロイヤルカスタマーのCVR約50%を達成した舞台裏

洋菓子ブランド「ルタオ」を提供するケイシイシイは、ECサイトでの接客レベルが高いとは言えないことに悩んでいたという。数年にわたって顧客向けのコミュニケーションツールを探し続け、偶然出会った「あるツール」を導入したところ、顧客満足度アップに成功。ロイヤルカスタマーのCVR(購買転換率)を約50%まで引き上げた。

» 2024年03月15日 08時00分 公開
[白谷輝英]

 小樽洋菓子舗ルタオ(LeTAO)(以下、ルタオ)は、顧客に寄り添ったきめ細かい接客で熱狂的なファンを増やしてきた。現在は、北海道内の10店舗のみならず、ECサイトや各種SNSも展開し、顧客との接点を広げて売り上げを伸ばしている。

 ところが、オンラインショップでは店舗というリアルな場所と比較して手厚い顧客サポートがしにくいことに悩んでいたという。打開策として、顧客の問い合わせに自動返信できるチャットbotの導入を検討したが、店舗のようなきめ細かい接客にはつながらない。その後数年にわたって顧客向けのコミュニケーションツールを探し続け、偶然出会った「あるツール」を導入したところ、顧客満足度アップに成功。ロイヤルカスタマーのCVR(購買転換率)を約50%まで引き上げるなど、各種指標も大いに高まった。「リアルに会話しているような感覚」を実現する「あるツール」とは一体何か。

 ケイシイシイのCS課ソリューションチームで活躍する大野 栞氏(ダイレクトマーケティング部 CS課ソリューションチーム)と米沢 玲氏(ダイレクトマーケティング部通販企画1課 自社チャネルチーム)に詳しい話を聞いた。

「店舗での接客をオンラインでも」を実現するツールを4年間探し求める

 ルタオは、ケイシイシイ(北海道千歳市)が1998年に立ち上げた洋菓子ブランドだ。チーズケーキ「ドゥーブルフロマージュ」は、食べた瞬間に広がるミルキーな味わいとなめらかな口溶けが愛されて大ヒットしている。ECサイトで1カ月ごとに新商品を発売して顧客を楽しませたり、各種メディアで紹介されたりしたことで全国的にファンを増やしてきた。

 ルタオの知名度が全国に広がる中、ECサイトの重要性は増す一方だ。ケイシイシイの2020年3月期におけるEC売上高は約22.5億円だったが、2021年3月期には31.4億円、2022年3月期には約41.0億円にまで拡大した。コロナ禍明け以降は実店舗に客足が戻った影響でEC売上高は一時減少傾向となったが、2023年度下半期は前年度以上の実績を上げているという。

 ルタオがファンを増やしている要因の一つが、誠実で思いやりにあふれた接客だ。従業員全員が「今日一人、熱狂的なファンを創る」という姿勢で顧客と向き合っていることで、リピーター増を実現できているのだと、ダイレクトマーケティング部のCS課ソリューションチームで顧客コミュニケーションに携わっている大野氏は語る。

ケイシイシイ 大野 栞氏

 「店頭で贈り物に悩まれているお客さまがいたら、どんな方にどのようなシチュエーションでお贈りするのかうかがい、それに合った商品を提案するようにします。私が新千歳空港店で働いていたときは、「ありがとうございました」という言葉に加え、この後出発されるお客さまに向けて『お気をつけていったらっしゃいませ』と声を掛けるようにしておりました」(大野氏)

 こうした接客法はECサイトにも共通している。電話や電子メール、「LINE」のチャットなどで寄せられた問い合わせに対し、おざなりではなく、一つ一つの言葉にこだわりながらお返事をするよう、全従業員が心掛けているという。

あるチャットツールを試験導入するも、イメージと合わなかった

 ECサイトで細やかなコミュニケーションを実現することは、難易度がかなり高い。実店舗なら、来店客に声掛けして事情を聞いたり、試食品を勧めたりして最適な商品を提案できるが、ECサイトではそれが難しいからだ。

 「以前はECサイト経由の問い合わせのうち、大多数が購入後のご相談でした。購入前のご相談は10%ほどしかなく、実店舗のような、購入を悩まれているお客さまに寄り添う接客がなかなかできていなかったのです。4年ほど前から、購入前のお客さまとリアルタイムでやりとりしながらファンづくりに結び付けられるような手段をECサイトでも取り入れられないかと悩んでいました」(大野氏)

ケイシイシイ 米沢 玲氏

 そうした中で試しに導入したのが、あるチャットbot製品だった。顧客からの問い合わせにリアルタイムで自動返信できる仕組みだったが、期待ほどの効果が得られなかったと、通販ダイレクトマーケティング部企画課でECサイトの運営や管理、販売施策の実施などを行っている米沢氏は振り返る。

 「そのチャットbotには、自社システムと連携が取りにくい、お客さまの属性データが分かりにくい、カスタマイズ性が低いなどの点で不満がありました。皆がしっくりこないなあと感じ、課題を感じていました」(米沢氏)

「少ない時間での課題解決」という認識を打ち破るツールの導入

 そんなときに大野氏が巡り会ったのが、接客チャットツールの「チャネルトーク」だった。All-in-one AIビジネスメッセンジャーをうたう同ツールは、顧客からの問い合わせにスタッフがリアルタイムで応答したり、よくある質問に対してチャットbotで効率的に答えたりできる製品だ。ECを中心に、すでに15万社以上で導入されている。

 「実は、私があるECサイトに一消費者として問い合わせをしたとき、チャネルトークを使ったのです。その際、まるで店舗で接客されているように商品を提案してもらい、心をつかまれました。同僚にも使ってもらったのですが、やはり好評でした。それで、『この仕組みを、ルタオでも導入できないだろうか?』と考えたのです」(大野氏)

 電子メールの場合、何度もやりとりをすると顧客のストレスがたまるため、できるだけ少ない回数で問題解決を図ろうとしがちだ。だが、これでは細やかなコミュニケーションは望めない。一方、チャットなら顧客と会話を続けるうちに、相手の困りごとを上手に引き出して最適な商品を提案することが可能だ。そこで2023年、ルタオはチャネルトークを導入した。

 「決め手になったのは、チャネルトークの先に『人の担当者がいる』と感じられた点でした。競合製品の中には、いかにも機械が答えているという雰囲気で接客するものがあったのですが、チャネルトークなら温かみのあるやりとりが可能です。また、ルタオのECサイトの基盤となっているクラウド型ECシステム『ebisumart』と連携し、チャット担当者の画面に顧客情報などを表示できるのも利点でした。

 チャネルトークの担当者とはじめて商談してから導入を決めるまで、おそらく1カ月弱しか掛からなかったと思います。それからさらに1カ月程度かけ、ebisumartとの連携のためにシステムを改修して、2023年4月には導入を完了しました」(米沢氏)

ルタオのチャット担当者と顧客が、チャネルトーク上で交わしたやりとりの一例。相手の要望や好みに応じて対応を変えたり、季節ごとの新商品を提案したりするなど、柔軟で繊細なコミュニケーションを実現して顧客満足度向上につなげている

問い合わせの心理的ハードルが下がり購入前相談が急増、CVRが約50%になる

 チャネルトーク導入によって得られた最大の効果は、購入前の問い合わせが急増したことだった。チャネルトーク導入前、全ての問い合わせのうち購入前相談が占める割合は、前述の通り10%程度に過ぎなかった。ところが導入したチャネルトークの問い合わせでは約50%が購買前の問い合わせとなった。

 「気軽に、しかもすぐに返事がもらえる問い合わせ窓口ができたことで、心理的なハードルが下がったのが原因でしょう。また、購入前のお客さまにきめ細かい対応をし、最適な商品をお買い上げいただけるようになったことで、顧客満足度は高まったはずです。それが、チャット接客をしたお客さまの平均客単価が、チャットなしのケースに比べて1.5倍という結果にあらわれています。

 なお、チャット接客したお客さまのCVR(購買転換率:ECサイトの訪問者のうち商品を購入した人の割合を指す)は約30%、リピート回数の多い『ロイヤルカスタマー』に関しては約50%です。チャット担当者の画面にお客さまの情報を表示することで、ロイヤルカスタマーの方を名前でお呼びしたり、過去の購入履歴に基づいた案内をしたりしたことが効果を上げているのかもしれません」(大野氏)

 チャネルトークには、ECサイトでの顧客行動に合わせ、ポップアップ(画面上に別の画面が自動的に表示される仕組み)を表示する機能がある。これを生かし、季節ごとのキャンペーンをポップアップで案内したところ、大きな効果が得られた。

 「チャネルトーク導入直後にポップアップを使ってキャンペーンを行った際のCVRは、20〜30%でした。しかし、他社の成功事例を参考にしながら返信のやり方を工夫した結果、CVRはどんどん改善していきました。あるロイヤルカスタマー向けキャンペーンでは、チャネルトーク経由の顧客における2日間の閲覧率が54.4%、クリック率48.6%、CVRが47.2%という実績を上げています」(大野氏)

 「ポップアップを出した日の売上高やサイトアクセス数を分析して、どのポップアップが有効だったのか、どんなキャッチコピーや画像がお客さまに刺さったのかを知って次の施策に役立てています」(米沢氏)

 チャネルトークを通じた顧客とのやりとりから気付きを得ることも増えた。ECサイトの使い勝手が悪い点などが分かってすぐに改善に結び付けたり、商品への改善要望などを集めて開発に役立てたりといった取り組みをしている。これらも、チャネルトークで得られたメリットと言える。

 チャネルトーク経由の問い合わせ数は1日に10件前後、1件あたりの対応時間は数分程度のことが多いという。通常であれば、1人のチャット担当者が他業務と兼務しながら対応できるが、クリスマスシーズンなど問い合わせが多くなる時期には、担当者数を増やして対応している。運用の工夫として、営業時間中にチャネルトーク経由の問い合わせがあった場合、1分以内に対応することを心掛けている。

 「チャネルトークを使えば、チャットを通じて購入に繋がったCV率を担当者ごとに割り出せます。数字が伸びれば、担当者にとっては励みになりますね。優秀な担当者が誰か分かれば、その人のノウハウを他の担当者にも共有して全体のレベルを底上げすることも可能です」(大野氏)

クリスマス時期に出したポップアップ(左)と、バレンタイン時期に出したポップアップ(右)。プレゼントやポイントアップなどのキャンペーンを適切な顧客にアピールし、購買アップにつなげている

データ分析や顧客への提案を自動化する取り組みを進めたい

 チャネルトークによってルタオの対顧客コミュニケーションはかなり改善されたが、今後も工夫を続けて顧客満足度を高める方針だ。まず取り組んでいるのが、チャットbotから有人チャットへのバトンタッチを素早く行うことだ。

 「チャットbotから有人チャットにつながるまでのフローが少し長いと感じています。他社の事例を見ていると、早い段階でお客さまを有人チャットに誘導し、素早くお困りごとの解決に乗り出すところが少なくありません。当社でも、初期段階でチャット担当者が対応できるような流れを導入しているところです」(大野氏)

 大野氏と米沢氏はどちらも、チャネルトークに対して自動化への取り組みを期待しているようだ。

 「将来は、お客さまからいただいた問い合わせの内容をAIで自動分析する機能ができるといいですね。そこで得られたデータを生かせば、よりお客さまに寄り添った接客ができるでしょうし、返答スピードの向上にも役立つかもしれませんから」(大野氏)

 「チャットbotの中に、利用目的などによって商品を自動提案できる仕組みを実装できればと模索中です。過去の購入履歴からお勧め商品の選択肢を自動的に表示するなどができれば、お客さまにもお喜びいただけると思います」(米沢氏)

 適切なチャットツールを導入すれば、オンライン接客の質をリアルと同レベルまで引き上げることも期待できる。また、チャットから得られた顧客の生の声を分析すれば、さらに接客のレベルを上げたり、製品開発に役立てたりすることも可能だ。リピーターを増やしたいECサイトにとって、チャットツールは検討に値する存在だと言えそうだ。

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