受注から現金化までのプロセスは企業によって異なるが、ほとんどの場合改善が必要だ。プロセスマイニングを用いてプロセスを改善する6つの方法を紹介する。
「受注から現金化までのプロセス」(O2C:Order to Cash)は、企業が適切に報酬を受け取り、顧客の満足を保証するための複雑なビジネスプロセスである。O2Cでは遅延や問題が発生する可能性があり、「プロセスマイニング」は、それらの問題の対処に役立つ。
プロセスマイニングとは、業務プロセスの処理パターンを蓄積して可視化し、改善ポイントを特定することで業務を効率化する方法だ。
多くのERPはO2Cを備えている。プロセスマイニングを用いて、ERPやその他のツールにまたがるトランザクションログを分析し、企業がどのようにサービスを改善し、コストを削減する方法を解説する。
まず、オンラインショッピングを例に、ERPにおけるO2Cを確認する。
O2Cのプロセスは、企業が販売する製品やサービスの種類、税務要件、会計処理によって異なる可能性がある。例えば、複雑なB2B販売では、支払前にクライアントが調達プロセスを実行し、請求書を承認する必要があるため、オンラインによる単純な販売とは異なる店頭プロセスが必要になる。
以下は、オンライン顧客による商品購入に関するO2Cの典型的なプロセスの例だ。
1.顧客が注文する
2.顧客はオンラインで全額を支払うか、支払いプランに同意する
3.ERPは、注文された商品の在庫の有無を含めて注文データを確認する
4.ERPは、商品代金、税金、送料の詳細を記した請求書を作成する
5.企業は商品を顧客に発送する
6.ERPが商品の配送を確認し、記録する
7.ERPは、顧客が支払いを完了したことを確認し、完了していない場合は回収プロセスを開始する
プロセスマイニングは、幾つかの異なる方法でO2Cのプロセスを改善する。その結果、企業全体の業務をより円滑に進められる。
企業や顧客の習慣が変わると、O2Cにおいて新たなボトルネックが現れる。配送トラックのドライバーを雇うのが難しくなったため、顧客への商品発送に以前より時間がかかる場合などだ。
経営コンサルティング事業を展開するAAreteのブルグ・パンゲ氏(マネージングディレクター)は「プロセスマイニングはボトルネックの特定に役立つ」と述べた。
「一方で、プロセスマイニング・ソフトウェアがプロセスを正確に再構築しているかどうかを確認することには課題がある」(パンゲ氏)
ユーザーは、誤った分析に基づいてビジネス上の意思決定をしていないことを確認しなければならない。
通常、受注から現金化までのプロセスには複数のアプリケーションやシステムが関与している。重要なデータがこれらのシステムを行き来する際に、上手く同期できなくなり、請求書発行や現金回収のミスにつながることがある。
パンゲ氏は「プロセスマイニングは、請求書発行におけるミスの原因を特定するのに役立つ」と述べた。請求書発行におけるミスの一般的な原因は、データの統一性の欠如である。これは、顧客がカスタマイズした請求書を使用したり、商品およびサービスの変更を要求したりする場合に発生する可能性がある。
「プロセスマイニングはエラーの特定に役立つが、ユーザーは他のデータガバナンスのベストプラクティスにも従わなければならない」(パンゲ氏)
従業員によって異なる方法でO2Cのプロセスを実行したり、異なる社内システムを使用したりすることで、O2Cに対してさまざまなアプローチが発生する可能性がある。
グローバルコンサルティング企業であるProtivitiのマーシャル・ケリー氏(アソシエイトディレクター)は、「プロセスマイニングは、これらのばらつきの発見に役立つ。そのため、必要に応じてばらつきを改善するための洞察を得られる」と述べた。企業はその後、標準的な手順を導入し、O2Cにさらなるばらつきがないかどうかを監視できる。
プロセスマイニングは、潜在的なコンプライアンスの問題の特定や、リスクマネジメントの優先順位付けにも役立つ。例えば、プロセスマイニングは、特別な税計算を必要とする製品の種類や、特定の地域への特定の品目の出荷を禁止する法律(カリフォルニア州ではさまざまな種類の農産物の出荷を許可していないなど)を特定できる。
「プロセスマイニングによってリスク指標が明らかになれば、ユーザーがコンプライアンスの問題に遭遇した場合に自動で警告するといった安全策を講じられる」(ケリー氏)
例えば、ある青果企業のユーザーがカリフォルニア州に注文を出そうとした場合、ソフトウェアが警告を発するといったケースが考えられる。
自動化は遅延やヒューマンエラーを減らすために役立つ。そのため、O2Cのプロセスは自動化との親和性が高い。しかし、データのばらつきがシステムの自動化を妨げている場合がある。
ダブリンに本社を置くプロフェッショナルサービス企業であるAccentureのグレッタ・ヘルメス氏(プロセストランスフォーメーション・リード)は、「多くの企業のリーダーは、異なる種類の文書などの要因が、ソフトウェアによるプロセスの自動化を不可能にしていることに気づいていない」と語る。プロセスマイニングは、これらの問題を特定し、自動化の機会を増やすのに役立つ。
製品を出荷する企業は、不良品や返品を可能な限り減らそうとするが、プロセスマイニングはそれらを支援できる。
ヘルメス氏によると、プロセスマイニングは、企業が将来保有すると予想される在庫量をはじめとする要因を分析できる。将来の在庫量の変動が、大量の注文拒否や返品につながる場合、プロセスマイニングはその関連性を特定できるため、リーダーはそれらに対処できるのだ。
ジョージ・ロートン氏はロンドンを拠点とするジャーナリストである。過去30年にわたり、コンピュータ、通信、ナレッジ・マネジメント、ビジネス、健康など、興味のある分野に関する記事を3000本以上執筆してきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。