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Excel、Outlook、Teamsで使える「Copilot for Finance」 財務業務はどう変わる

Microsoftは、財務向け生成AIアシスタント「Copilot for Finance」のパブリックプレビュー版を発表した。財務の業務をどのように変えるのだろうか。

» 2024年04月17日 07時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

 Microsoftは、財務向け生成AIアシスタント「Copilot for Finance」のパブリックプレビュー版を、「Microsoft Excel」(以下、Excel)、「Microsoft Outlook」(以下、Outlook)、「Microsoft Teams」(以下、Teams)に組み込んだと発表した。

 Copilot for Financeは財務の業務をどのように変えるのか。財務領域は他の領域と比べて、生成AIの効果が発揮されやすいという。その理由も併せて解説する。

Copilot for Financeで財務業務はどう変わる?

 業界アナリストによれば、財務担当者はCopilot for Financeを活用することで、システム全体のデータからインサイトを導き出せるという。ただ、Copilot for Financeはまだ初期段階なため、利用者はデータソースがどのように使用されるかに注意をする必要がある。

 ユーザーはCopilot for Financeに質問したりプロンプトを入力したりすることで、「Microsoft Dynamics 365」やSAPのERPなどに蓄積された構造化データや、Outlookなどの非構造化データを基に実行すべきアクションが提示される。

 MicrosoftのDynamics 365のゲオルク・グランツシュニッヒ氏(バイスプレジデント)は、「Copilot for Financeに反復タスクを引き受けさせることで、担当者は財務プロセスにおける戦略的な作業に集中できる」と述べた。

 Copilot for Financeは現在、財務予測と実績との差異を調べることに重点を置いている。具体的には、滞納口座の収集や請求書の照合、調整だ。

 一般的にこれら3つの領域ではシステムやアプリケーションからデータを見つける作業が必要になる。ユーザーはCopilot for Financeで「予測と実績の差異データを理解するのを手伝ってください」などの自然言語プロンプトを選択できるようになる。Copilot for FinanceはERPやその他の財務アプリケーションからデータを取得し、回答を生成する。

 「Copilot for Financeは、ExcelやOutlookなど、多くの人が利用しているツールと金融システムとを接続する。これによって、さまざまなシステム間を確認する必要がなくなる」とグラントシュニッヒ氏は述べた。

 また、Copilot for Financeは、開発アプリケーションである「Copilot Studio」を介してDynamics 365やSAPのERPにつなぐことができ、1200以上のシステムに接続可能だ。

 グラントシュニッヒ氏は「Copilotはユーザーにアクションを提案し、請求書などの関連ファイルを添付したテキストメッセージを生成する。ユーザーはアクションを実行する前にデータソースを確認できる」と述べた。

 Copilot for Financeは、「Copilot for Microsoft 365」や「Copilot for Dynamics 365」などに加わる予定だ。

Outlookで最も活用が進む予定

 IDCのケビン・パーメンター氏(リサーチディレクター)は、「財務は生成AIの主要なユースケースだ。Copilot for Financeは予算編成や計画、予測などのタスクで、データの整理や構造化データと非構造化データの結合に役立つ」と述べた。

 「非構造化データと構造化データを統合することは、例えば、Excelのシート上の数値とメモを組み合わせることを指す」(パーメンター氏)

 ExcelやOutlook、Teamsなどは利用者が多いため、Copilot for Financeを組み込むことで恩恵を受ける人が多いと考えられる。

 「Outlookでメール文章を書いたり、文面を要約したりする時に、Copilot for Financeの効果を感じられるだろう。決算期は大量の電子メールやテキストメッセージを管理する必要があり、Copilot for Financeはその負荷を大きく軽減する」(パーメンター氏)

 ユーザーはCopilot for Financeの推奨する事項を信頼できるかどうかを懸念するだろう。しかし、パーメンター氏は「Copilot for Financeが勝手に意思決定することはない」と言う。

 「生成AIは影響が最も大きい5〜6個のシナリオを特定し、その中から最も目標に沿ったシナリオを2〜3個に絞ってくれる。全てに目を通し、チェックするかどうかはあなた次第だ」(パーメンター氏)

財務領域で生成AIが効果を発揮する理由

 調査会社のForrester Researchのリズ・ハーバート氏(バイスプレジデント兼主席アナリスト)は「金融業界などでは依然として日常的なタスクに手作業を必要としており、Copilot for Financeのような生成AIツールの効力を発揮できる領域だ」と述べた。

 Copilot for Financeは、OutlookやExcelなどのアプリケーションの情報をDynamics 365やSAPのERPなどに接続するが「全てを機能させるのは簡単ではない」と同氏は語る。

 「組織は依然として何らかの作業をする必要がある。Copilot for Financeは、どこを探して情報を掘り出せばよいのかが魔法のように分かるわけではない。多くの情報がExcelや電子メール、コラボレーションツールなどに散在しているため、精度を高めるには時間がかかる」(ハーバート氏)

 データソースが不完全な場合、Copilot for Financeの精度は下がる可能性があるため、作業チェックの担当者が必要になると同氏は述べる。ただし、財務データは監査をされるため、他のエンタープライズアプリデータよりもCopilot for Financeの回答は正確になるという。

 「特に財務データは高い精度が要求されるが、Copilot for Financeによって容易になるだろう。これは、『出来事に対する感想』『顧客と会ったかどうかについての営業マンのメモ』のようなものではない。そういった情報を基にしたデータは品質に問題が伴う」(ハーバート氏)

 Gartnerのアナリストであるムトゥシ・サウ氏は、「Copilot for Financeの最も興味深い使用例は調整機能だ。これは組織が直面する請求書照合の問題に対処する」と述べる。

 ただし、Copilot on Teamsのテストでは、通話の要約などで制度にむらがあったため、「信頼性が問題になるかもしれない」とサウ氏は述べる。

 「Copilot on Teamsに学習用の課題を与える必要がある。一方Copilot for Financeは、単純に情報を照合して埋め戻すことに関しては優れたアプリケーションとなるだろう」(サウ氏)

 投資銀行などでは依然として作業の中心がExcelであることを考えると、MicrosoftのアプリケーションにCopilot for Financeを組み込むことは大きな影響を与えると同氏は述べる。

 「金融アナリストは定期的に非常に多くのデータを扱う。多くのユーザーが利用しているExcelにCopilot for Financeの全ての機能を実装することが重要だ」(サウ氏)

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