社内に溢れかえるExcelファイル。BIツールの導入が進んでも減らないのはなぜか。BIツールベンダーのQlikにBIツールの利用推進のノウハウを聞いた。
高機能なデータ分析ツールとして企業で使われるBIツール。キーマンズネットが2023年10月に実施したBIツールに関する読者調査では、「今は利用しておらず、今後も利用する予定はない」という回答が50%を占めた。
企業におけるBIツール普及の壁となっているのが、「Microsoft Excel」(以下、Excel)だ。データを分析したい時、真っ先にExcelを開く人も多いだろう。
ただ、BIツール「Qlik Sense」を提供するQlikのダン・サマー氏(シニアディレクター マーケットインテリジェンスリード)は「“脱Excel”は全世界共通の悩みだが、Excelを使うことが必ずしも悪いわけではない」と語る。
「表計算ソフトの利点は柔軟性です。スケジュールの作成からToDoリスト、財務計画やデータ分析まで、多くのことが可能です。プログラマーではない一般的なユーザーも幅広く利用できます。また、Excelは(多くの場合、企業のPCにプリインストールされているため)実質的に"無料"だということもメリットの一つでしょう」
サマー氏は「(これらの大きなメリットがあるため)『Excelがなくなることはない』と皆さんも気付いているでしょう」とした上で、そのデメリットも指摘する。
「しかし、セルが1つでも間違っているとその先の分析結果が狂ってしまったり、(同じ分析をしている)複数のファイルが生まれてしまったりすることは問題です。ガバナンスが効いた形で、毎回同じプロセスを踏んだ分析結果を得たい場合は、(BIツールのような)より信頼性の高い分析ツールが必要になります」
上記のようなメリットを認識した上で、企業がBIツールを導入しても、従業員の間で利用が広がるとは限らない。サマー氏はデータ活用を進める上で重要なのは「ストーリーをきちんと伝えること」だと話す。
「(データの提供者が)背景の説明をせずに単にデータだけ見せても、(他の従業員に)信じてもらえないし、気にしてもらえないでしょう。文脈とデータを組み合わせた“ストーリー”をきちんと話すことが重要です」
BIツールの推進担当者はダッシュボードを整備して共有するだけでなく、そのダッシュボードを開発した理由や、そのデータを基にどのような意思決定をすべきかといったこともユーザーに説明する必要がありそうだ。
同氏によれば、生成AIによる自然言語でのデータの説明も、データ活用を進める上で重要なポイントだという。ダッシュボードという形にこだわらず、AIにデータを読み取らせて自然言語で説明させるのも一つの手かもしれない。
脱Excelによってセル単位の値の間違いやファイルの増殖といった課題は解決するが、データガバナンスに関する課題が無くなるわけではない。
サマー氏は「データの出どころをきちんと把握し、ラベルを付けて識別できる仕組み(“データのDNA検査”)が必要です」と指摘する。
「Garbage In, Garbage Out」(ごみを入れたら、ごみが出てくる)という言葉があるように、品質の悪いデータを分析しても意味のない結果が得られるだけだ。
同氏によれば「(生成AIが品質の悪いデータを処理することで)ただのごみ以上にひどい結果をもたらすこともある」という。生成AIの爆発的な普及によって、低品質なデータを基に生成された情報に悩まされる人が増えてしまうからだ。
「だから、データの品質を確保するためのプロファイリングが重要になります」(サマー氏)
QlikはETLツールやデータ管理ツールで知られるTalendの買収をはじめとして、データの品質管理機能を強化してきた。競合のGoogleやSnowflakeなどもデータガバナンスに関するさまざまな機能を実装する。
ユーザーはより良いデータ活用のために、データの収集や加工、可視化だけで満足せず、データカタログの整備や機密データのマスキングなど、データガバナンスを強化する取り組みにも目を向ける必要がありそうだ。
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