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結局、Excel頼み? セルフサービスBI活用が「上手な企業」と「ヘタな企業」の差データ活用の現状とセルフサービスBIの利用状況/前編

データ分析をより身近にする「セルフサービスBI」。導入成功企業と失敗企業に対して、成果を得られた、または得られなかった原因を尋ねた。

» 2023年10月05日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 十分な専門知識を持たない従業員でも簡単に操作でき、データ分析を容易にする「セルフサービスBI」。リサーチ会社Fortune Business Insightsの市場調査によると(注1)、セルフサービスBIのグローバル市場規模は2023年で57億1000万ドル、2030年には202億2000万ドル規模に達すると予測される。

 今後、さらに利用が進むと考えられるセルフサービスBIツールについて、現時点の利用状況はどの程度で、利用を阻む課題はどこにあるのか。キーマンズネットは「データ活用の現状とBIツールの利用状況」と題して調査を実施した(実施期間:2023年9月15日〜9月29日、回答件数:184件)。前編となる本稿では、セルフサービスBIツールの利用状況と、導入企業が成果を創出できなかった理由、利用しないと考える企業の言い分を紹介する。

「導入済み」は2割にとどまる 50.5%が「使っていない」

 ノー・ローコード開発ツールの登場によってアプリ開発のハードルが下がったように、セルフサービスBIツールによってデータ分析はより身近になった。セルフサービスBIツールの利用はどこまで進んだのだろうか。

 アンケート回答者に対して「勤務先ではセルフサービスBIツールを導入しているか」と尋ねたところ、「導入している」(21.7%)、「今は利用していないが、導入予定」(3.8%)、「今は利用していないが、導入を検討中」(17.9%)となり、「今は利用しておらず、今後も利用する予定はない」(50.5%)が半数を占める結果となった(図1)。

図1 勤務先ではセルフサービスBIツールを導入しているかどうか(従業員規模別)

 この結果を従業員規模別で見ると、1001人以上の企業では「導入済み」が3〜4割を占める一方で、100人以下の企業では4.8%と1割にも満たない。導入済みのツールは(数値順)「Microsoft Power BI」(55.0%)、「Tableau Desktop」(30.0%)、「Qlik Sense」(7.5%)、「MotionBoard」(7.5%)、「SAP Crystal Reports」(5.0%)であった。Microsoft Power BIが高い理由として、メインの業務ツールに「Microsoft 365」を利用している企業が多いためだとみられる(注2)。

セルフBI、使い方がうまい企業とヘタな企業、その差はどこに?

 セルフサービスBIを「導入している」とした回答者に対して「期待通りの成果を上げているか」と尋ねたところ、「期待以上の成果を上げている」が7.5%、「おおむね期待通りの成果を上げている」が50.0%となった(図2)。

図2 セルフサービスBIツールで期待通りの成果を上げているか

 その一方で「期待をやや下回った」(25.0%)、「期待を大幅に下回った」(17.5%)とした42.5%の回答者に対して成果を得られなかった理由と考えられる原因を尋ねた。

 寄せられたフリーコメントを見ると「データを見るだけで『活用』につながっていない」「(データの)メンテナンスに労力がかかり、(データ活用の)省力化につながらなかった」などの声が挙がった。その背景には「ツールを使用する目的が明確になっていない。ゴールの設定ミス」などの原因があり、「前提条件が曖昧(あいまい)なため、必要なデータが不足し、所定の成果につながらなかった」などの反省の声も聞かれる。解決したい課題やゴールの設定があやふやなままで進めるとデータの収集や分析自体が目的化してしまい、失敗につながりやすいようだ。

 その他「必要なデータがそろっていない」「現場の従業員にBIツールを活用するスキルが不足している」などの声も聞かれ、事前準備とツール研修・教育が失敗要因となっていた。

 思い通りの成果を得られとした回答者からは「『Microsoft Excel』による個人作業を削減できた」など“脱Excel”に貢献したとする声や、意思決定者を巻き込み「経営者が率先して使用した」ことで成果につながったなどの声が寄せられた。

セルフBI導入で「コスト」よりも懸念された課題は?

 次に、セルフサービスBIツールを「導入している」「今は利用していないが、導入予定」とした回答者に対して導入時の課題や懸念事項を尋ねたところ(複数選択方式)、「利用者へのツール研修、教育」(42.6%)や「従業員のデータリテラシーの底上げ」(36.2%)に回答が集中した(図3)。特に利用者へのツール研修、教育は製品導入で課題となりやすい「導入コスト」(38.3%)の数値を上回った。

図3 セルフサービスBIの導入に際して課題、懸念点となったこと

 また、セルフサービスBIツールを「導入した」「今は利用していないが、導入予定」とした回答者に「どの部門でツールを導入、利用したか」と聞いたところ、「経営企画部門」(44.7%)、「製造・生産部門」(38.3%)、「営業・販売部門」と「営業企画・販売促進部門」(同率で34.0%)、「財務・会計・経理部門」(29.8%)だった(図4)。

図4 どの部門でセルフサービスBIを導入、利用しているか

セルフサービスBI未導入企業に聞く「利用しない理由」

 最後に、全体の50.5%を占めた「今は利用しておらず、今後も利用する予定はない」とした回答者に対してその理由をフリーコメントで尋ねたところ、セルフサービスBIの有用性を認識しているかどうかで意見が分かれた。

 まずは、前者の「ツールの有用性を認識しているが利用できない、利用予定がない」とした回答者から寄せられたコメントを紹介する。2つに大別できる。

 1つ目は「データ活用の運用体制、構築」に関する声だ。「人材を充てる余裕がない」「全社横断的にデータ分析や活用を(主導)する組織がない」「ツールの管理や統制ができない」など、データ活用に組織的な運用体制の構築が重要であることを認識しているからこそ、自社には導入は難しいと考えるコメントだ。

 2つ目は「人材」に関する声だ。「現場で(ツールを)使いこなせる人がいない」「社員のリテラシーが低い」などのコメントだ。

 次に、ツールの「有用性を認識できていないため利用していない、利用する予定がない」とした回答者からのコメントだ。これも2つに分類できる。

 1つ目はセルフサービスBIの「導入メリットが分からない」といった声だ、「利用用途が分からない」「どう役立つのかが分からない」などだ。2つ目は「費用対効果が低い、効果が分からない」「どの程度の効果があるのかが疑問」「利用シーンが思い付かず、費用対効果が分からない」「費用対効果が望めない」など、課題に対する解消策としてコストに見合った施策になるかどうかが計れないために「利用しない」と判断する企業もあるようだ。

 ツールの導入目的やゴールを明確化することはもちろん、ユーザー部門でも容易にデータ分析できるツールだからこそ、データ分析に不慣れな従業員に対してどうフォローするかなど、人材研修や教育が重要になる。有益な投資となるよう、本稿で挙げた反省の声を参照いただきたい。

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