デジタル化が進んだことで、データ利活用の重要性は高まっている。しかし十分に利活用できている企業は多くないようだ。利活用が進まない背景や、活用が進むデータの種類など、企業の実態を調査した。
キーマンズネットは2022年12月12〜26日にわたり「データ利活用・BIツールに関する意識調査」を実施した。全回答者数は291件だった。
今回は「業務で必要なデータを利活用できているか」や「自社で活用中のデータ」など、企業におけるデータ利活用の実態を調査した。データ活用の重要性が高まっているにもかかわらず、過半数が「利活用が十分にできていない」という課題が浮き彫りになった。
業務で何らかのデータを利活用する立場にある人がどれくらいいるかを調査したところ、全体で73.9%が該当した(図1)。これを過去の調査と比較すると、2017年は67.9%、2019年は70.1%で、わずかではあるものの年々増加傾向にあることが分かる。業種別に見ると、自動車や食品、薬品などの「IT関連外製造業(78.1%)」が最も高く、次いで「流通・サービス業(72.0%)」「IT製品関連業(71.4%)」、学校や教育機関などの「その他業種(69.0%)」となった。ただし最も低い教育機関においても、約7割が業務上何らかのデータに関与する立場であることから、今やほぼ全ての企業でデータの利活用が欠かせなくなっている様子だ。
ただし、十分にデータを利活用できているとは限らないようだ。前述の「データの利活用に関係する立場にある」人に対して「現在の業務環境で必要なデータを必要なタイミングで不自由なく利用できているか」を聞いたところ「利用できていない(53.5%)」が過半数だった(図2)。ちなみに2017年、2019年の調査では「利用できている」の割合が若干高かったが、今回の調査で初めて逆転した。この課題は直近3年間で顕在化した「新たな課題」といえる。
データ利活用の重要性が高まっているにもかかわらず、十分にできていない企業が増えている。その背景には何があるのか。業務に必要なデータを「利用できていない」人に理由を聞いたところ「必要なデータを集めていない(67.8%)」「データを扱うスキルがない(42.6%)」といった課題が挙げられる一方、「データがサイロ化している」や「データ共有の仕掛けがない」といった部門間のデータ共有の体制を指摘する意見も見受けられた(図3)。この結果を2019年の調査と比較したところ「データを操作する権限がない」が14.2ポイント、「必要なデータが分からない」が12.0ポイント減少した代わりに「データを扱うスキルがない」が23.6ポイント、「必要なデータを集めていない」が9.1ポイント増加していることも分かった。
これらの結果を整理すると、データ利活用の重要性の認知拡大は進んだものの、顧客ニーズへの早期対応やRPA、マーケティングオートメーション(MA)ツールなど自動化による業務効率の改善といった具体的なデータ活用を実行できる「人材の不足」と「データ取得ができていない」の2つが大きな課題といえそうだ。前回の調査から3年がたち、コロナ禍を背景にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業は増加した。つまり、既存のシステムからの脱却に向き合わざるを得なかった3年であったともいえる。デジタル化によって、企業におけるデータ利活用は一定程度進んだからこそ、自社に欠けている人材面やシステム面の課題が透けて見えてきたというのが実態だろう。
では、そもそも利活用ニーズのあるデータとはどのようなものか。
自社の事業で「既に活用している」データは「IoT機器などのログデータ(22.3%)」や「公共機関が公開するオープンデータ(22.0%)」「業務上利用した画像・動画(21.6%)」「提携先企業・組織の顧客データ(21.6%)」が挙げられた(図4)。業種別に見ると、製造業を中心に「IoT機器などのログデータ」の活用割合が高く、流通・サービス業や放送・出版・インターネットメディア、代理店などBtoCのビジネスがメインの業種においては「顧客行動履歴データ」や「提携先企業・組織の顧客データ」「公共機関が公開するオープンデータ」の割合が高い傾向にあった。
「今後活用を検討中」のデータでは「公共機関が公開するオープンデータ(24.1%)」や「IoT機器などのログデータ(21.6%)」「提携先企業・組織の顧客データ(16.8%)」に続き「オンライン顧客行動履歴(14.4%)」や「GPSなどの位置データ(14.4%)」などが挙げられた(図5)。
以上、前編ではデータ利活用ニーズが高まる半面、「データの利活用が十分にできていない」という課題に直面する企業が増加傾向にある現状を紹介した。後編ではデータ分析ツールの導入を含む環境の整備状況など、データ利活用のための取り組み実態を中心に紹介していく。
全回答者数291件の内訳は、情報システム部門が32.6%、製造・生産部門が17.2%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が14.5%、経営者・経営企画部門が8.2%などだった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合がある。
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