生成AIをはじめとするAIの業務での利用が進む中、AI利用に最適化されたPCへの買い替えを検討する企業は多い。AI PCの購入台数が従来型PCを上回る時は来るのか。AI PCを利用するメリットとは。
AIを業務に利用する機会が増える中、AIに最適化されたPCである「AI PC」をすぐに購入すべきかどうかは悩ましい問題だ。AI PCを利用するメリットはどのようなものだろうか。
調査企業であるGartnerが2024年5月29日(現地時間、以下同)に発表した予測によると(注1)、2026年末までには企業が購入するコンピュータの全てをAI PCが占めるようになり、職場でAIタスクがより広く普及するという。
企業がAI対応PCを推進する動きは、AI利用に特化した半導体の需要を既に増加させている。Gartnerは、2024年にAI半導体の収益が世界で710億ドルを超え、前年比33%増になると予測している。
Gartnerの予測によると、NPU(Neural Processing unit)を含むAI PCは、2024年における世界のPC出荷台数のうち20%以上を占める見込みだ。
企業がAIを利用する意向は高まっており、CIO(最高情報責任者)は利用可能なコンピューティングパワーにますます注目し、生成AIをはじめとするAIがITスタックに加わることでクラウドコストが上昇している。
PCメーカーはクラウドを介さずにPC本体で実行されることによる処理の迅速さやセキュリティなどの利点を強調して、AI活用に積極的に取り組む企業のIT予算を取り込みたいと考えている。
PCメーカー大手のDellは、AI PCを市場に投入しているPCメーカーの一つだ。同社は2024年2月に、NPUを内蔵したAI対応のLatitude PCを発表した(注2)。
Dellのイヴォンヌ・マクギル氏(最高財務責任者)は2024年2月に開催された同社の2024年度第4四半期の決算説明会で「今後のPCの買い替えサイクルと、AIがPC市場に与える長期的な影響について、われわれは引き続き強気でいる」と述べた。
2024年5月20日にMicrosoftは、AIに対応したPCシリーズとして「Copilot+」を発表し(注3)、「これまでで最も高速でインテリジェントなWindows PCである」と述べた。これらのデバイスは、Azure上で動作する大規模言語モデル(LLM)や小規模言語モデルに接続する。
Gartnerのアラン・プリーストリー氏(バイスプレジデント兼アナリスト)はリサーチノートの中で、「インフラコストとプライバシーへの懸念から、エンドユーザー向けの生成AIアプリケーションは、データセンターではなく、現場で実行されるようになるだろう」と述べる。
「PCで動作するアプリケーションの開発者は、PCやPCに接続されたデバイス(カメラやマイクなど)に保持されているローカルデータへのアクセスを活用して、機能や体験を向上させるために生成AIの技術を使用する方法をすでに模索している」(プリーストリー氏)
調査とコンサルティングを手掛けるIDCの予測によると、ローカルで実行されるAI利用の取り組みがAIに対応したPCの需要を促進し、AI PCは今後3年間で出荷台数が3倍に増加し、2027年までにPC市場全体の60%近くを占めるようになるという(注4)。
IDCのトム・メイネリ氏(バイスプレジデント)は、2024年2月に発行した報告書で、次のように述べた。
「より高速なパフォーマンスによるユーザーの生産性向上や推論コストの削減、デバイス上のプライバシーとセキュリティの利点が、AI PCに対するIT意思決定者の強い関心を引き起こしている。2024年には、AI PCの出荷が急増し始め、今後数年間で、この技術はニッチなものから誰もが使うものに移行するだろう」
出典:Enterprises will go all-in on AI PCs by 2026, Gartner predicts(CIO Dive)
注1:Gartner Forecasts Worldwide AI Chips Revenue to Grow 33% in 2024(Gartner)
注2:Dell says on-prem is the future of AI(CIO Dive)
注3:Introducing Copilot+ PCs(Microsoft)
注4:AI-enabled PCs to infiltrate enterprise IT this year(CIO Dive)
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