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AIをムダな買い物にしない パナソニックG、明治安田の「生成AI」を使い倒す工夫とは

AI導入企業が定着に悩む今、パナソニック コネクトや明治安田生命保険など、着実に成果を上げている組織は何に取り組んでいるのか。成功企業の具体事例を手掛かりに、AI活用を導入で終わらせないための5つの視点を紹介する。

» 2026年05月06日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 AI活用が“うまい”企業は、技術を導入すること自体を目的化せず、現場のマインドセットや企業カルチャーの変革、さらにはAIを最大限活用するためのデータ基盤の整備にまで踏み込んでいる。一方で、機能面の比較に終始し現場の利便性を軽視すると、利用は定着せず、「シャドーAI」といった運用面でのリスクを招く可能性もある。

 本記事ではAI活用の本質に焦点を当て、ビジネス現場でAIを使いこなすためのヒントとなる5本の記事を紹介する。

明治安田生命や急成長ベンチャーが実践する「AI定着の仕掛け」

1.明治安田生命にみる「ビジネス課題起点」のAI活用

 AI活用で成果を上げる組織は、技術そのものからではなく、「ビジネスの課題をどう解決するか」という視点から出発している。

 明治安田生命保険では、巨大なレガシーシステムの移行に際しても、新しい技術への関心に偏ることなく、保険会社として長年重視してきた「安心と信頼」をいかに高めるかを軸に据えている。同社が従業員に対して「答えはAIの中ではなく現場にある」と伝えているように、「AIによる効率化」と「人間が担う信頼性」をどう両立させるかが本質的な課題となっている。

 こうした制約や前提条件のもとで成果を上げている組織は、具体的に何を実践しているのだろうか。


2.「AIを使い倒す組織」へと転換したパナソニック コネクトの流儀

 パナソニックコネクトは、生成AIの全社導入によって年間44万8000時間もの生産性向上を実現した。この成果の背景には、単なるツール導入にとどまらず、トップの強いコミットメントと「変われる人」を育てる企業カルチャーへの転換がある。

 同社では、AIに情報を「検索させる」だけでなく、文章作成やプログラミングまで任せる「頼む」使い方へと活用の幅を広げている。その結果、AIへのプロンプト入力文字数は導入当初の2.7倍に増加し、業務そのものの組み立て方自体が変化したという。

 同じようにAIを導入していながらも、「導入で終わる会社」と「使いこなし、変革につなげる会社」とを分ける要因はどこにあるのだろうか。


3.AIの性能は二の次? 成功企業が「派手な全社AI化」よりも優先したこと

 AIをうまく使う企業は、いきなり全社展開を狙うのではなく、一部の業務からスモールスタートし、改善を重ねながら横展開している。急成長ベンチャーのTAPPは、SalesforceのAIエージェント「Agentforce」を導入し、問い合わせ解決率90.3%という成果を上げた。

 この成功の背景には、単なるツール導入ではなく、3年かけて構築してきたデータ基盤がある。入力漏れを防ぐための運用パトロールや、社内エバンジェリストによるデータ文化の醸成など、地道に現場と向き合い続けてきた積み重ねが、AIのパフォーマンスを最大化させた。

 こうした事例に共通して見えてくるのは、AIの性能そのものではなく、それを支える「データ」や「業務設計」「現場運用」といった周辺条件の整備だ。そして、成果を左右する、もう一つの重要な要素とは。


4.「流行のAI」より「馴染むAI」 失敗しないためのAIツール選定術

 AI選びがうまくいかない会社は、細かな機能比較だけでツールを選ぼうとしてしまう。本来はそこからではなく、まず自社の課題を整理することが出発点になる。「普段の業務でどのツールを使っているか」「既存環境に統合したいのか、それとも単体で試したいのか」といった前提条件を明確にすることは不可欠だ。

 例えば「Microsoft 365」で業務が回っているのであれば「Microsoft 365 Copilot」のように業務プラットフォームとの親和性が高いサービスを選ぶのが好適だろう。一方で、長い資料の整理や情報の要約といった用途に重点を置くのであれば「NotebookLM」のような特化型ツールが適している。重要なのは、流行しているツールを選ぶことではなく、自社の働き方や機密情報の管理体制にどれだけ適合するかという視点だ。

 こうした判断に共通して求められるのは、単なるツールの比較ではなく、自社の業務と結び付けて考えられる“ツールの目利き力”だ。AI導入の成否は、この見立ての精度に左右されるのかもしれない。


5.議事録AIの定着率はわずか3割 なぜ現場は「シャドーAI」を選ぶのか?

 キーマンズネットの調査によると、議事録AIの導入率は約7割に達している一方で、「ほぼ全ての会議で利用している」と回答した日常的な活用層は約3割にとどまっている。その背景には、会社が正式に認めたツールであっても導入手続きの煩雑などが障壁となり、現場での定着が進みにくいという事情がある。その結果、より手軽に使える会社非公認ツール、いわゆる「シャドーAI」へと流れる。

 AIを導入しただけで終わらせず、現場で自然に使われるツールとして定着させている企業は何が違うのだろうか。そこにあるのはツールの性能差ではなく、業務フロー全体を見直し、AIを業務の中に無理なく組み込める状態へと再設計できているかどうかという設計思想の違いにある。

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