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「Salesforceを使いこなせてない顧客が多い」 売り上げ鈍化を止める施策とは?

 2024年4月30日までの3カ月間におけるSalesforceのソフトウェア売上が伸び悩んでいる。「顧客がSalesforceを使いこなせてない」という指摘もある中、同社の次なる一手とは。

» 2024年07月31日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

 2024年4月30日までの3カ月間におけるSalesforceのソフトウェア売上が伸び悩んでいる。

 「Salesforceは成熟期を迎えており、多くの顧客が大規模な製品を購入したが、十分に活用できていない。年間数百万ドルを費やしているにもかかわらず、その対価として提供される全ての機能を活用できていない企業がある。Salesforceがこれらの顧客を成長させるのは難しい」とForresterのリズ・ハーバート氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)は述べた。

 一方でSalesforceは、次なる一手を用意している。顧客が備えるべきこととは?

「Salesforceを使いこなせてない顧客が多い」 売り上げ鈍化を止める施策とは?

 Salesforceのブライアン・ミルハム氏(プレジデント兼最高執行責任者)は、2024年5月29日に開催された2025年度第1四半期の決算説明会で(注1)、「取引サイクルの長期化、取引の圧縮、予算審査の厳格化を目の当たりにした」と述べた。

 Salesforceの売上高は前年同期比11%増の91億3000万ドルで(注2)、2024年度第1四半期と同様の伸びを示したが、2023年度第1四半期の24%増と比較すると伸び率は低下している(注3)。同社のエイミー・ウィーバー氏(プレジデント兼最高財務責任者)は、顧客がソフトウェアの購入を縮小し、導入を遅らせるため、減速傾向は年度末まで続くと予想している。

 Salesforceのマーク・ベニオフ氏(CEO)は、この減速をAIの導入に備えるための一時的な停滞であるとしており、「私たちが目にしているのは、過去4年間に販売したプラットフォームのインストールや統合、導入だけでなく、新しい機能の導入である」と述べた。

 企業の近代化を推進する上で、ソフトウェア支出は長年の悩みの種である。CRMやERPシステムにおけるSaaSソリューションは、ソフトウェアのアップグレードがDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する一方で、予算を急増させる可能性がある。

 調査企業であるForresterによると、世界のソフトウェア支出は今後数年間で年間平均12%増加し、2027年には1兆4000億ドルに達すると予想されている(注4)。Gartnerによると、現在、調達における最も重要な考慮事項はコストだ(注5)。

 企業は、ソフトウェアスタック全体におけるクラウド支出の最適化に注力しており(注6)、SaaSの乱立を抑え、最近の投資から最大限の効果を引き出そうとしている。

 Forresterのリズ・ハーバート氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)は、CIO Diveに対して「どのような経済状況にある企業であっても、過剰な購入は望んでいない」と述べた。

 また、ハーバート氏は「Salesforceがトップベンダーとしての地位を維持してきたCRM業界では、2023年に最適化のサイクルが到来した」と述べている(注7)。

 「Salesforceは成熟期を迎えており、多くの顧客が大規模な製品を購入したが、十分に活用できていない。年間数百万ドルを費やしているにもかかわらず、その対価として提供される全ての機能を活用できていない企業がある。Salesforceがこれらの顧客を成長させるのは難しい」(ハーバート氏)

 ハーバート氏は「マクロ経済に関連する広範な要因も影響しており、特に企業顧客は人員整理やレイオフを検討している。多くのソフトウェア契約において、顧客は保護されておらず、最終的にはアカウント分の支払いをしなければならない」と付け加えた。

 Salesforceや他の主要な企業ベンダー数社は、収益を上げるために2023年にソフトウェアの価格を引き上げた(注8)。

 調査企業であるInfo-Tech Research Groupのスコット・ビックリー氏(アドバイザリー・プラクティスリード)は、「プレミアムバンドルの作成と消費ベースの価格モデルへの移行は、ソフトウェアプロバイダーがビジネスを活性化させるために採用している2つの追加手段である」と述べた。

 また、SaaSベンダーは、コーディングアシスタントやその他の生産性向上ツール、要約ツールなど、生成AIを活用したアドオンにも注力し、顧客にアプローチしている。Salesforceはここ数カ月で、エンジニア向けのローコード開発機能を「Einstein Copilot」に追加し(注9)、AIおよびデータガバナンスツールをバンドルし(注10)、ヘルスケア用の自然言語アシスタントを導入した(注11)。

 しかし、Salesforceが最も力を入れているのはデータ分野であり、同社は2023年9月にクラウドベースのデータソリューションを「Einstein 1 CRM」に接続する統合を発表した(注12)。

 「顧客はAI機能を活用する前段階としてデータ資産を整備しており、それがData Cloudの成長につながっている」(ミルハム氏)

 ベニオフ氏によると、Salesforceは第1四半期にData Cloudの顧客を1000社以上増やし、このソリューションを「次の10億ドル規模のクラウド」と呼んでいる。

 「Salesforceは、AIソリューションとData Cloudについて長期的な視点を持っている」(ビックリー氏)

 また、ビックリー氏は「彼らはAIを自社のデータ環境にしっかりと組み込んで管理したいと考えている。誤ったデータを入力すれば、誤った結果が出ることも理解しており、データ層をクリーンにする必要があると認識している」と語った。

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