ビットキーは、2022年にNotionを導入し、部門ごとに分断していた情報の集約に取り組んでいる。同社の情報システム部門担当者が、NotionやNotion AIを実際に導入してみて分かった導入メリットや活用方法を本音で語った。
ビットキーはデジタルコネクトプラットフォームの開発・運営をしている企業だ。同社は、「Notion」を導入し、部門ごとに分断していた情報の集約に取り組んでいる。また、全社を挙げて生成AI機能「Notion AI」の使い方を研究しており、既にさまざまなケースで業務プロセスの自動化、効率化を実感しているという。
ビットキーの日浦 航氏(情報システム部)が、Notionを実際に導入してみて分かったメリットや情シス目線で評価しているポイント、Notion AIの活用方法を語った。
同社では従業員のITリテラシーが比較的高く、各部門がさまざまツールを使って自律的に業務を進めている。セールス部門や法務部門は「Slackワークフロー」を使って業務プロセスをシステム化したり、GAS(Google Apps Script)を利用したデータ分析をしたりすることもある。
ナレッジやアセット、プロジェクト管理についても中央集権的な仕組みはなく、それぞれの部署でWikiツールや「Trello」「Wrike」「Instagantt」といったツールを運用してきた。
各部門が自律的に業務を効率化する文化がある一方で、ツールやデータの管理が散乱するリスクを回避したいという気持ちもあったという。双方を実現するために同社はNotionの導入を決めた。
Notion導入時の機能要件は、「デバイス認証」「SCIM(System for Cross-domain Identity Management)」「監査ログ」「ワークスペースの制限」「ワークスペース単位のセキュリティ機能」とした。これらに加え、SCIMによりアカウントの追加、削除を各部門で自律的にできること、高度なセキュリティ機能があることを理由に、エンタープライズプランを選択したという。
その他、詳細な監査ログを確認できる点や、既存のデバイス認証ツール「Okta」でSSO(シングルサインオン)するためのSAML(Security Assertion Markup Language)に対応していることも評価した。
ワークスペースは、業務委託先も利用するので無制限に利用できることが便利だと感じた。ワークスペース単位で外部公開が制限できる点も重要と判断したという。
現在、同社では業務委託先との情報共有などにNotionを活用しているという。一般的にNotion導入時には、既存ツールとのすみ分けやツール集約の難しさが指摘される傾向にあるが、同社ではスムーズにNotionへの情報集約が進んでいる。
「Notionを導入した後は、特に働きかけをしなくても、タスク管理やプロジェクト管理にNotionが利用されるようになり、TrelloやWrikeのようなツールは自然と使われなくなっていきました。今ではほぼ全てのメンバーがNotionを利用しています。かつてNotionが障害でつながりにくくなった際に、『Slack』の投稿が飛び交い、みんながNotionを頼りにしているのだと感じたことがありました」(日浦氏)
全社でNotionを使うようになってからは、高度に使いこなすメンバーや活用アイデアを共有するメンバーが出てくるなど、徐々にこれを使いこなす文化が醸成されたという。
ビットキーでのNotionの活用例として、Web公開ページの運用がある。Notionで作成した文書をそのままWebページとして作成・公開できるので便利だという。
「専用のワークスペースに編集メンバーを招待して、作成や公開の運用をしています。ワークスペースには、OktaのAccess Requestsを介してチームマネージャーが承認したメンバーだけを招待することで安全性を高めています」
ビットキーの情報システム部は、アクセス管理を各部門に任せるなど自律的な運用を推奨している。
ビットキーでは2024年4月からNotion AIを導入した。着々と業務利用が進んでいるという。
「Notion AIの導入検討時に、『AI活用検討プロジェクト』のSlackチャンネルを立ち上げたところ、社内の約50%のメンバーが参加してくれました。メンバーにNotion AIを2週間ほど使ってもらい、最終的に50個以上の活用アイデアが集まりました。それらをみんなで実際に検証して導入を決定しました」(日浦氏)
Notion AIの活用例の一つとしてWebで公開しているサポートサイトの編集などがある。Notionで制作しているコンテンツについてNotion AIに校閲や言い回しの統一などを依頼することで、ページ作成の工数を大幅に削減できた。
資料に差し込む図表の作成にもNotion AIを利用している。メンバーからは「試しにやってみたらちゃんとしたものが出てきた」という声が上がった。作成体験そのものが楽しみとなり、自然に浸透が進んでいるという。
ビジネス部門では、業務プロセスやシーケンス図の作成にNotion AIを利用している。
「『Miro』や『draw.io』で作成した図ほどリッチではありませんが、Notion AIにサポートしてもらうことで誰でも簡単な図表を作成できるようになりました』
この他、問い合わせ管理の効率化に向けて同社のエンジニアとカスタマーサービスはNotion AIを活用している。同社では問い合わせデータをNotion AIに読み込ませて不具合対応を効率化させているという。
「お客さまから問い合わせが発生、もしくは不具合を社内で検知した際に、その内容をSlackワークフローのテンプレートで記票します。切り分けや問題解決のためのディスカッションはそのままSlackのスレッド上で行われますが、自動で『Notion DB』に連携され、AIによって要約されます。『発生事象のまとめ』『調査過程』『対応方法』などは対応チケットとして別のDBで管理されており、上述のAI要約を参考に、「事象管理」と「チケット」をひも付けています。
このような管理をすることで、同一事象が発生した際、類似の事象とその対応記録にすぐにアクセスできるため、問題の切り分けに向けた情報の取得が簡素化されたという。
「これまではチケットが増えると棚卸しをしたり、再発防止策を検討するために過去の事象を確認したりする作業が負担でした。Notion AIがこれらの作業をサポート、あるいは自動化することで、問い合わせ管理のコストが大幅に軽減されました」
ビットキーでは2022年にNotionを導入して以来、データをNotionに集約している。データが増えるほどNotion AIの活用の幅が広がるので、今後はSlackのデータなどを含めてさらに情報を集約し、不要な情報を棚卸ししてNotion AIの精度を上げたいと日浦氏は語る。
「当社はいろいろなツールを使ってきたこともあり、まだNotion AIが参照できないデータがあります。今後はNotion AIの精度を上げて対応できることを増やしていこうと思います。Notion AIは日々進化しているので、情報を追いかけるのが大変です。メンバーがNotion AIを使いこなせるように社内向けのリリースノートを用意したいと思いますが、それもAIに任せることを考えています」
本記事は、Notion Labs Inc.が2024年5月24日に開催した「Notion企業活用ウェビナー 株式会社ビットキー様 編」の内容を編集部で再構成した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。