VMware製品群のライセンス体系変更は多くのユーザー企業、パートナー企業に混乱をもたらした。読者の今後のITインフラの方針はどうなっているだろうか。皆の生の声を聞いた。
ハイブリッドクラウドの基盤として広く企業で活用されてきたVMware製品群だが、BroadcomによるVMware買収をきっかけに、事業ポートフォリオを大幅に変更しようとしている。これに伴い、各製品のライセンス体系や既存の販売パートナー向けのプログラムも変更がアナウンスされた。
「VMware Workstation Pro」が無償化された一方で、買い切りのソフトウェアライセンスが廃止され、サブスクリプションライセンスもCPU単位からがコア数単位に変更されるなど、ユーザー企業にとってはIT予算の見込みが狂いかねない内容だ。2024年春にライセンス変更がアナウンスされた当初は、エンドユーザーがどのライセンスを契約できるかといった情報がすぐには得にくい状況だったことから混乱に拍車がかかった。
今やVMware製品群は、ハイパーバイザーだけでなくネットワークやストレージの仮想化、IT環境全体の運用管理ソフトウェアを含むITインフラそのものになっている。ライセンス体系が変更になり、費用見積もりが変更になるからといって、運用プロセス全体を別のプラットフォームを前提に再設計するとなると、かなりの工数がかかることが予想される。
今回のライセンス変更によるコストの変動をどう吸収するか、はたまた全く別のプラットフォームに乗り換えるIT環境見直しに費用を投入するか、IT部門は難しい判断を迫られているのだ。
そこでキーマンズネット編集部とITmedia エンタープライズ編集部は共同で「『VMware製品のライセンス変更』に関するアンケート」(調査期間:2024年6月26日〜7月6日、オンライン調査、回答数:425件)を実施し、読者の「現在の生の声」を募った。本稿から数回に渡り、その結果を見ていく。
まず、現在何らかのVMware製品群を「利用している」としたグループ(202件)が、今後のIT基盤をどうするつもりなのかを見ていこう。
「ライセンス体系の変更で影響を受けたか」を問う設問では、既存ユーザーの約7割が何らかの影響があると回答した(「大きな影響がある」《44.6%》、「多少影響がある」《26.2%》)。「影響がない」とした回答者の多くは、VMware Workstation Proユーザーやハイパーバイザー製品のユーザーだった。
VMware製品ユーザーに今後の対応方針を尋ねた設問では「従来通りVMware製品を使い続ける」とした回答が31.0%となった。「一部または全部を他の製品に乗り換える」とした回答が33.0%と、わずかに使い続けるとした意見を上回った。
さらに、何らかの「影響がある」と回答したグループを抽出してみると「一部または全部を他の製品に乗り換える」とした回答は42.7%に上った一方で、「従来通りVMware製品を使い続ける」とした回答は26.6%だった。
影響があるにも関わらず「使い続ける」と回答したグループは、「すぐに環境切り替えできないため、当面のコスト上昇を受け入れざるを得ない」「ライセンスの変更に伴い負担増となっているが、すぐに移行できるものではなく現状としては継続利用」「当面は使い続けるが、今後は見直しを検討する方針」「今後は他のプラットフォームに乗り換える予定」といったコメントが寄せられた。
この他、「費用見積もりが出てこない」「販売可能ライセンスの基準の情報が降りてこず、現状は最も高いプランでしか購入できない状況」「サポートサイトに十分な情報がない」といった意見が寄せられた。
事業買収に伴う情報の混乱は致し方ない面もあるが、IT予算計画を早く見直したいユーザーにとって、この混乱は「ベンダーへの信頼」を揺るがす問題となった。そもそも企業ユーザーが商用プロダクトを使うのは、万一の自体に対処できる信頼性と安心、品質と安定性を求めてのことだ。
クラウド全盛の現在、サーバ仮想化集約、プライベートクラウドをベースとした従来型のITインフラはいずれ見直す必要があると多くの企業IT部門の方々が想定したことだろう。だが、ほとんどの方が年次のIT予算の枠組みの中で段階的な見直しを進めようと考えていたはずだ。
今後、サブスクリプション型もしくはマネージドサービスの提供を軸としたビジネスモデルにかじを切るのだとしても、Broadcomには、混乱を収束させ、既存ユーザーが安心して新たな方針に沿ったIT予算を編成できるよう、支援するメッセージを打ち出していただきたい。
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