ノークリサーチの調査によると、Windows 10のサービス終了時点では回答者のうち過半数がWindows 10を使い続ける見込みだ。何が中小企業のWindows 11への移行を阻むのか。
2024年も後半に入り、2025年10月14日に予定されている「Windows 10」のサポート終了まで1年半を切った。しかし、「Windows 11」への移行が順調に進んでいるとはいえず、「サポート終了間際の混乱も予想される」とノークリサーチは指摘する。
同社が中堅・中小企業を対象として2024年3月に実施した調査によると、依然として多くのユーザー企業がWindows 10を利用している。
エンドポイントOSの導入予定を尋ねた設問に対して、多くのユーザー企業が「Windows 11に移行する」と回答したが、移行のスピードは緩やかなようだ。サポート終了間際の混乱やトラブルを防ぐという点では、早期にWindows 11への移行を完了している状態が望ましい。多くの中堅・中小企業がWindows 11への移行をためらう理由は何か。
多くの企業が年度末を迎える2024年3月末はWindows 11移行における一つのピークだが、それでも20.7%にすぎない。その後は2025年3月末に向けて移行を予定している企業が増える一方で、「導入時期は未定」との回答が26.4%に上る。「2025年3月以降も多くのWindows 10が残る可能性がある」とノークリサーチは指摘する。
Windows 11の導入を避ける、あるいは遅らせる理由としては、「Windows 10サポート終了間際で移行した方が費用面で有利」「既存の業務システムの中にWindows 11では動作しないものがある」「Windows 10と比べて、Windows 11には自社に役立つ改善点がない」などが考えられる。これらの回答を選んだ回答者はなぜ、Windows 11の導入を避ける、あるいは遅らせるのか。
「Windows 10サポート終了間際で移行した方が費用面で有利」を選んだ回答者は、「2025年中に導入予定」の割合が突出して高い。ノークリサーチは、こうした選択肢をとる企業に対して「地政学的リスクなどによって半導体不足が再発する可能性もゼロとはいえない」と指摘する。
「既存の業務システムの中にWindows 11上では動作しないものがある」「Windows 10と比べて、Windows 11には自社に役立つ改善点がない」を選んだ回答者は、「2025年中に導入予定」や「可能な限り導入時期を遅らせる」と回答者と比べて、「導入時期は未定」が少なかった。ノークリサーチは「Windows 11への移行時期が未定のユーザー企業は、移行に伴う既存システムの動作検証やWindows 10と比較した時の改善点についてネガティブな印象を持つ割合が相対的に低いと考えられる」と分析する。
Windows11を導入した、導入する理由は何か。
「Windows 11搭載端末ではセキュリティ対策が強化されている」を選んだ回答者は、Windows 11の導入済みユーザー企業だけでなく、その他のパターンにおいても概ね多く存在する。ただし、「導入時期は未定」を選んだ回答者は相対的に少ないことから、Windows 11のセキュリティ強化に関する認知が足りていない可能性がある」とノークリサーチは指摘する。
一方、「ファイルサーバへのアクセスが速くなる」は、「Windows Server 2022」以降との組み合わせで実現するSMB Compressionに関する項目だ。導入済みにおける値はやや低いが、現在は新しいサーバOSに関する認知が広まってきたタイミングということもあり、「2024年中に導入予定」では高い値となった。
しかし、「2025年以降」や「導入時期未定」での値は依然として低い。ユーザー企業がWindows 11導入に前向きになるためには、上記の「セキュリティ対策が強化されている」といった「もしもの備え」となる要素だけでなく、ファイルサーバへのアクセスといった日々の業務効率にプラスとなる要素も必要だ、とノークリサーチはコメントしている。
ノークリサーチでは、Windows系に加え、Google系やApple系、Linux系などのエンドポイントOSの導入状況についても調査している。調査によると、Windows系が突出している。
Windows系の次に導入割合の高いGoogle系およびApple系のエンドポイントOSにおける導入済み、導入予定の回答割合はどうか。導入済みと比較した場合の導入予定の増減を見ると、「Chrome OS」と「Android」は微減、「macOS」はほぼ横ばい、「iOS」と「iPad OS」は3〜5ポイントの減少している。「中堅・中小市場においてはApple系のモバイルOSの占める割合が今後は若干下がる可能性がある」とノークリサーチは分析する。
エンドポイントOSの利用環境については、導入済み・導入予定とも、PC・スマートデバイスを主とした「通常のエンドポイント端末」が最多だった。導入済みと比べて導入予定が減少しているのは、Windows 11への移行が進んでおらず、現段階で導入予定の端末が確定していないことが主な要因だとノークリサーチは分析する。
ノークリサーチによると、導入済みと比べた導入予定の値は、1to1リモートデスクトップやVDIでは減少または概ね横ばいだが、データレスPC/データ分散PCでは4ポイントの増加だったという。
データレスPC・データ分散PCは、OSやアプリケーションは通常のエンドポイント環境と変わらず、データをクラウドなどに外部保存もしくは分散保存する仕組みだ。通常のエンドポイント端末に導入する形態で、1to1リモートデスクトップのように従業員ごとに2台の端末を用意する必要がなく、VDIと比べて通常のエンドポイント環境からの変更も少ない。「中堅・中小企業にとってセキュリティと手軽さを両立しやすい選択肢といえる」とノークリサーチは分析する。
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