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渦中のVMware問題、ベンダー各社はどう動く? 今後の対応を直接聞いた

VMware製品のコストアップの影響はユーザー企業だけでなく、VMware製品をサービスに組み込んで提供している事業者にも及ぶ。今後の価格改定や対応方針など、ユーザーが気になるところを独自のベンダーアンケートで尋ねた。

» 2024年08月06日 07時00分 公開
[岡垣智之キーマンズネット]

 2023年末にVMwareを買収後、Broadcomは2024年2月末に新しい製品ラインアップとライセンスモデルを発表した。課金形態とライセンス体系が変更されたことで今後のシステム戦略およびIT投資計画を見直さざるを得ない状況となり、多くのユーザーが困惑したことは周知の通りだ。

 新しいライセンスモデルが発表されてから5カ月が過ぎた現在、一部のITベンダーやパートナー企業から対応方針やアナウンスメントが発表されているが、まだ今後の見通しが不明瞭な部分もある。

コストアップの影響をベンダーはどう受け止め、どう対応するか

 デル・テクノロジーズや日本オラクル、Amazon Web Services(AWS)、インターネットイニシアティブ(IIJ)、富士ソフトなど、自社サービスや製品にVMwareのソフトウェアを利用しているITベンダーおよびクラウドサービス事業者、パートナー企業に対してベンダーアンケートを実施した。「決定している今後の対応方針」「コスト増を踏まえた顧客へのサポート」「今後の価格改定の予定」などの質問を投げかけた。その回答を基に、各社の今後の対応を見ていく。

VMware買収によるライセンス体系の変更で、サービス展開やビジネスに影響があったか

 AWSでは、ベアメタルのサーバにVMware環境を構築しクラウドサービスとして提供する「VMware Cloud on AWS」の新規契約を終了した。この件はBroadcomから既に発表されており、既存のユーザーは引き続き利用できる。

 OracleのVMware関連サービス「Oracle Cloud VMware Solution」は、VMwareのSDDC(Software-Defined Data Center)基盤である「VMware Cloud Foundations」のライセンスがサービスに含まれるため、特に大きな影響はないという回答だった。

 HCI製品などでVMwareとパートナーシップ関係にあるデル・テクノロジーズは、HCIとサーバ、ソフトウェアデファインドインフラストラクチャにおいて新たな契約を交わし、引き続きソリューションを提供する考えだ。具体的には「Dell VxRail」「Dell vSAN Ready Nodes」「Dell PowerEdge」「Dell PowerFlex」が対象となる。

 今回のライセンス体系の変更によって、多くのベンダーおよびユーザー企業がコストアップの影響を受けるとみられる。VMware製品のリセラーである富士ソフトは現在進行中のプロジェクトにもその影響が及び、延期や中止といった事態が起こり得ると推測する。ユーザー企業だけでなくIIJもコストアップのあおりを受け、VMware製品を利用したネットワークサービスなどで影響が生じたという。

決定している今後の対応について

 AWSは現状をみて顧客ごとに最適化したサポートメニューによって支援する方針だ。日本オラクルは、前述の通りOracle Cloud VMware SolutionにVMwareのライセンス料が含まれるため、契約期間内は固定価格でサービスを提供するとしている。

 富士ソフトはマルチベンダーおよび独立系SIerとしての立ち位置を生かして、コストや課題に応じてHCIや「Microsoft Hyper-V」「Azure Stack HCI」、パブリッククラウド(AWS、「Microsoft Azure」「Google Cloud」)などVMware製品以外の選択肢を提示しながら顧客に最適な解決策を提供する。本連載第2回で、VMware環境からの乗り換えで検討している製品としてHyper-Vが挙がっており、そうしたニーズに応える格好だ。

コストアップが見込まれる顧客に対して提供を検討しているサポート

 VMwareライセンスの変更を機にパブリッククラウドへの移行を検討する企業もみられるが、長期的に考えると従来の環境と移行後の環境でどれくらいのコストのギャップが生じるかが見えにくい。各社はこれを解消するためのサービスを提供予定だという。

 AWSでは、オンプレミス環境とクラウド環境のコスト差を比較するアセスメントサービスや、クラウド移行推進プログラム「AWS Migration Acceleration Program」および「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ ファミリー」によってパブリッククラウドへの移行を支援するとのこと。

 日本オラクルはOracle Cloud VMware Solutionを提供する他、コストアップが見込まれるオンプレミスのVMware製品ユーザーに対してクラウド移行支援サービスを無償で提供する。富士ソフトは、他製品への移行コストや移行難易度、アプリケーションの改修の有無、運用スキルにかかるコストなどを総合的に評価し、最適なプランを提示する方針だ。

提供する製品やサービスについて、今後価格改定の予定はあるか

 本稿公開時点で、日本オラクルはOracle Cloud VMware Solutionの価格改定は予定していないとの回答。IIJは2024年4月に「IIJ GIOインフラストラクチャーP2 Gen.2」の価格を改定し、顧客には既に個別に案内済みだ。2024年2月にBroadcomから新ライセンスが発表され、4月に価格改定とリードタイムが短く、対象顧客に案内をする十分な時間がなかったことが課題だったという。

 VMware製品を利用している事業者のサービスにはライセンス料が含まれているため、自社の環境だけでなく利用しているクラウドサービスなどにも目を配る必要がある。本稿で紹介したようにコストアップを懸念するユーザーへの救済策を提供しているベンダーやSIerもあるため、そうした支援も利用しながらコスト上昇幅をできる限り抑える手立てを考えたい。

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