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Atlassianが生成AI機能を含めたアップデートで業界に激震を与えた理由

Atlassianが提供する自動化ツール「Rovo」は、APIを介してサードパーティー製のSaaSを含む多様なツールを統合し、それらに格納されたデータの検索機能とAtlassian Intelligenceの自動化機能を適用できるとして注目を集めている。具体的に業務をどう変えるのか?

» 2024年08月15日 08時00分 公開
[Beth PariseauTechTarget]

 「Jira」や「Confluence」などの情報共有ツールを提供するAtlassianは2024年4月29日(現地時間、以下同)の週にクラウドプラットフォーム機能に関する数々のアップデートを実施した。2024年4月29日の週に開催されたカンファレンス「Team '24」の基調講演で同社の役員が語ったところによると、Jira、Confluence、非同期ビデオコミュニケーションツールである「Loom」の買収、AIを活用した新しい検索および自動化ツール「Rovo」という4つの主要製品のコアグループが、Atlassian cloudにおける「チームワークの基盤」を形成しているという。

 特に、自動化ツール「Rovo」は、APIを介してサードパーティー製のSaaSを含む多様なツールを統合し、それらに格納されたデータの検索機能とAtlassian Intelligenceの自動化機能を適用できるとして注目を集めている。具体的に業務をどう変えるのか。

Atlassianが主要製品のアップデートで業界に激震を与えた理由

 ConfluenceとLoom、RovoがAtlassianのクラウド製品における柱として位置付けられる中、2024年4月30日に行われた基調講演ではJiraが大きな注目を集めた。以前は独立していたJira Work ManagementがJiraに統合され、マーケティングや財務からソフトウェア開発やインシデント管理に至るまで、各チームのニーズに合わせてカスタマイズ可能な統一された作業管理ポータルとなった。

 Atlassianのアヌ・バラドワジ氏(プレジデント)は、基調講演の中で次のように語った。

 「私たちは、これをシンプルにJiraと呼んでいる。『Jira Work Management』と『Jira Software』の良いところを一つのプロジェクト管理ツールにまとめたもので、仕事の計画を立て、追跡し、共有された目標の達成を目指すチームを支援できるようにした。目標はJiraに直接表示されるようになり、開発者がWebサイトをコーディングしているところから、マーケティング担当者がキャンペーンを計画しているところまで、全てのチームの作業内容を把握できるようになった。どの作業項目についても、チームは、作業がどのゴールに貢献しているかを確認できる」

 基調講演における大半の機能デモにJiraが登場し、新たに統合された他の製品ポートフォリオからJiraを自動的に開き、情報が入力されて頻繁に紹介された。また、Jiraの製品ラインへの既存のAtlassian製品の統合も発表された。

 AtlassianがOpsgenieを買収してから6年後に、「Jira Service Management」に完全にOpsgenieが統合された。その他にも、長らく議論されていた機能追加として、「Atlassian Analytics」サービスでのバリューストリーム管理(製品あるいはサービスを顧客の手に運ぶことに要求される全体的な活動の管理)のための「Jira Alignフローメトリクスデータベース」がTeam '24で発表された。

 調査企業であるForrester Researchのジュリー・モー氏(アナリスト)によると、これらの開発は、4年前にServiceNowの領域に進出し始めた企業向けのサービス管理(ESM)におけるAtlassianの競争力を高めるものだったという。

 「Atlassianは知識を全面に押し出している。それは『botを作るのを手伝う』ということではなく、『より良いワークフローを構築するのを手伝う。ナレッジワーカーがより迅速に情報にアクセスできるようにする』ということだ。戦略的な観点から見ると、それは市場において非常にユニークな立ち位置だといえる」(モー氏)

 モー氏によると、ESMの一部の分野において、AtlassianがServiceNowの支配的な地位を獲得することはないだろうが、より軽量でアクセスしやすい製品群でニッチな市場を独自に切り開くことは可能だという。

統一されたクラウド検索はユーザーに喜ばれる

 現在、Atlassianの全てのクラウド製品は、統一されたデータレイクと、顧客データオブジェクト、作業チーム、ワークフローアクション間の関係を自動的にマッピングするチームワークグラフによって支えられている。このデータレイヤーとチームワークグラフは、分析ダッシュボードや自動ワークフローに反映され、間もなくAIエージェントによって実行されるようになる。

 しかし、まずはAtlassianの既存製品ポートフォリオ内の検索結果の質を向上させることが重要だ。これは、RAG(情報検索と生成AIを組み合わせた技術)を用いて検索を支援することで達成される。Atlassianの担当者も、過去の製品バージョンには多くの改善の余地があったと認めている。

 Atlassianのジャミル・ヴァリアニ氏(AIを担当するバイスプレジデント兼製品責任者)は、TechTarget Editorialの取材において「この6カ月の間に、ユーザーが探しているものが、検索の最初の段階で見つかる可能性を25%向上させた。私たちは実際に、業界標準の検索関連性を測定する『正規化減損累積利得』において、業界リーダーの後じんを拝していた状態から、業界リーダーを8ポイント以上上回るところまで進歩した」と述べた。同氏は、2023年10月にMicrosoftの検索およびAIを担当するチームを離れて、現在の職に就いた。

 オスロに拠点を置くセキュリティ企業であるSector Alarm Groupのアンディ・ロースクイスト氏(エンジニアリングを担当するバイスプレジデント)は「このような検索への投資は良い兆候だ」と述べた。

 「Atlassianの検索機能は、長い間最も不満に感じるものだった。JiraやConfluenceに情報が存在しないのか、それとも検索性能が悪いだけなのかを見分けるのはとても難しい」(ロースクイスト氏)

 Atlassianのコミュニティーリーダーによると、異なるクラウド製品間で統一された検索は、新しい統合とともに、クラウド顧客の時間を節約することにつながるという。

 衛星通信企業におけるAtlassianのアーキテクトであるダン・トムズ氏は次のように述べた。

 「現在は製品を横断して検索できるようになり、ツール間のコンテキストの切り替えがなくなったが、これらはAtlassianが長い間苦労してきた点である。特にConfluenceの検索インタフェースにおいて顕著だった。この点に本格的な注目が集まるのは価値のあることであり、AIを活用して自然言語で質問ができるようになったことは素晴らしいことだ」

Atlassian IntelligenceがAIオートメーションの展開をリード

 Atlassianのクラウド全体で、生成AIは既存の製品に新たな輝きをもたらしている。財務や法務、人事部門向けのJira Service Management内での自動サービスデスク生成などはその一例だ。過去のリリースにおいて事前に設定されたリクエストテンプレートから大幅に拡張されている。Atlassianの担当者は、Jira Service Managementにおける自動化された根本原因分析とインシデント解決のためのAIOps機能を公開した。

 Atlassian Intelligenceの追加機能は、2023年4月に初めて公開され、その後Team '24で発表された。その中には、Confluence、Jira、Jira Service Management向けのAIを使ったドキュメント編集ツールがあり、Bitbucketと連携してプルリクエストの要約やリリースノートを自動生成する機能が含まれている。

 大規模なJiraプロジェクトを自動的に小さな部分に分割し、課題の要約を自動生成する機能も間もなく利用できるようになる。さらに、AtlassianがOpticを買収したことで、AIを使って自動生成されたAPIドキュメントも今後提供される予定だ。

 トムズ氏は、自分のチームがすでに全てのクラウドサイトでAtlassian Intelligenceを有効にしており、そのツールを使用して自然言語のクエリをAtlassianの「Jira Query Language」(JQL)に変換していると述べた。

 「JQLにあまり詳しくない場合でも、私が手助けする必要がないので、少しプレッシャーが軽減される。Confluenceでは、単に大きなドキュメントを要約するだけでなく、そのドキュメントを作成するのにも役立っている」とトムズ氏は述べる。

 ロースクイスト氏は、インシデント対応において、課題の文脈に基づいてAIが生成するレファレンス(参照情報)が役立つと述べたが、AIが生成するJira課題(Jiraで作成される作業項目)については疑問を持っている。

 「生成AIの大きな弱点は、人間が書いたように聞こえることであり、既に混乱を招くチケットがたくさんある中で、AIがそれを増やす必要はない」と彼は言った。

 これに対して、トムズ氏は異議を唱えた。

 「ほとんどのチームは忙しすぎる。全てが非常に忙しい。AIにタスクを任せるという考えは未来のことだが、それは避けられないことだ。これは自動化の次の進化にすぎない」

 ただし、トムズ氏は、AI自動化にはリスクと欠点があることを認めている。AIが使用するデータの質が高くなければ有用な結果を生み出せないため、組織は既存のドキュメントをクリーンアップする必要があることが多い。

 彼は、チームが自動化ワークフローを作成する前に、まず目的を十分に理解することが重要だと述べている。これには、高い技術によるものではないアプローチが含まれることもある。

 「私は常に、『何を達成しようとしているのか、そしてそれをどうやって達成するのか』を最初に考えることをお勧めしています。そして次に『何を使ってそれを達成しようとしているのか』を考えます。私はこの方法を推奨する唯一のコミュニティーリーダーではないと思います。自動化を始めるときには、まず紙に要件を書き出すことをおすすめします」(トムズ氏)

知識管理はRovoで作られる

 Atlassianの今後のRovo製品は、カスタムコネクターを介して顧客のサードパーティー製のSaaSに対して、統合クラウド検索とAtlassian Intelligenceの自動化機能を適用する。Rovoは、異なるデータソースを即座にまとめることで、知識カードや組織固有の用語定義を作成すると、Atlassianの共同創設者兼共同CEOであるマイク・キャノン=ブルックス氏は基調講演で述べた。

 「RovoはAIとチームワークグラフを活用して、あらゆるドキュメントを理解し、それらを接続し、相互参照し、重複を排除し、概念を分析します。これらは全て、ユーザーが何もしなくても実行されます。そして、新しいドキュメントが作成されるたびに、Rovoは常に動作し続けます。『Microsoft SharePoint』に保存された『Microsoft Word』ドキュメントに新しい作業内容説明書が書かれた場合、Rovoはその作業をリンクし、定義を更新します。また、営業チームから送られてきた『Google スプレッドシート』にプロジェクトのターゲット顧客がリストされている場合、Rovoはその情報をリンクし、チームメンバーやプロジェクトの定義を更新します」

 「Rovo Chat AIアシスタント」は、チームワークグラフに基づいて、ユーザーが尋ねた質問に対して、すでに書かれていない答えでも応答すると、キャノン=ブルックス氏は述べた。

 Atlassianはまた、OpenAIの「GPT API」のプライベートインスタンスを使用してユーザーデータを保持せず、複数のクラウドテナントからのデータを混合するようなLLMトレーニングを行わないことで、一般的な企業のAIデータプライバシーの懸念にも対応している。

 Rovoのデモでは、「コンテキストに基づいた検索が良好に見える」とConstellation Researchのアナリストであるアンディ・トゥライ氏は述べている。しかし、現在のところRovoはプライベートβ版であり、まだ進行中の作業だ。

 「チャットbotはAtlassianの領域内の任意のドキュメントから引き出す会話を可能にしますが、現在のところ構造化データにのみ限定されており、非構造化データについての具体的な計画やタイムラインはありません」とトゥライ氏は言った。

 最後に、RovoはAIエージェントをサポートする。これは、生成AIツールの次の大きなトレンドになると一部の業界専門家が予測する、botベースのワークフロー自動化の一形態だ。Rovoは、Atlassianとそのパートナーによって事前に構築された50以上のエージェントが搭載されており、ユーザーは「Atlassian Forge」または組み込みのノーコード開発ツールを使用して独自のエージェントを構築することも可能だ。

 Team '24の基調講演で公開されたRovoエージェントには、マーケティングチームがブログやその他の外部コミュニケーションが会社のポリシーに従うことを保証する「Communications Crafter」や、画像生成のためにCanvaにリンクする「Social Media Scribe」といった機能が含まれている。

 これら全てはAtlassianのDevOpsのルーツからは遠く離れているように思えるかもしれない。しかし、Jiraに関連したエージェントには、Jiraチケットのバックログを整理し、統合し、優先順位を付ける「Backlog Buddy」や、Atlassianの社内開発チームが過去6カ月間で460以上の機能フラグをクリーンアップするために使用した「Feature Flag Cleanup」が含まれているとCannon-Brookes氏は述べている。

 知識管理はDevOpsの重要な側面でもあるとトムズ氏は付け加えた。

 「開発と運用の間のサイロを壊し、プロジェクトの立ち上げから実際の管理と運用まで、全てをより速く、より簡単にしようとしている。製品やサービスの開発における大きな部分は、チーム間の知識移転だ」トムズ氏は述べた。

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