メディア

クラウドERPの開発を進めるSAP オンプレ顧客のクラウド移行プログラムを強化

SAPは、中堅企業にSAP S/4HANAへの移行を促すプログラムGROW with SAPに、販促と経費追跡のためのソリューションを追加したと発表した。

» 2024年08月29日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]
CIO Dive

 SAPは2024年7月15日(現地時間、以下同)、中堅企業に「SAP S/4HANA」(以下、S/4HANA)への移行を促すプログラム「GROW with SAP」に、販促と経費追跡のためのソリューションを追加したと発表した。

 そもそも、RISE with SAPとGROW with SAPの違いはいったい何なのか。その違いと新機能の詳細を解説する。

レガシーなオンプレミス顧客を何とかしてクラウド化したい

 「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」担当のジョナサン・ローズ氏(シニアバイスプレジデント兼プロダクトマーケティング責任者)は、2024年7月15日のブログ投稿で「SAPは、『Sales Cloud CRM』と『Concur Expense』(以下、Concur)を中堅企業向けのERPパッケージに組み込んだ」と述べた。

 SAPはここ数カ月、顧客をクラウドに移行させるための取り組みを強めている(注1)。オンプレミスのERPに関するサポートサービスの終了日が近づいているためだ。GROW with SAPや大企業向けのプログラムであるRISE with SAPを通じて、SaaSと移行サポートをバンドルすることが取り組みの中心となっている。

 SAPは、サービスベースのソフトウェア提供を優先する広範な再編計画の一環として、2025年から幾つかの主力製品においてオンプレミスのERPに関する保守サポートを終了する予定だ(注2)。しかし、同ベンダーの既存顧客の大半は、現在設定されている移行期限を過ぎてしまう可能性が高い。

 2023年3月に導入されるグリーンフィールドERPパッケージGROW with SAPは(注3)、2021年に展開された企業顧客向け移行促進プログラムRISE with SAPを反映している(注4)。どちらにおいても、「SAP Business Technology Platform」ソリューションおよび移行促進サービスとともにS/4HANAのパブリッククラウド版が提供されている。

 アドバイザリーサービスを提供するInfo-Tech Research Groupのスコット・ビックリー氏(アドバイザリー・プラクティスリード)は「S/4HANAでクラウドファーストを目指すと決めたとき、そのパッケージをRISEプログラムに組み込んだ」と語る。

 SAPは、中小企業にも同様のアプローチを取っている。ビックリー氏は「SAPはフロントオフィスの機能とバックオフィスのERP機能を融合させている」とも述べている。

 ビックリー氏によると、この戦略によって、顧客は「Salesforce」をはじめとする他のCRMを提供する企業への移行をためらう可能性があるようだ。同氏は「中堅企業はシステムを構築することが仕事ではない。そのため、管理するベンダーは少ない方がよい」と述べた。

 調査企業であるForresterのリズ・ハーバート氏(バイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト)は、「CIO Dive」に対して電子メールで次のように語った。

 「2024年7月15日の発表は、中堅企業との関係を再び強化するための試みだ。中堅企業の顧客は、一般的にオールインワンソリューションに魅力を感じる。このアプローチは、統合スイートから価値を引き出しやすくし、販売や展開、管理を簡素化する」(ハーバート氏)

 Sales Cloud CRMとConcurは、人事やエンジニアリング、サプライチェーンソリューションとともに、プレミアムバンドルであるGROW with SAPにのみ含まれている(注6)。ビックリー氏は、SAPがこのパッケージに機能を追加し続けることを期待している。

 「SAPは大きな船だ。製品ロードマップが進化するにつれて、SAPはチャンスに気付き始めているが、一度にできることは限られている」(ビックリー氏)

 何万もの顧客がERPへの移行を検討している中で、SAPは潜在的なボトルネックと戦っている。

 「SAPがクラウドサービスの全てにAIを組み込んでいる中、レガシーな顧客の約3分の2は、いまだにオンプレミスの環境で稼働している。そのため、SAPの時間の大半はそれに費やされている」(ビックリー氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。