EYによると、テクノロジー業界で働く人の多くは、自らが働く企業の文化を高く評価しているが、今後1年以内の退職を検討しているという。この矛盾はなぜ起きているのだろうか。
コンサルティング企業のEYが2024年10月7日(現地時間、以下同)に発表した報告書によると(注1)、テクノロジー業界の従業員の73%は「企業文化は年々向上している」と回答している。「職場の文化が低下した」と回答したのはわずか7%だった。
このようなポジティブな兆候があるにもかかわらず、EYのピープルコンサルティング部門に所属するロザリン・ファインソッド氏(プリンシパル)によると、テクノロジー業界の従業員は他の業界と比べて退職の意向が高い傾向にあるという。
テクノロジー業界で働く人々は、優れた企業文化の中で働きながら、なぜ退職したがるのか。
テクノロジー業界のリーダーたちは、従業員を定着させ、専門的な能力開発を支援する強力な手段である職場文化の改善に長い間取り組んできた(注2)。
各業界の職場の健全性を把握するため、EYは文化と成長、報酬の3つの主要カテゴリーに基づいて指数を作成した。テクノロジー業界に所属する従業員は全業界の中で最も高い評価を受け、100点中68点を獲得し、平均の55点を大きく上回った。
ファインソッド氏によると、業界の肯定的な評価と退職意向の高さとの間のギャップの一部は、転職に前向きな若い世代の意識の変化に起因しているとされている。
しかし、もう一つの要因として、テクノロジー業界の一部で需要の高い人材が不足していることが挙げられる。
「需要のあるスキルを持っていると感じるならば、さまざまな機会があるだろう。従来のように『企業に縛られている』という感覚は小さくなっている」(ファインソッド氏)
人材サービス企業のHarvey Nashが2024年10月14日に発表した報告書によると(注3)、IT関連職の需要が堅調な兆しを見せる中、技術者の約半数は1年以内に転職先を見つけることを期待している。また、IT業界団体のCompTIAが同年10月4日に行った報告によると(注4)、IT分野の失業率は低下し始めており、企業は同年9月に50万件以上の求人を出していたという。
技術系人材の獲得が難しくなっている昨今のトレンドに対応するため、ファインソッド氏はビジネスリーダーに対して、労働市場と自社の健全性への理解度を高めることを推奨している。
インシデント管理サービスを提供するPagerDutyのエリック・ジョンソン氏(最高情報責任者)によると、CIO(最高情報責任者)は社内コミュニケーションへの注力により、優秀な人材の定着を支援できるという。
「多くの人は、自分の仕事が企業の成功にとって意味のあるものだと思いたい。自分の役割は何なのか、自分は何に対して責任を負っているのか、自分にとって成功とはどのようなものなのかを理解したいと考えている。これらは(従業員の定着にとって)基盤となる要素だ」(ジョンソン氏)
出典:Despite improved workplace culture, tech workers still eye the door(CIO Dive)
注1:Will the future of talent be shaped by the flow of an untethered workforce?(EY)
注2:Culture wars: In the battle to retain tech talent, morale matters(CIO Dive)
注3:More attrition awaits overworked IT teams(CIO Dive)
注4:IT hiring roars back after monthslong slump(CIO Dive)
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