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日本企業のデータ活用進捗状況 「越えられない壁」が浮き彫りに

データ活用への取り組みが進む中で、企業はどのような運用課題に「つまづいて」いるのだろうか。IDCが実施した調査から、日本企業におけるデータ運用のハードルが見えてきた。

» 2024年11月19日 07時00分 公開
[金澤雅子キーマンズネット]

 データ活用に取り組む企業が増え、AI技術が進展する中で、データ運用に関する悩みが細分化、深刻化している。IDC Japan(以下、IDC)が実施した調査から、データ運用の課題が明らかになった。

そこから先は超ハード? つまづき多発の「ハードル」

 IDCは日本企業の課題や取り組みを分析するためにデータプラットフォームの運用に関する成熟度調査を毎年実施している。今回(2024年)の調査では、2022年、2023年と比較して日本企業のデータプラットフォーム運用に関する成熟度が上昇した半面、ある段階で「伸び悩み」が見られた。それは何か。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)が普及してから7〜8年が経過し、経験を積んだユーザーの多くがデータ活用を業績に結び付けたためとIDCはみている。

 今回、IDCが作成したデータ運用の成熟度モデルでは、ユーザー企業のデータ運用の状態を次のように分類している。

2022〜2024年のデータ管理におけるユーザー成熟度分布の推移(出典:IDCのプレスリリース)

 今回の調査では、第1段階(未整備)が減少し、第2段階(途上前期)はほぼ横ばいであるのに対して、第3段階(途上後期)〜第5段階(迅速な対応が可能な状態)の割合が増加した。

  • 未整備(第1段階):データ運用の仕組みの大部分が未整備な状態
  • 途上前期(第2段階):データ運用の仕組みを整備している途上だが、改善点が多く残っている状態
  • 途上後期(第3段階):データ運用の仕組みの整備が進み、課題を残す部分が少ない状態
  • 要件充足(第4段階):データ運用の仕組みが組織全体に整い、ビジネス要件を満たした状態
  • 迅速な適応(第5段階):データ運用の仕組みがシステマティックに組織全体に整い、規制や競合などの環境変化に素早く対応できる状態

 なお、成熟度の分布を求めるに当たっては「データ活用、管理の業務への貢献度」「データ活用や分析の能力、人材などのリソース」「データガバナンス整備状況」「業務部門とデータ管理部門の協力」「利活用データの範囲」「データ管理における分野別の環境整備状況」の6項目を設定し、各項目の重要性を考慮して重み付けした上で集計したとしている。

 その結果、第5段階に達した企業の割合はわずかしか増えておらず、社会環境や競合状況の変化に素早く対応できる体制を整備するレベルに到達することの難しさは残っているとIDCは分析する。AI技術の進化は急速であり、ITリテラシーの高いユーザーでもタイムリーにそれらの新技術をデータ運用に取り入れ続けるのは容易ではない様子がうかがえるとしている。

データ運用の今後は?

 IDCは今後のデータ運用について、「データ駆動型の業務自動化に対応するために大きく変化する」と予測している。自動化の実現には、組織内のデータ品質や整合性の改善、業務遂行に必要な知識の形式化・知識ベース化、処方的分析(単なる予測だけでなく、専門知識とリアルタイムデータに基づいてビジネスを判断するための総合的分析)の精度を高めるためのエージェントの設計および複数エージェントによる協調動作のマネジメントなど、多方面にわたる環境整備やテクノロジーの導入が求められる。

 IDCの鈴木康介氏(Infrastructure&Devicesのリサーチマネージャー)は「データプラットフォームの役割は、従来の業務システムのデータ管理やビジネス分析用データ運用基盤にとどまらない。AIを活用したデータ駆動型の業務自動化や、組織の知識ベース拡充に広がる新たなフェーズへと向かっている。この動きは組織に生産性や利便性の大幅な向上をもたらす。それと同時に、相応のデータガバナンスやセキュリティのレベル強化も必要になり、データ運用体制の継続的な革新が求められる」と分析する。

 なお、本稿の内容は、IDCが公開した2024年国内データプラットフォーム運用成熟度調査のレポートに詳細が報告されている。

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