デスクワーカーにおけるAIの導入率の伸びが鈍化している。2023年冬から2024年春にかけては半年で導入率が12ポイント上がっていたが、2024秋は3カ月で3ポイント上昇するにとどまっている。
Slackが2024年11月12日(現地時間)に発表した報告書によると、企業が技術の導入を重視しているにもかかわらず、デスクワーカーの間でAIの導入が鈍化していることが分かった。
エクスペリエンスマネジメントツールを提供するQualtricsが1万7000人以上の従業員を対象に実施した調査によると、過去3カ月でAIの導入率は横ばいとなっており、全世界で3ポイントの増加にとどまった。2024年3月以前の6カ月間では20%から32%に増加していた。また“AI熱”も冷めてきており、世界的に6ポイント低下した。
調査によるとデスクワーカーのほぼ半数が「マネジャーにAIの使用を隠している」と回答したという。従業員は「AIの使用を隠す背景にある不安は、自分が無能もしくは怠惰だと思われたり、不正をしていると思われたりするのではないかという懸念に基づいている」と述べた。
このように混乱の兆候は見られるが、企業によるAIへの注力は揺るぎない。
Slackの調査によると、ほぼ全ての組織が2025年にAIに投資する予定であり、経営陣の97%は「生成AIをビジネスの運営に取り入れる必要性を感じている」と回答した。
同時に、企業は技術の導入における障壁やユースケースの拡大に関する課題に直面している。導入率の鈍化やシャドーAIの兆候の広がりが状況をさらに複雑にしている。
Slackでリサーチおよびアナリティクスを担当するクリスティーナ・ジャンザー氏(シニアバイスプレジデント)によると、AIの使用に関する明確な基準を設け、成果を称賛することは、従業員がこの変革の中で何が期待されているかを理解するのに役立つという。同氏は「私たちにできることは多い」と述べた。
リーダーたちはAIの課題を克服できると自信を持っている。リモートアクセスツールを提供するTeamViewerの報告書によると、リーダーの約3分の2は「データ管理やスキルギャップ、シャドーAIなどのAIに関連するリスクをコントロールする組織の能力を信頼している」と述べていた(注1)。
2年前と比較して。企業では技術の欠点に対処するための準備が整っている。採用計画を導くためのベストプラクティスやフレームワークが増加しており(注2)、ベンダーはガバナンスやガイドラインを強化するツールを提供している(注3)。AIの可能性を過大に描く一部の誇大広告は終息し(注4)、より計画的な取り組みが進んでいる。
しかし、リスクが明確になったことで、ベンダーは一部の組織がAIの導入を早急に取りやめると予想している。
「私たちはこれらの障害を乗り越えられる。私たちはAIが人々の仕事を改善し、仕事の負担を軽減し、より意味のある仕事に集中する時間を増やすための多くの機会が存在すると考えている。障害に効果的に対処する必要があるだろう」(ジャンザー氏)
出典:Employee AI adoption cools globally(CIO Dive)
注1:Most IT leaders like their chances against AI risks(CIO Dive)
注2:CIOs turn to NIST to tackle generative AI’s many risks(CIO Dive)
注3:Tools to solve AI’s trust problem come at a cost(CIO Dive)
注4:How CIOs can respond to generative AI’s ‘moment of reckoning’(CIO Dive)
© Industry Dive. All rights reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。