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Microsoft 365 CopilotとGitHub Copilotを徹底解説

Microsoftが市場に投入したさまざまなCopilotには大きな違いがある。本記事では、特に重要な2つのCopilotについて詳しく紹介する。

» 2025年03月10日 11時47分 公開
[Brien PoseyTechTarget]

 Microsoftは「Copilot」の取り組みに全力を尽くしているが、さまざまな種類のCopilotをリリースしたことで若干の混乱を招いている。

 Microsoftのソフトウェアやサービス向けのさまざまなCopilotは、その機能の範囲が異なり、無料で利用できるものもあれば、サブスクリプションが必要なものもある。例えば、Microsoftは「Windows 11」にCopilotを統合している。

 Windows 11のCopilotは、対応する「Windows 11 Pro」およびEnterpriseエディション(2023年の第2四半期以降にリリースされたもの)に無料で含まれている。しかし、「Microsoft 365 Copilot Business Chat」(以下、Microsoft 365 Copilot)や「GitHub Copilot」など、他の多くのCopilotには追加費用がかかる。これらは特によく知られている2つのCopilotであり、それぞれの機能と違いを理解することが重要だ。

Microsoft 365 CopilotとGitHub Copilotを徹底解説

 CopilotとはMicrosoftのソフトウェアに実装された生成AI搭載型のチャットbotだ。ユーザーは自然言語での問いかけを通じてソフトウェアとやりとりできる。Microsoftは「ChatGPT」を開発したOpenAIと提携し、その技術を生かして、見た目や動作がChatGPTに似たCopilotを開発した。

Microsoft 365 Copilotとは

 Microsoftの主要なCopilotであるMicrosoft 365 Copilotは、Windows 11 Copilotと同様に、プラットフォームをより効率的に操作できるようにユーザーを支援する。それに加えて、ユーザーの代わりにドキュメントを作成することもできる。

図1 Windows 11 に表示される Microsoft Copilot アプリケーション

 Windows 11 CopilotとMicrosoft 365 Copilotの大きな違いの1つは、後者が動作するプラットフォームとは別のライセンスとして提供されるサブスクリプション型サービスである点だ。Microsoft 365 Copilotの追加サブスクリプションでは、通常のMicrosoft 365のサブスクリプション料金に加えて、1ユーザー当たり月額4722円(税別)、年払いの場合月額4497円(税別)がかかる。

図2 Microsoft 365のCopilotは、ユーザーがデータと簡単にやりとりできるよう支援する

 当初、MicrosoftはCopilotのライセンスを大規模な組織にのみ販売し、最低300ライセンスの購入を求めていた。しかし、この要件はすでに撤廃され、規模にかかわらずあらゆる組織がMicrosoft 365 Copilotのライセンスを購入できるようになった。

 Microsoft 365 Copilotは主に大規模な企業顧客を対象としており、AIによる支援を活用したリアルタイムの提案やプロンプトへの回答を通じて、大規模な組織のユーザーが時間をより効率的に活用できるようサポートする。Copilotは会議の計画やドキュメントの要約、その他のビジネス向けのタスクを支援できる。

図3 Microsoft 365 Copilotは、Excelや PowerPointなどのOfficeアプリケーションを通じて提供される。図はWordのCopilot

 Microsoftは、小規模な組織のユーザーや家庭のユーザー向けに、より手頃な価格のオプションも提供している。この低コストオプションは「Microsoft Copilot Pro」と呼ばれ、ライセンス料金は1ユーザー当たり月額3200円だ。Microsoft 365 Copilotと同様に、Copilot Proも「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」(以下、Excel)、「Microsoft Outlook」「Microsoft PowerPoint」(以下、PowerPoint)などの「Microsoft Office」のアプリケーション内で利用できるCopilot機能を提供する。両者の主な違いは、Microsoft 365 CopilotがMicrosoft Graphを活用して組織のデータを取り込み、そのデータに基づいた質問に回答できる点だ。一方、Copilot Proは主にドキュメント中心の機能に特化している。

 Microsoft 365 Copilotが非常に強力である理由の1つは、Copilotがユーザーと同じデータにアクセスできる点だ。これにより、Copilotはドキュメントや電子メールなどのデータを活用して回答を生成できる。また、Microsoft 365 Copilotは「Microsoft Teams」(以下、Teams)と統合されており(注6)、Teamsの会議の要約やアクション項目の生成、チャット履歴の検索による回答の提供にも対応している。

 2024年9月、MicrosoftはMicrosoft 365 CopilotのWave 2を発表した。Wave 2では、AIを統合した共同作業型のマルチユーザーキャンバス「Copilot Pages」が導入された。さらに、MicrosoftはTeamsやExcel、PowerPointのCopilotを改善した。Wave 2には、さまざまなビジネスプロセスを自動化できる「Copilot agents」のリリースも含まれている。

 Copilotのサブスクリプションは特にユーザー数が多い組織にとって高額になりがちだが、そのような組織は、エンドユーザーの生産性向上の可能性によってそのコストが正当化されることに気付くだろう。

 ただし、Microsoft 365 Copilotが完璧ではないことも把握しておくべきだ。AIは誤りを犯すことがあり、その誤りはユーザーがCopilotに電子メールのメッセージやドキュメントを作成させた際に表れる。Microsoft 365のアプリでCopilotを使用する際のもう1つの一般的な問題は、ドキュメントに関する質問をCopilotに投げかけた場合、Copilotがドキュメントの全体を読まずに回答を生成しているように感じられることだ。

GitHub Copilotとは

 GitHub Copilotは開発者向けに設計されており、ペアプログラミングチームの一員として機能することを目的としている。ペアプログラミングは、2人の開発者が一緒にコードを開発する手段だ。開発者は同じワークステーションを共有し、1人の開発者がキーボードを操作してコードを書き、もう1人の開発者がコードが作成される過程をチェックする。この手法は、開発者がより効率的に機能するコードを作成し、バグを減らすのに役立つ。

 GitHub Copilotには、開発者が入力した内容に基づいてコードやコードの提案を生成するAIチャットbotが使用されている。開発者はGitHub Copilotを使って、個別の関数を作成したり、アプリ全体の開発を支援したりすることができる。しかし、AIが生成するコードは完璧ではないため、人間が手動でコードをレビューして、正しく機能するかどうかを確認する必要がある。

 Microsoft 365 Copilotと同様に、GitHub Copilotもサブスクリプション型のサービスだ。料金は、個人プランが月額10ドル、エンタープライズプランが月額39ドルとなっており、月額19ドルのビジネスプランも用意されている。また、Microsoft 365 Copilotとは異なり、GitHub Copilotではサブスクリプション登録前に無料トライアルを利用できる。

 GitHub Copilotにサインアップする際は、公開コードと一致する提案を許可するかブロックするかを選択できる。提案を許可すると柔軟性が高まるが、商用アプリケーションを開発する場合は著作権上の問題を避けるためにブロックすることも可能だ。

 GitHub Copilotを使用するには、コードエディターにGitHub Copilotの拡張機能をインストールする必要がある。拡張機能は、「Visual Studio Code」「Visual Studio」「JetBrains IDE」「Xcode」向けに提供されている。

 GitHub Copilotは、Microsoft 365 Copilotを含む他のCopilotとは動作が異なる。通常のCopilotのように自動的にクエリを入力するためのテキストボックスが表示されるわけではない。代わりに、GitHub Copilotに何かを指示したい場合は、「Ctrl+I」を押し(図4)、リクエストを入力する必要がある。

図4 ユーザーがCtrl+Iを押したときにGitHubで表示されるCopilotのポップアップメニュー

 例えば、図5では、GitHub Copilotに対してPowerShellでシンプルなグラフィカル「Hello World」スクリプトを作成するようリクエストしている。GitHub Copilotは、スクリプト内にコメントとして入力されたテキストに応じてコードを生成することも可能だ。

図5 GitHub Copilot が作成したコードの一例

 GitHub Copilotは非常に優れた動作をするように見える。しかし、Copilotが生成できるコードの量には制限がある。そのため、複雑なコーディング作業をするユーザーは、一度に全ての処理を試みるのではなく、アプリケーションを部分ごとに作成するようにCopilotへ複数回リクエストを行う必要があるだろう。GitHub Copilotに対して、一つのリクエストでアプリケーション全体を生成させようとすると、Copilotの制限に達し、不完全で使用できないコードが出力される可能性がある。

Microsoft 365 CopilotとGitHub Copilotの違い

 Microsoft 365 CopilotとGitHub Copilotは、どちらもサブスクリプション型の生成AIチャットbotだが、それ以外の共通点はほとんどない。実際、この2つは競合するサービスですらない。それぞれ異なるアプリケーションと統合され、異なるユーザー層を対象としている。GitHub CopilotのユーザーがMicrosoft 365 Copilotを併用する可能性はあるが、非開発者がGitHub Copilotを利用することは極めて考えにくい。

 Microsoft 365 Copilotは、Microsoft 365のアプリケーションおよび関連するエコシステム内での利用を前提としている。一方、GitHub Copilotは開発者向けに特化したツールであり、両者を共通で利用できる「統一Copilotライセンス」のようなものは存在しない。

 両サービスには、ユーザーがリクエストを入力できるインタラクティブなチャットbotが搭載されている。GitHub Copilotに短いアプリケーションを作成するよう指示することも可能だ。しかし、GitHub Copilotは必ずしも明示的なリクエストを必要としない。ユーザーがコードを入力する際に適切な提案を行ったり、スクリプト内のコメントに応じてコードブロックを自動生成したりする設定もできる。

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