DeepSeekの急成長にさまざまな反応が起きている。米企業の優位性を揺るがす存在にトランプ大統領が焦りを見せる中、SAP経営陣が余裕のコメントを発表した理由とは。
中国のスタートアップ企業であるDeepSeeKは2025年1月20日(現地時間、以下同)、ゲームチェンジャーとなり得るLLM(大規模言語)「DeepSeek-R1」を発表した。これを受けて、ERP大手ベンダーのSAPのドミニク・アサムCFP(最高財務責任者)は「SAPにとって非常に良いニュースだ」と2025年1月28日(現地時間、以下同)に述べた。
DeepSeekは「最近、当社が開発したAIアシスタントは、『ChatGPT』をはじめとする米国企業の競合製品と比べて低コストで構築されている」と主張する。
同社の急成長はテック業界に衝撃を与え、米国ではAI業界における同国の優位性を揺るがす可能性も指摘されている。こうした中で、SAPが好意的なコメントを発表した背景に何があるのか。
アサム氏はDeepSeekの動きを歓迎し、「当社は、自社プラットフォームに接続されるLLMについて中立的な立場だ」と述べた。ニュース専門の放送局CNBCによるインタビューで、同氏は「供給が増えれば選択肢も増える。これはわれわれにとって良いことだ。AI業界での競争やイノベーションは、顧客にとってより良い製品を生み出すために非常に有益だ」と強調した(注1)。
アサム氏のこのコメントは、SAPが2024年第4四半期の決算発表と同じ日に出された(注2)。同社の第4四半期の売上高は、前年同期比11%増の93億8000万ユーロだった。決算説明会で、同社のクリスチャン・クラインCEOは「同四半期における取引の半数がAI関連だった」と明かした。
CNBCの記事によると、DeepSeekは2024年12月にオープンソースモデルを初めて発表し、この構築にかかった期間はわずか2カ月、費用は600万ドル未満だったとしている(注3)。
CNBCは「OpenAIやMicrosoft、Metaといった米国の大手テクノロジー企業が自社LLMの開発に投じてきた数千億ドル規模の投資に比べると、DeepSeekが開発に投じた金額はごく僅かだ」と報じた。
英国の公共放送局BBCの報道によると、2025年1月20日にリリースされたDeepSeekの最新AIモデルは、Apple Storeにおけるダウンロード数でChatGPTを抜いてトップに躍り出た(注4)。この動きを受けて2025年1月27日、米国のハイテク企業の株価は急落した。
トランプ米大統領は、フロリダ州で開催された下院共和党の年次政策の会合で「DeepSeekによるLLMの発表は、米国の産業界に『競争に勝つために全力を尽くす必要がある』という警鐘を鳴らすものだ」と語った。
ホワイトハウス(米連邦政府)への復帰以来、トランプ大統領は米国におけるAI政策の方向性を大きく転換した(注5)。トランプ政権は、中国をはじめとする国々との競争において、米国の優位性を守ることにより一層注力している。
出典:SAP CFO: DeepSeek AI disruption is ‘very good news’(CFO Dive)
注1:DeepSeek is very good news for us, says SAP CFO(CNBC)
注2:SAP Announces Q4 and FY 2024 Results(SAP)
注3:How China’s new AI model DeepSeek is threatening U.S. dominance(CNBC)
注4:DeepSeek: The Chinese AI app that has the world talking(BBC)
注5:Trump order shifts AI policy away from Biden-era risk focus(CFO Dive)
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