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「BIで期待通り以上の成果出た」 24年調査から驚異の20ポイント増 いったい何があったのかデータ活用とBIツールの利用状況(2025年)後編

キーマンズネットの調査「データ活用の現状とBIツールの利用状況に関するアンケート」により、BIツールの導入状況は2024年に比べて堅調に増加していることが分かった。中でも「期待通りの成果」「期待以上の成果」が出たとする回答が急増した。

» 2025年08月28日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 前編では全体の47.8%と約半数がデータ活用に取り組んでおり、取り組みを検討、予定している割合も3割を超えるなど全体的にデータ活用に積極的な企業が多い現状を紹介した。

 後編では「データ活用の現状とBIツールの利用状況に関するアンケート(実施期間:2025年7月31日〜8月18日、回答件数:178件)」の調査結果を基に、データ分析の専門ツールであるBIツールの利用実態を取り上げる。

BIツール導入率が1年で7.8ポイント増

 BIツールの導入状況は「導入している」(43.3%)が「今は利用しておらず、今後も利用する予定はない」(36.0%)を上回った(図1)。また「今は利用していないが、導入を検討中」(14.6%)や「今は利用していないが、導入予定」(4.5%)といった導入予定という回答も全体の2割近くあり、ツール導入に積極的な企業が増加傾向にあることが分かった(図1)。

photo 図1:BIツールの導入状況(全数178件)

 ただし従業員規模別で見ると、501人を超える中堅大企業帯で過半数が導入している一方で、100人以下の中小企業では2.2%と大差が生じている。101〜500人規模の中堅・中小企業帯で「導入している」と「今は利用しておらず、今後も利用する予定はない」が38.2%と二分していることから、ちょうどこの企業規模から専用ツールのニーズが発生してくるものとみられる。

 2024年8月に実施した前回調査と比較したところ、導入率は全体で7.8ポイント増加。代わりに「導入を検討中」と「導入予定」の合計値が5.8ポイント減少、「今後も利用する予定はない」は1.3ポイントの減少にとどまっていることから、前回導入を検討、予定していた層が導入に至ったと想定される。

前年9.2ポイント増の「Power BI」がシェアトップも、導入予定では“顔ぶれ”に変化

 導入しているBIについては「Power BI」(61.0%)が最多で、次いで「Qlick Sense」(16.9%)、「MotionBoard」(14.3%)となった(図2-1)。前回調査からは「Power BI」が9.2ポイント、「Motion Board」と「Qlik Sense」が4.3ポイントとそれぞれ増加しており、増加率でもPower BIが後進に大きな差をつけている。

photo 図2-1:導入しているBIツール

 現在導入を予定している、または検討しているBIツールについても「Power BI」(52.9%)が過半数で最多となったが、次点では「MotionBoard」(11.7%)や「Domo」(8.8%)が続き、現在の導入ランキングとは違うツールも支持されている。Power BIの利用企業が多い背景には、国内での「Microsoft 365」の利用企業の多さも関係しているだろう。

「期待通りの成果を上げている」前年比23.2ポイント増……背景に何が?

 中堅・大企業帯を中心に全体で約半数が導入しているBIツールだが、期待通りの成果を得ることができているのだろうか。調査の結果「おおむね期待通りの成果を上げている」(73.5%)と「期待以上の成果を上げている」(3.6%)を合わせ77.1%と8割近くが成果を実感。「期待を下回る」は1割以下と利用満足度はそれなりに高いツール群であることが分かった(図3-1)。前回調査と比較すると「成果を上げている」が23.2ポイントと大幅に増加していることも明らかとなった。

photo 図3-1:導入したBIツールは期待通りの成果を上げているか(全数77件)

 この1年でBIツールの利用満足度が上がった背景に何があるのだろうか。考察すべく「期待以上の成果を上げている」「おおむね期待通りの成果を上げている」との回答者に対し、成果を得られた理由をフリーコメントで聞いた。

 具体的な成果例としては「整備されたデータから必要なデータを簡単に可視化できる」や「顧客対応オペレーションの時間分析によって最適化を図ることができた」「帳票作成のスピードアップ」があり、「業務効率化」や「コストや工数の削減につながった」との声が多く寄せられた。また「これまではExcelやAccessなどでツール化していたものと、専用のBIツールとでは出てくる結果の種類・内容ともに別物になった」や「Excelで作成していたものをシステム化した」のように、BIツール導入をきっかけに脱Excel化したことで、多角的かつ視覚的にデータ活用ができるようになったり、Exce運用の負荷やリスクの解消につながったとする声もあった。

 成果が得られるようになった背景には、BIツール利用のための環境が整い始めたというのもありそうだ。「BIツールに読み込む前のデータクレンジング環境を整備できたこと」のようなシステム面の進展や、「部門横断で標準利用されていて、個別最適を説明するツールとなっている」や「利用するユーザーが拡大している」「社内基盤として定着している」といった人材、組織面でも定着が進んだことで、全体での効率化メリットも大きくなっている。

 実際、BIツールを「導入している」「今は利用していないが、導入予定」と回答した人に導入時に懸念点となったことを聞いたところ、「導入コスト」(43.5%)に次いで「利用者へのツール研修、教育」(36.5%)や「従業員のデータリテラシーの底上げ」(25.9%)が上位に挙がっていた(図3-2)。ツールの利用方法や頻度が成果を分ける重要ポイントとなっている。

photo 図3-2:BIツール導入時に課題、懸念点となったこと(全数85件)

 こうした環境整備が進んだ要因として、フリーコメントでは「地道な取り組みが実を結んだ」や「担当者の尽力」との称賛が相次いだが、担当者からは「成果が上がりそうなところから着手した」や「利用部門を小さく限定して取り組んだ」「もともと数値データを扱っている部門で実施した」など戦略的に進めていったとの声も多かった。

 以上、BIツールの企業導入は増加傾向にあり、利用企業によるツール満足度も高い。一方で、活用のためにはデータ活用目的を明確にし運用を現場レベルで浸透させることが重要で、環境整備には一定の準備期間を想定しておくことなどが考察できる調査となった。

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