日本ディープラーニング協会は、生成AIを活用した開発契約における不安や不明確さを解消すべく、「生成AI開発契約ガイドライン」を公開した。標準的な契約条項やひな形を提供し、ユーザーとベンダー間の合意形成を促進する。
日本ディープラーニング協会(以下、JDLA)は2025年9月19日、「生成AI開発契約ガイドライン」を公開した。ディープラーニングを中核とする技術を産業に広く適用し、日本の競争力を高める取り組みの一環として公開される。
同ガイドラインは、生成AIを組み込んだシステム開発を外部に委託する際に、ユーザーとベンダーの契約を円滑に結ぶための手引きとして策定されている。生成AI導入が拡大する中、契約内容をめぐる不安や不明確さが残っていたことが背景にある。契約条項の整理や合意形成を容易にし、産業界での安心かつ安全なAI活用を推進する狙いがある。
実務ですぐに利用できる「資料編」を備えている点が特徴といえる。秘密保持契約書(NDA)やアセスメント実施契約、導入検証契約、ソフトウェア開発契約といった複数のひな形を収録しており、開発を依頼する側と受託する側が初期段階から具体的な契約案を参照でき、交渉の負担を軽減できる。
ガイドラインは、生成AI開発契約ガイドライン(PDF形式)および生成AI開発契約ガイドライン資料編(DOC形式)が用意されている。いずれもJDLAの公式Webサイトから無償で入手可能で、研究機関や企業、開発ベンダーなど誰でも参照できる。
策定の背景として、生成AIの社会実装の促進が挙げられている。生成AIは文章や画像の自動生成など幅広い用途に拡大しており、システム開発の受託契約においても新たな要件やリスクが浮上していた。成果物の知的財産権の扱い、利用データの管理、成果の検証方法などで従来の契約ひな形では対応が難しい場面が増えていた。JDLAはこうした状況を踏まえ、標準的な枠組みを提示することが急務と判断した。
JDLAはこれまで、資格認定や人材育成を通じてディープラーニングの普及を支援してきた。今回のガイドライン公開は、技術そのものの活用環境を整える新たな取り組みと位置付けられている。今後も産業界における生成AI利用が広がると見込まれる中で、同ガイドラインは契約の不安を低減し、開発の加速につながる役割を担うと考えられる。
この取り組みにより、企業や研究者は契約リスクを抑えつつ生成AIの導入を検討しやすくなる。ベンダー側にとっても、標準的なひな形を参照することで契約準備の効率化が進む。生成AIを用いた開発プロジェクトの立ち上げがスムーズになり、ディープラーニング技術の社会的な活用基盤が広がることになる。
JDLAは公式発表において、誰でも無償で利用可能なガイドラインとして公開したことを強調している。今後、産業分野ごとの利用実態を踏まえた改訂や追加資料の提供など、利用者の意見を反映した改善が進む可能性がある。
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