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AI活用に欠かせないデータ基盤、4割が「未整備」 コスト、人材不足以外の理由とは?

データ活用が企業の競争力向上に欠かせないものとなる一方で、それを支えるAI基盤の整備には高いハードルがある。最新調査から、DXの現状と基盤整備を阻むボトルネックについて解説する。

» 2026年02月19日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

 2025年6月にIPAが公開した「DX動向2025」の日本と米国、ドイツの3カ国比較分析によると、企業におけるデータ利活用状況に大差はなかったものの、全社で利活用している割合は米国よりも低く、部門間の壁が課題となっている様子が指摘されている。そこでキーマンズネットでも定点観測を続けてきた「データ活用の現状とBIツールの利用状況に関するアンケート(実施期間:2026年1月28日〜2月13日、回答件数:189件)」を参考に、本稿では企業におけるデータ活用の実態と課題を深掘りする。

「データはあるが、活用できない」の一番の理由は?

 はじめに、回答者の勤務先におけるデータの活用状況を聞いたところ、「データを活用している」(40.7%)と回答したのは全体の4割を占めた。2025年8月に実施した調査と比較すると「データ活用に取り組む予定はない」(18.0%)が2.0ポイント減少した一方で、「データ活用の取り組みを検討中」(26.5%)が8.0ポイント増加した。

 従業員規模別に見ると、1001人以上の大企業では約6割がデータ活用に取り組んでおり、企業規模が大きくなるほど実践が進んでいる傾向が明らかだ。一方、101人以下の中小企業では、前回調査の約2割から今回は35.9%へと大幅に増加しており、小規模企業でもデータ活用への関心が高まっていることが分かる。さらに、「データ活用に取り組む予定」や「取り組みを検討中」と回答した企業も33.3%を占め、今後は中小企業におけるデータ活用の拡大が期待される。

photo データ活用の取り組み状況

 関連して、データ活用を「取り組む予定」「検討中」と回答した企業に現在の検討フェーズを尋ねたところ、約3割がすでにテスト運用を進めていることが分かった。「検討を済ませ、テスト運用中」が22.2%、「テスト運用が完了し、実運用に向けて準備している」が6.9%。

 この結果を従業員規模別に見ると、501〜1000人で33.4%、1001〜5000人で30.8%、100人以下で25.6%と、中堅企業を中心に着実に準備が進んでいることが分かる。また、「その他」(32.8%)には「情報収集を進めている」や「一部で実運用を開始した」といった回答が含まれ、企業ごとに取り組みの進捗(しんちょく)に幅がある。

 問題は、テスト運用によって課題が浮き彫りになるケースだ。

 「実運用の準備でつまづいている」が19.0%、「テストの結果、再検討することになった」が3.7%を占めた。システム面の課題としては、フリーコメントで「データが整理できていない」「データは蓄積されているが分析・活用できていない」「インプットデータにばらつきがあり整合性が取れていないことが発覚した」といった指摘が寄せられた。

 組織面では「予算制限、実行・運用体制」や「知見や予算、人員不足」「スキル、データ品質、データマネジメントの欠如、組織の壁、心理的な抵抗感」など、データ活用体制を率いる人材や組織面での課題、予算面での課題が挙がり、テスト運用で見えてきた新たな課題に対応中の企業も少なくないようだ。

「AI予測やリアルタイム分析」「データに基づく意思決定」など積極活用

 次に、「データを活用している」企業でどの程度取り組みが進んでいるかを調査した。自社におけるデータ活用の成熟度では、「BIツールなどで定型レポートが全社もしくは部署で閲覧可能な状態」が26.0%、「データに基づいた意思決定が社内に定着している」が13.0%、「AI予測やリアルタイム分析などを業務に組み込んでいる」が5.2%で、合計44.1%が積極的にデータ活用を進める層に当たる。

 次いで「BIや分析で使えるようデータのクレンジングや統合を進めている」(19.5%)や「データを集約している(データレイク/DWHなど)段階」(14.3%)などを合わせた、いわゆる活用準備層が33.8%を占める。さらにその手前の準備段階としては、「必要なデータがどこにあるか把握できていない」が22.1%を占める。

photo データ活用の成熟度

 ただし、積極活用層を見ても、「定型レポートが閲覧可能な状態」(26.0%)に対し、「データに基づいた意思決定が定着している」(13.0%)はその半分にとどまる。このことから、BIツールによる可視化は進んでいるものの、データをどう解釈して具体的なアクションにつなげるかといったデータリテラシーや組織文化の成熟が追い付いていない可能性がある。

 同様に、活用準備層でも課題が見られる。データクレンジングやDWH構築には通常大きな工数がかかるため、準備に時間がかかることで現場の負担が増えたり、投資対効果への疑念が生じたりするリスクがある。

 さらに、AI予測やリアルタイム分析を業務に組み込んでいるケースはわずか5.2%にとどまる。これには、専門スキルを持つ高度人材の確保や育成といった課題が関係しており、データ活用をより高度化するには解決すべきハードルが少なくないことがうかがえる。

 こうした課題は散見されど、データ活用の取り組みを進めたからこそ見えてきた課題を一つ一つ改善して小さな成功体験を積み上げることで、社内の理解や協力体制を得て進めていくことが肝要だろう。

AI活用基盤の整備を阻む三大ボトルネック

 近ごろは業務でのAI活用が急速に進み、約4割の企業が自社用生成AIの開発や運用に業務データを活用していると答えた。同時に、生成AI活用に向けたデータ基盤の整備も進んでおり、「非構造化データ(文書や音声など)の整理・蓄積を進めている」が24.9%、「AI活用に最適化されたメタデータ管理やデータカタログの整備が完了している」が6.9%で、合わせて約3割の企業が準備を進めていることが分かる。

photo 生成AIの活用を見据えたデータの整備状況

 一方で、「AI活用にどのようなデータ形式が必要か定義できていない」(32.3%)や「AI活用を前提としたデータ整備の予定はない」(27.5%)を合わせると、半数以上の企業がAI活用に向けた基盤整備を十分に進められていないことが分かる。「AI向けの調整は未着手」「定義できていない」といった回答の文脈からは、AIを活用したいという意欲はあるものの、どのデータをどのように加工すれば期待する成果につながるのか、実務的なイメージが十分に持てていない企業が多いようだ。

 AI活用を支えるデータ基盤の整備状況でも「必要性は感じているが、コストや技術選定の課題で着手できていない」(30.7%)が最多となり「AI活用のためのデータ基盤(RAG用基盤など)を新規構築、検討中」(24.3%)や「既存基盤があるが、AI対応(ベクトルデータベースの導入や性能不足)のため改修中」(15.3%)を上回る結果となった。RAGやベクトルデータベースなど、AI活用のための新しい技術領域については、社内に投資判断を下せる十分なノウハウや知見が不足しているケースが目立つ。また、優先順位が高くないために、予算を確保できない企業も少なくないと考えられる。

 実際、AIを意識したデータ基盤の整備における最大のボトルネックを聞いたところ「導入・運用コスト(ライセンス、ストレージ費用など)」(43.4%)、「データのサイロ化(部署ごとにデータが分断されている)」(34.4%)、「データエンジニア・アーキテクトなどの専門人材の不足」(31.2%)と続き、コストとサイロ化、人材不足が三大ボトルネックとなった。予算確保に加え、部門間でデータが分断されてしまう組織的課題、それらを解消する高度なスキルを持つ人材の不足がAIデータ整備を阻む主な壁となっている。

photo AIを意識したデータ基盤の整備における最大のボトルネック

 今後の展望としては、「AI活用のためのデータ基盤(RAG用基盤など)を新規構築、検討中」(24.3%)のように、特定の業務領域に絞り、部署横断で限定的にデータ集約しRAGを構築。極力コストを抑えて投資対効果を判断していく進め方や、技術選定やプロジェクトを統率する高度人材が不足しているという課題に対し、AIネイティブなデータ基盤を利用したり伴走型コンサルを活用するなど、外部リソースを上手に使うことでAI活用を前進させていく企業が増えるものと予測される。

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