最先端の文章生成AI「GPT-2」が、「危険すぎる」として公開を見送られたことがあった。その判断の裏側には、AIの可能性とリスクを巡るある懸念があった。
2019年、OpenAIは当時最先端だった文章生成AI「GPT-2」を発表した。だが同時に、学習済みモデルやコードの公開をあえて見送るという異例の判断を下した。理由はシンプルだ。「危険すぎるから公開しない」。
新技術は通常、性能を競うように公開されるものだ。にもかかわらず、開発元自身がブレーキを踏んだのだ。そこには、開発元自らが公開をためらうほどの懸念があった。なぜ彼らは、公開を一時見送るという決断に踏み切ったのか。
オンラインメディアの「Slate」は、2019年2月22日付の記事「When Is Technology Too Dangerous to Release to the Public?」(どんなとき、技術は公開すべきでないほど危険だと判断されるのか)で、その状況を詳しく伝えている。本稿では、この記事を手掛かりに当時を振り返る。
2019年2月、OpenAIはGPT-2の発表と同時に、悪用のリスクを理由としてフルモデルや学習データ、コードの公開を見送り、性能を抑えた小型版のみを公開する方針を発表した。この異例の対応は大きな注目を集めることとなった。
想定されたリスクは、フェイクニュースの生成、なりすましや、詐欺メッセージの作成、スパムの高度化などだ。一定の説得力はあるものの、新技術の発表と同時にその危険性を強調し、あえて公開を制限する姿勢は、多くのメディアや社会の関心を引いた。
当時のGPT-2は最先端の文章生成AIであり、大量のテキストを学習し、文体や文脈に応じて一貫性のある長文を生成できた。プロンプト次第で、架空のニュース記事や小説風の文章、論説文やスピーチなども自然に書き分ける能力を備えていた。不自然さや冗長さは残るものの、従来の自動生成技術とは一線を画す性能と評価されていた。
一部メディアはこれを「危険すぎるAI」として過激に報じたが、多くのAI研究者は冷静だった。技術的には既存手法の延長線上にあり、大規模な計算資源と知見があれば他の組織でも同様のモデルを開発可能だという見方が強かった。
また、非営利団体であるOpenAIがもともと掲げていた「研究成果を広く公開する」という考え方との食い違いも話題になった。情報を公開しないと研究の公平性が損なわれるのではないかという声や、長い目で見れば悪用は避けられないのではないかといった指摘も多く出ていた。
さらに、「注目を集めるためにリスクを誇張したのではないか」という見方も浮上した。一方で、AIのリスクに関する社会的議論を喚起した点や、未成熟だったAI倫理や公開ルールの課題を可視化した点を評価する声もあった。
記事では、暗号化技術のPretty Good Privacy(PGP)の例も紹介されている。PGPは登場当初、安全保障上の理由から規制の対象とされたが、最終的には公開され、今では広く使われるようになった。AIについても同じように、広がりを完全に止めるのは難しく、大切なのは「どう向き合い、どう使っていくか」だとしている。
その後、2019年11月にはGPT-2のフルモデルが公開されたが、大きな混乱は起きなかった。結果的に、当初の公開制限はAIの悪用リスクを社会に広く認識させるとともに、段階的に公開していくという現実的な進め方を示すきっかけになった。
そして2026年現在、AIによる文章生成は既に日常的な技術となり、過度な危険視はほとんど見られない。一方で、安全性を理由とした段階的公開は業界の一般的な手法として定着しつつある。加えて、AIエージェントの普及に伴い、権限管理やセキュリティといった新たな課題も浮上している。ただし歴史を踏まえれば、こうした問題もまた、議論と試行錯誤を経て整理されていく可能性は高いだろう。
上司X: 「開発したAIが危険すぎるから公開を控える」なんてことがあって、いろいろ議論になった、という話だよ。
ブラックピット: 昔、と言ってもそれほど昔ではないですね。2019年のことですし。
上司X: 確かに、ほんの数年前の話だけどさ、AIに対する認識は今とずいぶん違っていたんだろうな。自分のそのころの記憶がない(笑)。
ブラックピット: 僕もありません(笑)。でも、今となっては普通に生成AIを使ってますよね。
上司X: そうなんだよ。文章どころか画像や動画まで生成するようになった。
ブラックピット: コードも書いちゃったりしますよね。そしてそれこそ、自律的に動くAIエージェントの方が危険な気がしますよ。AIエージェントを介したサイバー攻撃も、ちらほら報告されているじゃないですか。
上司X: AIエージェントが自律的に攻撃したり、逆にその隙を狙った攻撃もあるみたいだな。リスクがゼロかといえば、全く問題ないとは言えないだろうけど、これからの時代、活用しないのももったいない気がするよ。
ブラックピット: ですよねえ。エージェントで仕事がラクになるなら、それに越したことはありませんからね。誰かこの不安を取り除いてくれませんかね!
上司X: ああ、まったくだ。でも、「生成AIって危険!」と言われていた時代から状況はこれだけ変わったんだ。ここから数年も経てば、「なんで、あの頃ってAIエージェントのことをあんなに恐れていたんだろう?」って思うこともあるかもしれないよ。それをただ待つか、活用しながら待つかで、キミの生産性は大きく変わるかもな。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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