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デジタル化・AI導入補助金 不採択と「後で全額返金」を防ぐ申請時のチェックポイント何がどうなる? 2026年の中小企業向け補助金ガイド(後編)

デジタル化・AI導入補助金の申請では、事前準備や書類確認、加点対策など実務対応が重要となり、採択率や返還リスクを左右する。本稿では申請前に押さえるべき実務ポイントを整理する。

» 2026年06月02日 06時00分 公開
[土肥正弘キーマンズネット]

 2026年度から「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」へと名称を変え、AI活用をより前面に打ち出した制度へ刷新された。前編では、採択率9割を誇るIT導入支援事業者への取材を基に、「通る申請」と「落ちる申請」を分けるポイントや、2026年度制度の変更点を整理した。

 一方で、実際の申請段階では、制度概要を理解しているだけでは不十分だ。登録済みITツールの選定やgBizIDの取得、SECURITY ACTIONの宣言、各種決算情報や納税証明書の準備など、事前に対応すべき項目は多岐にわたる。さらに、交付決定後には実績報告や効果報告、賃上げ計画の達成確認など継続的な対応も求められ、要件未達の場合には補助金返還のリスクも生じる。

 「AI導入補助金 2026」の第1次締切は既に終了したが、第2次締切は2026年6月15日に予定されている。本稿後編では、申請前に押さえておきたい実務上の注意点や、見落としやすい返還リスクについて、内田洋行の木口孝司氏(事業企画部)の解説を基に整理する。

一発不採択を避ける、申請前に絶対確認すべき2つのステップ

(1)登録されたIT導入支援事業者・ITツールを利用する

 本補助金の申請に当たっては、「デジタル化・AI導入補助金事務局」に登録されたIT導入支援事業者の支援を受けなければならない。申請手続きは全て電子申請で実施される。補助対象となるのは、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールに限られ、未登録の事業者およびITツールは対象外だ。対象となるIT導入支援事業者およびITツールは、専用サイトで検索できる。

 なお、自社向けに個別開発されたソフトウェアは補助対象外だ。また、インボイス対応類型を除き、ハードウェアの購入(リースを含む)についても原則として補助対象外だ。

(2)必要書類を事前に確認・準備する

 申請に当たっては、直近事業年度の決算情報に加え、履歴事項全部証明書に記載されている役員の氏名およびふりがなの確認などが必要となる。

 また、決算関連情報として、契約社員やパート、アルバイトを含む従業員数、代表者および役員数、年間平均労働時間、売上高(1期前売上高を含む)、粗利益、営業利益、経常利益、減価償却費、人件費、資本金または準備金などの情報が求められる。

 これらの情報は審査における基礎資料となるため、氏名の誤記といった軽微なミスであっても不採択となる。提出前には内容の正確性を十分に確認することが不可欠だ。

 さらに、財務状況および経営課題と導入するITツールとの整合性も審査対象となる。自社の課題を明確に整理した上で、それに適合するITツールを選定することが重要だ。

gBizIDの取得から必要書類、直前で焦らないためのチェックリスト

 交付決定後は、事業計画に基づき事業を進め、事業内容について事業実績報告を行う。その後、事務局による確定検査を経て補助金額が確定し、最終的に補助金が交付される流れだ。

 事業終了後には、導入効果に関する「事業実施効果報告」の提出が必要となる。報告時には、画面キャプチャーなどの証憑資料を添付し、提出する必要がある。また、IT導入支援事業者は、申請企業ごとに開設される「マイページ」で申請状況の確認や内容修正、各種情報の変更登録に加え、実績報告や効果報告を作成し提出できる。

 各種報告は所定の期限内に確実に提出する必要があるため、事前に十分な準備を進めておくことが重要だ。また、事務局から確認事項や追加対応の依頼があった場合にも、迅速に対応できる体制を整えておく必要がある。準備不足や記載漏れがあると、申請手続きが円滑に進まない可能性があるため、以下のポイントをあらかじめ確認しておきたい。

(1)「gBizID」アカウントの取得および「SECURITY ACTION」の宣言

 申請には、行政サービスへのログインに必要な「gBizIDプライム」アカウントの取得が必要となる。取得には通常1〜2週間程度を要するため、早めの準備が推奨される。また、「SECURITY ACTION」は、IPA(情報処理推進機構)が実施する情報セキュリティ対策の自己宣言制度であり、申請企業は事前に宣言する必要がある。取得自体は最短1日程度で完了するが、余裕を持って対応しておきたい。

(2)SMSを受信できる携帯電話の準備

 交付申請には、1社につき1つの携帯電話番号が必要となる。これはセキュリティ確保を目的としたもので、事務局からの連絡や認証に利用されるため、常時確認・対応できる状態にしておく必要がある。

(3)必要書類の準備

 法人の場合は、履歴事項全部証明書(発行後3カ月以内)と法人税の納税証明書(その1またはその2)、直近の損益計算書および貸借対照表などの提出が必要となる。個人事業主の場合は、運転免許証や住民票などの本人確認書類に加え、所得税の納税証明書(その1またはその2)、直近の確定申告書控えなどが求められる。

 また、通常枠において補助率3分の2以内の適用を希望する場合には、「賃金状況報告シート」の提出が必須となる。

(4)加点項目の活用

 審査では、一定の取り組みを実施している企業に対しては加点されるため、採択可能性を高める観点からも、加点対象となる項目には可能な限り事前に対応しておくことが重要だ。

 このように、申請には単なる書類提出にとどまらず、多岐にわたる事前準備が求められる。手続きを円滑に進めるためにも、計画的かつ早めの準備を心掛けたい。

補助金返還が求められるリスクに注意

 補助金は、交付決定後であっても取り消される場合があり、交付後に返還を求められることもある。主な要因としては、虚偽申請や不正利用などの不正行為に加え、賃上げ目標が未達の場合や効果報告完了前にITツールを解約した場合などが挙げられる。

 例えば、インボイス枠の申請において、IT導入補助金2022〜2025の期間に交付決定を受けた事業者については、(1)交付決定の取消し(交付申請時に賃金引上げ計画を従業員に表明したと申告したにもかかわらず、交付決定後に実際には表明していないことが発覚した場合)、(2)補助金の返還(事業計画終了時点において、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の増加目標が達成できていない場合)などだ。

 また加点項目について、交付申請日時点において、インボイス登録が完了していない旨を申告した者が、(1)交付申請日以前(交付申請日を含む)にインボイス登録を完了している場合や、(2)実績報告日までにインボイス登録をできなかった場合には、原則として交付決定の取消しとなり、補助金の交付を受けることができないので注意が必要だ。

 加点要件や申請要件の詳細は、申請枠ごとの公募要領に明記されているため、事前に十分確認しておくことが不可欠だ。

 このように制度は複雑で、確認すべき事項も多岐にわたる。そのため、申請に当たってはIT導入支援事業者と十分に相談しながら進めることが望ましい。必要に応じて、中小企業診断士や各種マッチング支援サービスなど、専門家の活用も有効な選択肢だろう。

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