メディア

中小企業のシステム導入、過半数が失敗を経験 トラブルの根本原因はどこにある

SaaS製品を導入すべきか、独自システムの開発すべきか。企業にとって最適なシステム選択は、IT投資の成果を最大化するうえで不可欠な経営判断だ。ある調査によれば、中小企業におけるシステム導入の半数以上が「失敗した」経験があるという。期待した成果を得られないのはなぜか。

» 2026年07月31日 07時00分 公開
[後藤大地キーマンズネット]

 システム導入は必ずしも計画通りに進むとは限らない。導入途中での追加費用の発生、想定した機能との差異、スケジュールの遅延など、さまざまなトラブルが企業の課題となっている。

 こうした中小企業におけるシステム導入の実態と課題を把握するため、btobeeは、ITシステムの導入や選定に関与する立場にある全国の中小企業の経営者・役員300人を対象に調査を実施した。

 調査では、システム導入企業の半数以上が失敗やトラブルを「経験したことがある」と答えた。その背景には製品選定だけでなく、要件整理や社内体制、プロジェクト推進の方法など、多面的な要因がある。

システム導入、失敗企業に不足していた要因とは

システム導入企業に失敗やトラブルの経験を尋ねた設問では、導入前には見えにくかった課題や、実際に起こったトラブルの内容が明らかになった。多くの企業が直面した共通点や、その背景にある要因が見えてきた。

 システム導入企業に失敗やトラブルの経験を尋ねた設問では、53.2%が「経験あり」と回答した。具体的な内容では、「開発・導入の途中で追加費用を示され、当初予算を超過した」が40.0%と最多。「事前の要件や想定に比べ、品質や機能が不足した」は34.7%、「開発・導入のスケジュールが遅延した」は33.3%だった。予算や機能、納期の各面で、事前計画と実際の進行にずれが生じている実態が見えた。

これまでの失敗やトラブル経験(出典:btobeeリリース)

 では、実際に中小企業ではどのような形でシステム導入を進めているのか。調査では、SaaSの活用から独自システムの構築まで、企業ごとに異なる導入段階にあることが分かった。

 システムの導入段階について尋ねた設問では、「一部業務でSaaSを導入している」は24.3%、「ほぼ全ての社内業務をSaaSで管理・効率化している」は9.0%だった。また、「SaaSの効果を高めるため、データ連携や自社運用に応じたカスタマイズ開発を施している」企業は5.7%、「独自システムを構築済み、またはオンプレミス型のパッケージシステムを導入済み」の企業は8.0%だった。

DX推進のためのシステムの導入状況(出典:btobeeリリース)

 何らかのITシステムを導入している企業は計47.0%となり、部分的なSaaS利用から独自開発まで、DXの進展度合いやシステム活用の形態は企業ごとに異なる状況が見えた。

 導入形態によって、必要となる投資規模や運用負担も大きく異なる。そこで、直近1年間におけるシステム関連コストについても調査した。

 直近1年に支払っているコストについて、ITシステムを活用している層に尋ねたところ、「SaaSの年間利用料が50万円未満」と答えた割合は51.0%で、過半数を占めた。一方、カスタマイズ開発や独自システム構築を実施している層に限定して年間の開発費を集計したところ、「300万〜1000万円」が36.6%で最多となった。

 さらに、1000万円以上を投じた企業12.2%を合わせると、独自開発を実施している企業の48.8%が年間300万円以上を投資していた。SaaSは比較的低コストで導入できる一方、自社業務に合わせた開発では数百万円規模の投資が必要となる企業が多い実態が明らかになった。

直近1年間に支払ったコスト(出典:btobeeリリース)

 業務改善を狙った投資であっても、プロジェクトの途中で費用が膨らみ、必要な機能を満たせず、予定した時期に利用をはじめられない例が少なくない。調査において、システムの採用自体を目的化せず、導入前に業務課題や必要機能、費用、工程を整理する必要性が浮き彫りになった。

 失敗経験者に根本原因を尋ねた結果、「自社にITの専門知識を持つ人材が不足していた」が33.3%で首位となった。「経営陣と現場の間で導入目的が共有されていなかった」は29.3%、「プロジェクトを統括し、進行を管理する人材が不在だった」は24.0%だった。外部ベンダーの選定だけでなく、自社の業務整理、目的の明確化、社内の意思疎通、責任者の配置といった社内体制が、導入成否を左右する要因として示された。

 今後のDXで外部パートナーを選ぶ際に重視する項目を全回答者に尋ねたところ、「予算内に収まる適正なコスト」が33.0%で最多だった。「自社の業務内容や課題への深い理解」と「導入後の手厚いアフターフォロー・定着支援」は各20.3%、「自社に適したシステムの客観的な選定・提案」は18.3%だった。価格だけでなく、業務理解や提案の客観性、導入後の支援まで担う外部支援への需要が示されている。

DX推進における外部パートナーを選ぶポイント(出典:btobeeリリース)

 限られた社内資源だけで専門知識や部門間調整、進行管理を担う難しさも表れた。外部支援には、開発作業の受託だけでなく、発注側の立場から要件を整理し、費用の妥当性を確認し、運用開始後の定着を支える役割が求められている。

 回答結果からは、導入前の準備と社内体制の整備が不十分な場合、技術や製品の選択だけではトラブルを防ぎにくいことも読み取れる。導入前後を通じた支援が焦点となる。

 調査結果は、中小企業でもIT活用が広がる半面、導入時の体制不足が予算超過や要件不一致、納期遅延につながる現状を示す。btobeeは、専門人材が不足する企業において、社内の課題を整理し、経営陣と現場の認識をそろえ、適正なコスト管理を支える外部の伴走者が必要だとまとめた。システムを導入するだけでなく、企画段階から定着まで実務を支える体制づくりが、DXを進行させる上での課題となる。

 なお、今回の調査はbtobeeにより、アイブリッジのセルフ型アンケートツール「Freeasy」を介して実施された。調査期間は、事前調査が2026年6月26〜28日、本調査が2026年7月4日。調査対象は、事前調査が全国の経営者・役員 3000人(うち中小企業 2545人)、本調査が、事前調査の中小企業の経営者・役員のうち、ITシステムの導入等に関与する立場にある人300人だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。

アイティメディアからのお知らせ