複数税率やインボイス制度への対応法は
増税後の「“2階建て”請求書」 何がどうなる? 税理士が解説(2/3 ページ)
軽減税率対象品目や一括譲渡、一括値引きの場合への対応、価格表示については国税庁資料などで説明されているので割愛し、本稿では仕入れ税額控除に関連して経理業務に影響が大きい区分請求書等保存方式、適格請求書保存方式について解説する。
区分記載請求書等保存方式とは?
従来は請求書や帳簿に合計金額が記載されていて課税品目か否かが分かればよかったが、2019年10月からは請求書には軽減税率対象品目にはその旨を記載し、税率の異なる品目ごとに合計した額を記載することになる(図1)。帳簿記載に際しても、軽減税率対象にはその旨の記載が必要だ。
請求書の場合、同一の請求書内に税率ごとに区分記載してもよいし、税率ごとに区分請求書を分けて発行してもよい。また個別の商品名(牛肉、鶏肉、じゃがいも、にんじんなど)を記載する必要はあるものの、レジで個別商品名を登録できない場合は一般的な総称(肉、野菜など)の記載でもよい。
仕入れ先の請求書が対応していない場合は自社で追記が必要に
なお、仕入れ先の請求書が対応していない場合、受け取った会社が税率ごとに合計した額を追記して保存することになるので、ここは注意が必要だ。
免税事業者からの仕入れについても仕入れ税額を控除できるが、その場合でも区分記載請求書は必要で、保存しておかなければならない。
適格請求書等保存方式とは?
2023年10月からの適格請求書等保存方式への対応も考慮しておきたい。
適格請求書等保存方式については、様式が定められておらず必要事項が記載されていればよい。必要なのは、区分記載請求書等保存方式での請求書の記載項目に加え、「適用税率」「消費税額」「登録番号*」の記載だ(ただし小売や飲食、タクシー業などでは適用税率の記載がなくてもよい(適格簡易請求書))。
*登録番号 適格請求書発行事業者登録を行うことで申請者がもらう番号のこと。法人番号を持つ企業の場合は法人番号の頭に「T」を番号、それ以外の法人格を持たない組織や個人事業者も適格請求書発行事業者の登録を行えば「T+13桁の番号」が発行される。
売り手側の義務
売り手側は、「適格請求書の交付」とその「写しの保存」が義務になる。返金が生じた場合には「適格返還請求書」を発行する義務もある。
ただし、次の取引の場合は適格請求書交付義務が免除される。
- 公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客運送で3万円未満のもの
- 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品などの譲渡(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)
- 生産者が農業共同組合、漁業協同組合または森林組合などに委託して行う農林水産物の譲渡(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
- 自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡など(3万円未満のものに限る)
- 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
買い手側の義務
帳簿は、現行の記載事項に加え、「軽減対象資産の譲渡等に係るもの」である旨を記載する(区分記載請求書方式と同様)義務がある。
また保存すべきものは次の3つ。これらの電磁的記録も保存が求められる。
- 「登録番号」「税率ごとの消費税額および適用税率」が記載された適格請求書および適格簡易請求書
- 仕入れ明細書など(適格請求書の記載事項が記載されており、相手方の確認を受けたもの)
- 上記の適格請求書交付免除ケースの(2)(3)の取り引くについて受託者から交付を受ける一定の書類
なお、適格請求書を受け取るのが難しいケースもあり、その場合は帳簿記載だけでも仕入税額控除が認められる。次のようなケースがそれにあたる。
- 適格請求書の交付義務が免除される上記の(1)(4)(5)の取引ケース
- 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)を満たす入場券などが、使用の際に回収される取引
- 古物営業、質屋または宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産を購入する取引
- 適格請求書発行事業者でない者から再生資源または再生部品(棚卸資産に限る)を購入する取引
- 従業員などに支給する「通常必要と認められる」出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当などに関わる課税仕入れ
適格請求書発行者以外から仕入れると控除はどうなるか
原則として、今後は適格請求書発行事業者以外からの仕入れでは消費税額の控除ができなくなる。ただし経過措置として、区分記載請求書などと同様の事項が記載された請求書などを保存し、帳簿にこの経過措置の規定の適用を受ける旨が記載されている場合には、一定の期間は仕入れ税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる(2023年10月1日~2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%の仕入税額控除、2026年10月1日~2029年9月30日までは同50%の仕入税額控除)。
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