AI導入で苦戦する企業は何がダメなのか? 陥りやすい失敗パターンと解法(1/2 ページ)
AI(人工知能)を導入しようと考えるも、失敗に終わるプロジェクトは何が問題なのか。計画から導入までのプロセスに潜む陥りやすい落とし穴と注意点を説明する。
「当初描いた青写真とは懸け離れ、混とんとして成果の見えないAI導入になってしまったというプロジェクト例が多過ぎる」そう始めたのは多数の企業へのAI導入を経験してきたティビダボの創設者の一人、石井正太氏だ。今までに石井氏が関わってきたAI導入プロジェクトは、収益性向上やコスト削減、人事考課における評価の適正化を目的に発足することが多いという。
しかし、経営陣は最終成果やプロジェクトイメージが漠然としたままの状態で、“取りあえず”編成したチームによってプロジェクトを進めようとする。現場の技術者は、経営陣から提示された要望が漠然としているため困惑する。こうして、経営層と現場の技術者で認識の溝が生じたままプロジェクトを進めると、結果的に頓挫する傾向にあるという。せっかく、費用と工数を掛けて進めたAIプロジェクトを失敗に終わらせないためにも、この溝をどう埋めれば良いのか。
本稿は、2019年8月30日に開催された「HOP AI feat.THE GLOBAL INNOVATION FORUM 2019」(主催:RPA BANK)におけるティビダボによる講演「AI導入入門の基本と実践―AIプロジェクトの始め方と注意点~大量のAI導入プロジェクト実行からの教訓」を基に編集、構成した。
単純に算出できないAIのROI、見積もりに必要なスキルとは
石井氏はAIプロジェクトを推進する難点として次の3点を挙げた。
(1)プロジェクトにAIを適用できるか分からない
(2)人が足りない
(3)期待できる効果が分からない
プロジェクトを進める前に、まず「課題に対してAIを活用することが本当に最良のアプローチなのか」「どうROI(投資利益率)を推定するか」を立ち止まって考えたい。これを説明する際によく挙げられる例として、石井氏はクレジットカードの審査業務をRPAで自動化するケースとAIで効率化するケースのROI評価の違いを例に説明した。
あるクレジットカードの審査業務では、毎月450件の審査を担当する。1件処理するのに20分掛かっていた。1件当たりの処理コストを1000円として、毎月45万円のコストがかかっていた。
RPA(Robotic Process Automation)であれば、自動化により削減できた時間を基におおよそのコストメリットを簡単に算出できる。1件当たりの処理時間が短くなれば、その分処理コストも抑えられる。例えば、処理コストが1件1000円だったのが、10円に抑えられれば得られる効果は10倍となり、ROIも明快だ。
しかし、AIはROIを推定するのが難しい。目的に対してどれだけの学習データが必要か、またクレンジングや解析にかかる費用は簡単に見積もれないケースが多く、費用だけかかって結果が見えないという可能性もある。
AIを効果的に適用するには、業務フローを全て把握した上でROIをどう考えるか、学習データは十分か、運用できる人材がいるかと総合的な視点で考える必要がある。それにはAIとビジネス戦略の双方の知識を理解するマネジャーが必要だが、そうした人材はそう多くないのが現状だ。
「この時点で失敗は目に見えている」ハマりやすいポイントとは
では、ヒトもいない、ノウハウも多くはない中でAIプロジェクトを進めるには具体的にどのような視点が必要なのか。ティビダボの石川 恵理香氏は、AIプロジェクトの失敗要因は「データの取得・生成」「管理と推論」のフローに潜む、と説明する。
ポイント1:データの整備ができない(データクレンジングができない)
AIシステムの構築は「データ取得・生成」「モデル学習」「推論」と大きく3つのフェーズに分けられる。最も重要かつ時間を要するのがデータ取得・生成フェーズだ。一般的なAIは学習データ量とデータの品質によってAIの精度が大きく変わる。データ取得の時点でノイズが多く含まれることがある。経営層は「データは散在するが、まとめたら何か面白いことができるのでは」と言うが、ノイズが含まれるデータを使う時点でプロジェクトの失敗は目に見えるという。
ポイント2:高度なAIライブラリを活用するインフラを整備できない
3つ目のフェーズ、学習済みモデルで計算処理する推論のフェーズでは実行環境の選択がネックとなる。一般的には、実行環境の選択肢として「クラウドのリソースを利用する」「オンプレミスの環境を利用する」「組み込み機器を利用する」の3つがある。石川氏は今までに50社以上のAIプロジェクトを担当してきたが、30数案件は「ミッションクリティカルなデータのため外には出せない、オンプレミスでやりたい」といった要望が多いという。
しかし、AI開発ではGPUを駆使した並列処理が必要だったり、高速処理する分散型のNoSQLデータベースが必要だったりするケースもある。こうした環境構築に十分な投資が可能かどうかを考えた上で、インフラ設計をしなければならない。オンプレミスでこれらの環境を構築するには相応のリソースが必要となり、デバイスの購入や予算取りも事前に考えなければならない。せっかくPoC(概念実証)までこぎつけたのに、ここで頓挫してしまうプロジェクトも少なくないという。
AI処理の一例を簡単に説明すると、データを取り込んで機械学習の分析モデルで評価して処理結果を出す。機械学習の処理は、大きく「教師データあり学習」「教師データなし学習」「強化学習」の3つの学習方法に分けられる。これらの学習方法の違いを理解し、AIモデル構築手法を正しく判断しなければ失敗につながる。また技術者によって得意、不得意がある。目的に沿った構築手法を採用し、プロジェクトに合った技術スタッフをアサインする必要がある。
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