Future of Work――マネーフォワード主催「MF Expense expo 2018」レポート(2/2 ページ)
【「大企業勤務」はこれからどうなるか】
今みなさんがお持ちのスマートフォンは、30年前のスーパーコンピュータに匹敵する性能で、10万円以下。ツールが大衆化し、文房具のように使える「チープ革命」が起きました。これまで大企業は、経理、総務・人事、さらにITといった部門に多くの専門家を抱え、それができない中小企業との差も大きかった。ところが今後、AI(人工知能)も文房具のようになり、Uberに代表されるようなシェアリングビジネスも広がれば、大企業であることのメリットがどんどん小さくなると思っています。(高橋氏)
ある介護の現場では「同居の親族が勝手に持ち出さないように」ということで、ヘルパーさんが介助で使う費用を現金ではなく、使える店が限られて履歴も残るプリペイドカードで渡すそうです。現金は用途が自由なぶん、不正防止に割くコストも大きかったのが、これから自動化が進むと(履歴が残り、そこから行動予測も行われるため)不正の余地がなくなっていく。大企業も、法的・税務的なメリットを除けばいらなくなります。(瀧氏)
数で1%に満たない大企業が雇用の3割を占め、ビジネスの主導権を握ってきた日本の現状について、両氏はそろって、遠くない未来にトレンドが変わると予想した。その理由として高橋氏は、テクノロジーの進化にともなって高度なツールが個人レベルで活用できるため、企業規模による優位性が失われる点を挙げた。
取引の相手、あるいは就職先として、中堅・中小企業や個人事業主よりも大企業が好まれてきた理由の1つに「社会的信用」がある。しかし瀧氏はこの点についても、フィンテックの進展であらゆる取引履歴が確認できるようになれば個人と企業の信用が「見える化」し、さらに不正も抑止されるため、企業規模が問われなくなっていくとした。
【人間とロボットはどうなるか】
家電製品を普及させた松下幸之助(パナソニック創業者)には、家事労働の時間を減らすことで「人間しかできないことをしよう」という理念がありました。AIやRPAでも、そうしていく必要があります。ルーチンワークが自動化されたとき、ひとつ大切なのは、そこにいる人を喜ばせる・楽しませること。あとは誰かが何か困ったことをリアルタイムで、個別に解決していくことが人間の仕事になっていくと思っています。(高橋氏)
高橋氏は、RPAの普及が過去のテクノロジーと同様、「人間らしい」活動に充てられる時間の増加をもたらすと強調した。これに対して瀧氏も、今後ビジネスが活発化する領域を考察。「世界一のDJ」がイベント出演などで54億円もの年収を得ていることに触れ「エンターテインメントだけでなく、例えば目の前にいる人に(血糖値の上昇を抑える助言として)『うどんよりもそばを』と言って、行動を変えさせるようなところに(重点が)寄っていくのでは」と述べた。
いま「RPA」で画像検索すると、四角い箱に両目がついたイラストがたくさん出てきます。自律的に動く人型ロボットのイメージだと思うんですけれども、ロボットというか、アルゴリズムを当たり前に使うようになれば、注目の的だったのがだんだん裏側に回って“黒子化”していくはず。そのときには、RPAという言葉から想起するものも変わってくるかもしれません。(瀧氏)
RPAの今後について瀧氏は、広く浸透するにつれて存在感が希薄になっていくと予想した。これに対し、ロボット化を推進する立場の高橋社長も「当たり前に使う道具になれば、RPAのことを誰も話題にしなくなるだろう」と同意。現在「デジタルレイバー」と呼ばれ、新たな同僚や部下として歓迎されているRPAも、その存在じたいは重要ではなく、いずれは知らないうちに活用する人間を陰で支えるべきだとした。
【今日から私たちはどう変わればよいか】
人気の動画アプリ「TikTok」を使ったことがありますか? 知名度と関係なく、芸能人も、そのへんの高校生も同じように動画を投稿してます。エンタメに接する中から、あるいは消費者としての体験から本質的な変化が分かる。それは必ずどこかでみなさんの仕事にも反映してきます。新しいアプリを1個入れてみるところから変わるかもしれない。われわれの「MFクラウド経費」のアプリも、そのきっかけにしていただければと思います(笑)。(瀧氏)
ロボットやAIを道具のように使って、それまでの何十分の一の時間で早く安く、ミスのない仕事ができれば経営的には問題がないし、働く人にとってみれば時間ができるわけです。この時間をどう使うかという自由を手に入れるところが、一番大事だと思っています。(高橋氏)
テクノロジーがもたらした時代の変化を、まずは消費者として受け止めて仕事にフィードバックするよう勧めた瀧氏。いっぽう高橋氏は、本来多様であるはずのライフスタイルを自ら選び取れる大切さを強調。RPAの活用で創出された時間をそれぞれ「育児」「事業開拓」「製品開発」に充てている自社社員の例を紹介した。
RPAやフィンテックの真の価値は、慣れ親しんだ生活とは別の可能性があることを示し「人生をどう過ごしたいか」という根本的なテーマに再度向き合える点にあるのかもしれない。参加者のアクションにつながる数多くのヒントを残し、トークセッションは幕を閉じた。
経費精算の自動化で「経理と営業の関係が良好に」
この日のイベントでは基調講演のほか、マネーフォワードのクラウド型経費精算システム「MFクラウド経費」と連携した製品・サービスを展開するパートナー企業からの解説や、ユーザー企業の事例報告など9つのセッションが設けられた。
このうち、紙文書が介在する業務の効率化ツールとしてRPAと併用されることも多いスキャニング関連では、ドキュメントスキャナーのメーカーであるキヤノン電子株式会社のIMS事業部 事業部長 勝山 陽 氏が、「MFクラウド経費」と自社製品を組み合わせた業務効率化について説明。「MFクラウド経費」へ記録するレシート・領収書の読み取りに専用機を用いるメリットについて「スマホカメラでの撮影より読み取り精度が高く、複数枚の同時処理が早い。オフィスで共用する複合機でのスキャンとは異なり手元でいつでも操作でき、MFクラウド経費との連携性もよい」と整理した。
さらに、実際にスキャナーと同ツールを併用しているユーザーから、デジタルマーケティングを手がける株式会社グラッドキューブ(大阪市中央区)の取締役COO・財部友希氏が登壇し、自社の事例を紹介した。
同社はわずか1.5人体制で経理の月次処理を原則5営業日内に完了させるなどバックオフィスの効率化に力を入れており、営業担当者らの交通費精算方法をいち早くスマホアプリに切り替えたことで経理部門の負担軽減にも成功している。もっとも、同アプリを使った領収書ベースの精算は、支出した本人に任せると登録ミスが多く提出も遅れがちで、経理担当者から財部氏には「営業に何度も督促しなければならないのがつらい」という悩みも寄せられていたという。
このため、複数文書の連続読み取りが可能なドキュメントスキャナーを経理部門に導入。面倒だった登録作業を経理側で引き取ることにした。これにより、締め日前の督促も領収書の現物だけ渡してもらう簡単な内容となった。
「担当者が楽になっただけでなく、営業と経理の関係も良好になったようだ」と財部氏。生産性向上の一環であるスキャナーの活用が、社内の雰囲気の改善にもつながるという結論は、「働き方改革」に取り組む多くの参加者に強い印象を残したようだ。
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