求職者がAIで会社を選ぶ時代、AIの「企業評価」が採用にも影響 企業はどう対策すべき?
「ChatGPT」などの生成AIに企業選びを相談する求職者が増えている。AIの回答が応募や選考辞退を左右する可能性もあるなか、企業には「AIからどう見られているか」という新たな採用対策が求められている。
「この会社って転職先としてどう?」「未経験から入れる企業を教えて」――。いま、企業選びを「ChatGPT」などの生成AIに相談する求職者が増えている。
これまで「Google」で探していた企業を、AIが候補として挙げ、比較する。そんな情報収集の変化が、採用企業で「AIから自社はどう見えているのか」という新たな課題になっている。
就活生の75.8%が生成AIを活用 企業選びの「入口」がGoogleからAIへ
i-plugが2026年2月に発表した調査によると、生成AIを利用したことがある2027年卒学生のうち、75.8%が就職活動でも「生成AIを利用している」と答えた。2年前と比べて30ポイント増加したという。
中途採用でも、アイデムの調査で、求職活動に生成AIを利用した経験がある人は41.8%に上る。例えば「東京で未経験からエンジニアになれる会社を5社教えて」とAIに尋ねれば、条件に合いそうな企業を候補として提示してくれる。
これまでの情報収集では、求職者が検索結果から企業を選び、各社のコーポレートサイトなどを見ながら比較するのが一般的だった。今は、その「企業を探す」という最初の段階からAIを活用するようになっている。
AIの回答に自社が候補として入らなければ、求職者の比較対象にならない可能性もある。そして、もう一つ注意したいのが、AIが企業について「何を、どう説明するか」だ。
AIの回答で「選考辞退」も 企業の採用を左右する“AIでの評判”
求職者が「この会社はどんな会社?」とAIに尋ねたとき、企業が意図していない情報が示されたり、口コミの少なさや情報不足が指摘されたりするケースがある。生成AIはコーポレートサイトだけでなく、求人媒体や口コミ、ニュース記事などWebのさまざまな情報を基に回答するため、企業が発信している情報とAIの企業イメージが一致するとは限らない。
Fhillが実施した診断では、AIが企業について回答する際、「情報が不足している」「口コミが少なく判断材料に乏しい」などと懸念するケースが多いという。
さらに、LANYの調査では、転職活動中にAIで企業情報を調べた111人の約9割が、AIから得た情報をきっかけに応募を取りやめたり、選考を辞退したりしたことがあると回答した。辞退のきっかけとして最も多かったのは、他社との比較で不利な評価をされていたことだったという。
AIで企業を調べるタイミングとして最も多かったのは、スカウトを受け取った後だった。企業からスカウトを受けた求職者が、その会社についてAIに尋ね、回答を応募するかどうかの判断材料にする。こうした行動が広がれば、AIが企業をどう語るかは、採用活動にも影響する重要な要素になりそうだ。
「AIからどう見えるか」を採用戦略に
こうした変化を背景に、人材採用でも「AIO」(AI Optimization)に関心が集まっている。
SEOがGoogleなどの検索エンジンで上位表示されることを目指すのに対し、AIOでは、生成AIやAI検索サービスに企業やコンテンツを正しく理解してもらい、回答の中で参照されやすい状態をつくることを目指す。この領域は、LLMO(Large Language Model Optimization)やGEO(Generative Engine Optimization)などとも呼ばれる。
採用領域では、企業名を直接検索された場合だけでなく、「○○業界でおすすめの企業は?」「未経験でも働ける企業は?」といった質問で、自社が候補として挙がることも重要だ。さらに、AIが自社をどう説明しているのか、どの情報を参照しているのか、競合と比べてどのように評価されているのかを把握する必要もある。
こうした課題に対し、AIを活用して企業の人材採用を支援するFhillは2026年9月8日、「採用AIO」(AI Optimization)支援サービスの展開を発表した。同社によると、既にIBIグループや新日本住設をはじめ、大手企業から中小企業まで、幅広い企業で導入が進んでいるという。
Fhillが「採用AIO」と呼ぶのは、ChatGPTや「Gemini」「Claude」などの主要AIサービスに自社の情報を正しく理解してもらい、求職者への回答で推薦されるよう、採用情報の構造やコンテンツ、外部評価などを最適化する取り組みだ。
「診断・対策・測定」の3段階で支援
まず、主要AIサービスに企業名や業界キーワードを含む質問を投げかけ、自社への言及・引用状況や競合との比較、AIが企業をどう評価しているかを分析する。そこから課題を特定し、AIが情報を読み取りやすいWebサイトの構造改善や採用コンテンツの制作、求人媒体の原稿や口コミなど外部情報の改善につなげる。施策後もAI検索での表示状況を継続的に測定し、改善を重ねていく。
同社では、リクルート出身のエンジニアが率いる開発チームが、AIエージェント基盤や診断ツールを自社開発している。150種類を超えるAIエージェントが月間7000回以上起動し、業務を遂行する仕組みを構築しているという。
同社では、リクルート出身のエンジニアが率いる開発チームがAIエージェント基盤や診断ツールを自社開発している。150種類を超えるAIエージェントが月間7000回以上起動し、業務を遂行する仕組みを構築しているという。
「AIから見た自社」を無料で診断
Fhillは今回のサービス展開にあわせ、「採用AIO診断レポート」の期間限定無料提供も開始した。
ChatGPTをはじめとする主要AIに複数の質問を投げ、AIから見た企業の認知や評価を分析するサービスだ。企業名を含む質問への回答における言及率や引用率に加え、社名を含まない業界キーワードでの露出率、競合との比較、AIが企業について語る際の論調、Webサイトの構造などを確認できる。
さらに、診断結果を基に課題を整理し、改善の優先順位まで提示する。これまでに50社を超える企業の採用担当者が利用しているという。
採用担当者も「AIに自社を聞く」時代へ
生成AIが求職者の情報収集に入り込むなか、企業にとっては「自社サイトに何を書くか」だけでなく、「AIが自社について何と答えるか」も無視できないテーマになりつつある。
まずは採用担当者自身がAIに「この会社はどんな会社?」「転職するメリットとデメリットは?」「同じ業界ならどこがおすすめ?」と尋ねてみるだけでも、自社がAIからどう見られているのかを知る手掛かりになる。
検索エンジンでの順位を競ってきた企業にとって、次の問いは「AIに聞いたら、自社はどう語られるのか」なのかもしれない。生成AIを使って企業を探し、比較する求職者が増えるほど、この視点は採用マーケティングにおいて重要になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ニュースピックアップ
関連記事
こんなメディアも見られています
キーマンズネットに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Googleの自動化ツール「Workspace Studio」×Gemini、4つの業務効率化アイデア
-
2
M365 Copilotを配っても「使われない」 でもAI活用が進んだ福島県庁の"逆張り"戦略
-
3
議事録AIは無料で無制限の時代へ それでも“特定の会議”でしか使われない理由
-
4
「Gemini 3.8 Flash」の狙いは“賢さ”ではない? 発表から見えた3つのポイント
-
5
「Copilot、Word文書まとめて」で社内全滅? 勝手に増殖するAIウイルスで大騒ぎ:895th Lap
-
6
「SOLIDWORKS」を6つの視点で徹底評価する
-
7
AIは「使う」から「組み込む」へ — NOT A HOTELに学ぶ、Zoom×AI×API連携で実現する業務自動化と生産性100倍を目指す組織
-
8
ソニー子会社、M365環境にあえて「Gemini」を導入 システムを競合させない工夫とは
-
9
「Gemini Notebook」で利用者10倍 シニア社員をAIヘビーユーザーにした首都高の考え
-
10
SOAPはRESTに負けたのか? 「古いAPI」を残すか見直すか
キーマンズネット SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
キーマンズネットをフォロー