AI同士が取引する時代、「相手は誰か」をどう確認する? GMOが信頼基盤を実証
AIエージェントが企業の枠を超えて商品検索や発注、決済まで担う時代には、「誰が操作しているのか」「どこまで権限があるのか」を確認する仕組みが不可欠だ。
AIエージェントが商品を探し、発注や決済まで担う「AIエージェント時代」が現実味を帯びる一方で、企業の枠を超えてAI同士が直接取引するには、新たな課題がある。接続してきたAIエージェントが本当にどの企業に所属し、どこまでの取引権限を持っているのか、さらにその取引を誰が承認したのかを、相手企業のシステムに個別に問い合わせることなく確認できる仕組みが必要になるからだ。
こうした課題に対し、GMOグローバルサイン・ホールディングスとVESS Labsは、企業を越えて取引するAIエージェントの身元や権限を確認する「信頼基盤」の共同実証を2026年4月~9月にかけて実施した。異なる企業が独立して開発した買い手側・売り手側のAIエージェントを接続し、相互の身元・権限確認から人による購入承認、発注、模擬支払いへの連携までを検証した。
AIエージェント同士が取引する時代、誰が「取引相手」なのか
生成AIの進化に伴い、AIは文章を生成したり質問に答えたりするだけでなく、商品検索や予約、発注、決済など、複数の業務を自律的に実行するAIエージェントへと広がりつつある。
企業内でAIエージェントを利用するだけなら、所属企業や利用者との関係をあらかじめ管理しておけば対応できる。だが、企業のAIエージェント同士が直接接続し、取引する環境では事情が変わる。
例えば、相手のAIエージェントが本当にその企業から提供されたものなのか、発注する権限を持っているのか、いくらまで購入できるのか、そしてその取引を誰が承認したのか、といった情報を確認する必要がある。
従来のように、あらかじめ信頼できる相手を登録しておく「Allowlist」方式も考えられるが、取引先や接続するAIエージェントが増えれば、その分、事前登録や権限管理の負担も大きい。
取引のたびに相手企業へ問い合わせず、AIの身元と権限を確認
今回の実証では、この課題に対して検証可能なデジタル証明書(VC)を利用した。
VCは、発行者による電子署名によって、証明書の発行元や内容が改ざんされていないことを確認できる仕組みだ。今回の実証では、これを利用してAIエージェントの身元や権限を確認する仕組みを構築した。
ポイントは、取引のたびに相手企業のシステムへ問い合わせるのではなく、AIエージェントが提示するデジタル証明をその場で検証できるようにしたことだ。これにより、事前に個別の合意を交わしていない企業同士でも、相手の身元や取引権限、人による承認の有無などを暗号技術によって確認できる環境を目指した。
実証では、GMOグローバルサイン・ホールディングス側とVESS Labs側がそれぞれ独立して開発した買い手側・売り手側のAIエージェントを接続した。
AIエージェント同士の接続だけでなく、相互の身元・権限確認から、人による購入承認、発注、模擬支払いまで一連の流れを検証した。実際の決済や商取引は行っていない。また、人が承認した取引内容と実際の発注を結び付け、誰が誰に対して、どの範囲まで権限を与えたのかを後から確認できる仕組みも実装した。
さらに、認証情報の使い回しや失効済みの証明書の利用、購入内容を不正に変更する操作などを拒否できることも確認した。2026年8月28日時点では、正常な取引に加えて不正操作を想定したケースを含む281件の自動テストを実施し、全て正常に完了したとしている。
「AIにどこまで任せるか」が次の課題に
今回の実証が示すのは、AIエージェントの性能だけでなく、AIに「誰として」「どこまで」行動させるのかを管理する仕組みの重要性だ。
人が毎回発注内容を確認するのであれば、AIエージェントの自律性には一定の制約が生じる。一方、一定の金額や条件の範囲内であればAIに判断を任せることができれば、企業間取引の自動化をさらに進められる可能性がある。
そのためには、AIエージェントの身元だけでなく、権限の範囲や有効期限、承認者などを機械的に確認できる仕組みが欠かせない。
両社は今回の実証で得られた知見や今後の課題を共同研究レポートにまとめ、経営層・事業責任者向けの要約版と、エンジニア・研究者向けの本編を公開した。
今後は、オープンな標準仕様への対応に加え、人が毎回承認することなく、一定の条件内でAIが自律的に取引する仕組みへの応用を検討する。電子証明書の発行や、本人確認・年齢確認が必要な取引、複数の人・組織・AIエージェントをまたいで権限を引き継ぐ取引などへの展開も視野に入れる。
実証で明らかになった課題については、標準化コミュニティーでの議論にも反映し、企業の枠を超えてAIエージェントが安全に連携できる環境づくりにつなげる考えだ。
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