GPT-6モデルはAstra、Sol、それともLuna? OpenAIが教える、Codex爆速開発の鉄則
AIエージェントの導入を検討する企業とって大きな懸念となるのがトークン消費に伴うAPI利用コストだろう。高性能な最上位モデルを全工程で走らせれば予算を圧迫し、安価なモデルを一律で選定すれば修正ループが増えて手戻りが発生する。限られた予算枠の中で開発スピードと品質を両立させるためにはどうしたらいいのか。OpenAI Japanの石田修平氏が解説する。
「従来3カ月かかっていた既存Webサービスのモバイルアプリ化を数週間に短縮した」「5カ月間で約1500件、1人当たり1日平均3.5件のプルリクエストを作成・マージした」。OpenAIのコーディングエージェント「Codex」の活用によって、こうした成果が挙がっている。
もちろん、Codexは利用するだけで十分な成果が得られるわけではない。開発工程に応じたモデルの使い分けや、業務に合わせた環境・ルールの整備も求められる。開発生産性の向上と利用コストの最適化を両立させるには何が必要なのか。
AIが開発を自律的に進める時代へ
Codexはコード生成に加えて計画・設計から実装、テスト、レビュー、修正まで、開発工程を横断して自律的に実行できる。
生成したコードの動作を検証して、問題があれば修正も可能だ。OpenAI Japanの石田修平氏(アプライドAIエンジニア)は、開発の全工程にCodexを取り入れることで、人間はより高度な意思決定や開発の方向性の決定に集中できると説明する。
実際に、Codexの利用によって開発期間を短縮した事例もある。
楽天は、従来約3カ月かかっていたWebサービスのモバイルアプリ展開を数週間に短縮した。OpenAIの社内プロジェクトでは、約5カ月間で約1500件のプルリクエストが作成・マージされた。
いずれも、個々の開発タスクをAIに委ね、人間がより上位の判断に注力することで、開発の生産性向上につなげた事例だ。
Codexで開発を爆速&低コスト化するAstra/Sol/Lunaの使い分け
Codexは、用途に応じて複数のモデルを選択できる。現在選べるのは高度なタスクに対応する「GPT-6 Astra」、品質と速度のバランスに優れた「GPT-6.1 Sol」、低コストで定型業務に向く「GPT-6 Luna」の3モデルだ。
AIエージェントを開発に取り入れる際には、単に処理を任せるだけでなく、どのモデルにどの作業を担当させるかも重要になる。全ての工程に高性能なモデルを使えばコストが膨らむ一方、コストを優先してモデルを選べば、設計やレビューなどで十分な品質を得られない可能性もある。
ただし、開発の全ての工程で高性能なモデルを使う必要はない。むしろ、タスクに応じてモデルを使い分けることが、コストを抑えながら開発生産性を高めるポイントになる。
ソフトウェアの設計やレビュー、レビュー結果に基づく修正など、複雑さと応答速度の両方が求められるタスクにはSolを使う。Solで対応が難しい場合はAstraに切り替える。一方、時間のかかる実装や大量の定型作業には、コストを抑えられるLunaを利用する。
モデルの思考量を調整することで、タスクに応じた品質の向上も期待できる。石田氏は「3つのモデルを開発の工程に合わせて適切に組み合わせることで、利用コストを最適化できます」と話す。
トークン効率の高さも特徴の一つだ。ソフトウェアエンジニアリングに関連するベンチマーク「DeepSWE」で、GPT-6 Astraは特に複雑なタスクに対して高いスコアを獲得した。GPT-6.1 SolはGPT-6 Astraと同程度の精度を発揮しながら、約5分の1のコストで利用できるという。
「OpenAIのモデルは、同じタスクをより最適なコストで実現できます。より少ないトークン数でタスクを実行できるので、トークン当たりの利用コストを低減できます。利用するトークン数が少なければレスポンスは速くなるので、より速く・より安く開発を進められます」
Codexは、ターミナルやIDE(統合開発環境)、デスクトップアプリなど、複数の環境から利用できる。ターミナルでCodexを操作する場合はCodex CLIを利用できる。IDEで使いたい場合はCodex IDE Extensionを利用してエディタ内でCodexを利用できる。Codexデスクトップアプリを利用することで、Codex専用の入り口から複数のエージェントを管理できる。
どのUIを使っても、裏側には「Codex App Server」「Codex Core」という共通の基盤を利用できる。チームで開発するときにも、共通のレイヤーであるCodex App Serverを介してCodex Coreを利用する。石田氏は「Codexの最も重要な機能がCodex Coreです」と話す。エージェントループを回す、ツールを実行する、設定、認証、会話の管理といった役割を担っているという。
Codexは、プロンプトによる対話型の利用だけでなく、システムから自動的に呼び出して実行できる。「Codex Exec」によって定型業務を非対話で実行できる他、「Codex SDK」で自社アプリや開発ツールからも呼び出せる。「Agents API」を使えば、OpenAIが管理する環境下でCodexを動かせる。
石田氏は、画像を作る、声で伝える、画面を操作するといったCodexのマルチモダリティ機能について次のように話す。
「アプリのモックアップを画像生成ベースで数パターン作って、そこから最適なパターンを選んで実際のアプリを作れます。Codexは音声による指示もできて、リアルタイムに対話しながら作業をさせられます。タイピングよりも音声入力の方が速い場合が多いと思うので、音声入力はCodexの強みの一つと言えるでしょう」
Codexを使いこなすための3つのポイント
Codexを使いこなす工夫として、目的や制約、完了条件を分かりやすく伝える「プロンプトテンプレート」、業務アプリやデータをつなぐ「プラグイン」、ルールと作業手順を残して再利用を可能にする「AGENTS.md/Skills」の3つの方法がある。
(1)プロンプトテンプレート
目的」「文脈」「制約」「完了条件」の4つの項目を明確にすることで、よりよい成果物を得るための指針だ。目的は「何がしたいのか」を、文脈は「どのような情報、会話に基づいて仕様を決めるか」を、制約は「守るルールや使わないデータ」を、完了条件は「何をもってタスクを終了するか」を明示的に定義する。
「『目的を伝えること』を意識している人は多いのですが、Codexを使いこなすためには『完了条件を伝えること』が大きなポイントです。完了条件を定義しないと、Codexが作ったモノが動くかどうか検証しないままタスクを終了してしまいます。完了条件に『ビルドが終わるまで続ける』などと明示的に定義することで、ビルドが通るまで自律的にCodexが動き続けます」
(2)プラグイン
プラグインを使うことで、チャットやメールクライアント、ファイル共有、ドキュメント、管理ツールなどとCodexを簡単につなげられる。プラグインがない場合は、プロジェクトの進捗(しんちょく)の問い合わせに対して、チャットやメールなどの複数の情報を手作業で収集・整理して回答案を作成しなければならない。複数のアプリケーションをプラグインで連携させることで、プロンプトに「プロジェクトの進捗を確認したい」と入力するだけでCodexが自律的に情報を収集して回答案を作ってくれるようになる。
(3)AGENTS.md
Codexをカスタマイズして精度をさらに高めるためには「AGENTS.md」や「Skills」を利用する。
Codexは、基本的に過去のセッションや会話履歴などを持たない状態でセッションを開始する。そのためCodexに知っておいてほしい情報は、毎回プロンプトから入力する必要がある。AGENTS.mdは、特定のプロジェクトにおける必要かつ重要な情報を自動的に読み込むためのファイルだ。Codexを立ち上げたときにAGENTS.mdに書かれている内容が毎回自動的に読み込まれる。
「AGENTS.mdにリポジトリの構成や主要ディレクトリ、重要なモジュールなどの全体像を書き込んでおくことで、Codexは事前の調査が不要になり、高速な処理が可能になります。プロジェクトを実行するためのインストールやビルド、テスト、静的解析のためのコマンド、規約やプルリクエストの要件、禁止事項、セキュリティ上の制約などの開発ルール、完了条件、確認手順などの検証方法も書き込んでおきます」
Skillsを使うことで繰り返し作業の手順書を作成できる。
「手順書にはやるべきことが自然言語で記述されます。それを保存するためのファイルがSKILL.mdです。SKILL.mdには参照するファイルや実行するスクリプトなどの参照資料も保存できます。作成したSkillsはチーム内で共有できるので、特定のプロセスをチームで標準化できます」
Codexにはスケジュール機能があるので、特定のタスクを定期的に実行できる。AGENTS.mdやSkillsの定期的な自動更新も可能だ。過去の履歴に基づいてAGENTS.mdやSkillsの内容を更新して、Codexに過去の履歴を定期的に参照させることで、Codexを自律的に学習させられる。
「Codexで明日から試してほしいことは3つあります。まずはプロンプトテンプレートを使って目的と文脈、制約、完了条件を明示して簡単な仕事を任せます。プラグインでCodexと業務ツールをつなぎ、仕様や議論を参照して実際の仕事で試します。AGENTS.mdやSkillsを使ってルールと手順を残し、結果を振り返って改善することでCodexをよりよく育ててください」
本稿は、2026年10月に開催されたJapan IT Week(主催:RX Japan)のOpenAI Japanの講演「『コードを書くAI』から『開発を前に進めるエージェント』へ— Codexが変えるソフトウェア開発」の内容を基に、編集部で再構成した。
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