資料作成が月32時間から4時間に トラコムが生成AIで「月28時間削減」した方法
生成AIを導入しても、活用が一部の従業員の“個人技”にとどまれば、効果を組織全体へ広げるのは難しい。トラコムでは、現場の工夫を仕組み化して共有。資料作成や月次処理などを効率化し、業務時間の削減につなげている。
生成AIを導入しても、使い方が個人の工夫に限定されれば、業務効率化の効果は担当者のスキルに左右される。企業が継続的に成果を上げるには、現場で生まれた活用方法を仕組み化し、他の従業員も使える形で共有することが重要だ。
企業の採用支援を手掛けるトラコムでは、リサーチや資料作成、定型的な確認作業などに生成AIを取り入れ、日々の業務で継続的に活用できる仕組みを整えた。2026年7月17日時点では、資料作成の作業時間を月32時間から4時間に短縮し、月約28時間の削減につなげたという。
「生成AIを使う」から「業務そのものを変える」へ
トラコムでは、リサーチや資料作成、定型的な確認作業などに手作業が多く、担当者に業務が偏る属人化も課題となっていた。そこで生成AIを単発的な作業補助として使うのではなく、それぞれの業務に適した活用方法を整備。日々の業務の中で継続的に使える形へと発展させた。その結果、2026年7月17日時点で複数の業務において作業時間の短縮を確認した。
資料作成では、従来月32時間かかっていた作業を4時間に短縮し、月約28時間を削減。月次レポート作成は月10時間から3時間、マニュアル作成は2時間から10分となった。月次の締め処理についても、3日かかっていた作業を1~2日に短縮した。この他、定型レポートの作成や情報収集、メール処理などでも時間短縮につながったという。
生成AIの活用による効果は、作業時間の短縮だけではない。
参加した従業員からは、目視による確認作業の減少やミス・漏れの防止、担当者に依存していた業務の整理、作業に伴う精神的な負担の軽減なども挙げられた。
特に重要なのが、これまで担当者個人の経験や工夫に依存していた業務を、生成AIを活用した仕組みとして整理した点だ。
生成AIを使って効率化できる業務を個人が見つけるだけでなく、その方法を再利用できる形にすることで、特定の担当者だけが使える「便利なノウハウ」から、組織で利用できる業務資産へと変えた。
個人が作った指示文を「社内の共有資産」に
活用方法の共有では、従業員ごとに個別に使っていた指示文を集約し、共通アプリとして利用できる形にした。さらに、業務フローの整理や通知書の作成、数値の集計・更新など、繰り返し発生する作業を効率化する仕組みも構築。成果が出た活用方法や仕組みを社内で共有し、別の従業員や業務でも再利用できる状態へ広げた。
これにより、個人の経験や工夫を組織の共有資産として蓄積し、担当者を選ばず業務に取り組みやすい環境づくりにつなげることができた。
現場発の「AIツール」が次々と生まれる
重要なのは、生成AIの活用が当初想定していた範囲にとどまらなかった点だ。
参加した従業員は導入後も生成AIを日常業務で継続的に利用した。現場で新たに見つけた課題に応じて、自らツールや業務の仕組みを作成する動きも生まれた。会社側が用意したAIツールを従業員が使うだけではなく、現場の従業員自身が「この作業も効率化できるのではないか」と課題を見つけ、生成AIを使って改善方法を形にするサイクルが生まれた。
トラコムでは、生成AIを単なる作業補助ではなく、現場の知見を基に業務の進め方そのものを見直す手段として位置付けている。
作成した仕組みについても、導入して終わりではなく、保守・改善しながら継続的に利用する。定型作業に費やしていた時間を、提案や顧客対応など、より重要な業務へ振り向けられる状態を広げる狙いだ。
生成AI活用で問われる「個人技から組織技」への転換
生成AIの業務利用では、「どれだけ便利な使い方を知っているか」だけでなく、その知識やノウハウを組織として再利用できるかが重要になる。
今回のトラコムの取り組みでは、資料作成や月次処理などの具体的な業務で時間を削減しただけでなく、従業員が見つけた活用方法を共有し、仕組みとして蓄積するところまで進めている。
生成AIを一部の担当者だけが使う「個人の生産性向上ツール」から、業務プロセスを見直し、組織全体の生産性を高めるための基盤へと発展させられるか。企業が生成AIを本格的に業務へ組み込む上では、この点も重要なテーマになりそうだ。
なお、生成AIの利用にあたっては、入力したデータがモデルの学習に利用されない設定や環境を使用するなど、情報の取り扱いにも配慮した運用を採用している。
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