「OCP(Open Compute Project)」とは、Facebookが主導するデータセンターのハード仕様をオープン化する試みだ。一体何が変わる?
今回のテーマは、サーバやストレージなどをはじめとしたデータセンター設備のハード仕様をオープン化する「OCP(Open Compute Project)」だ。来たるべきコンピューティング環境をユーザー視点で定義する1つの試みだ。巨大データセンターを念頭にした最高効率のハードウェアとはどのようなものだろうか。
OCPは、仕様をオープンにしながら高効率で経済性が高く、環境負荷が少ないデータセンターファシリティ設計と提供を目指すプロジェクトだ。ITインフラ関連エンジニアのためのコミュニティーにもなっている。
2011年にFacebookの提唱でスタートし、日本でも2013年1月に「Open Compute Japan(オープンコンピュートジャパン/OCPJ)」が発足した。ITユーザーの立場からデータセンターファシリティを考え直すオープンソースプロジェクトとして注目される。
FacebookはグローバルメジャーのSNSだ。2013年9月時点では約10億1900万のアクティブユーザーが利用し、写真やビデオなどの保管量は100PB超にも及ぶ超巨大事業だ。しかし、巨大な規模のIT機器の調達コストと電力コスト、発電の環境負荷、運用管理負荷は常に同社の課題だった。これがOCP発足の背景にある。
2010年2月、Facebookは米国オレゴン州プラインビル(Prineville)での巨大データセンター建設計画を発表した。ところが、これに対し国際環境NGOであるグリーンピースが抗議の声を上げた。同センターが必要とする巨大な電力を化石燃料による火力発電でまかなうことが環境破壊につながると主張し、「100%の自然エネルギー」を使うよう求める「Unfriend Coal(石炭と友達にならないで)」キャンペーンを開始したのだ。
このキャンペーンは2011年4月にFacebook史上最高(当時)の1日当たり8万件のコメント数を記録し、キャンペーン参加者は世界で70万人にのぼった。Facebookはこの声に機敏に反応し、2010年12月に「自社の全てのエネルギーを自然エネルギーでまかなうことを目標とする」と発表するに至った。
キャンペーンのさなかの2011年4月にオープンしたのがプラインビルデータセンター(図1)だ。環境負荷軽減を大きな目標の1つにして、大胆な外気導入システムと徹底的な省電力設計を施した。
その結果、データセンタのPUE(エネルギー効率の指標)は当初1.08、現在では1.07という驚異的なものとなった。このデータセンターを外部に積極的に公開したことが、同社の環境対策を世界にアピールすることにつながった。
同時に、同社による施設や設備の省エネ設計が、電力コスト抑制にも大きく貢献することも実証した。世界中のデータセンターや大規模ITユーザーが悩んでいるのが電力コストの削減だ。ネットワークやサーバ、建物のコストは年々低下しているのに、電力料金だけは増加傾向にある。そのネックを施設や設備の最適設計により解消できる道が示されたことになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。