次に問題なのが導入コストだ。これは仮想化の目的によって評価の仕方が異なるだろう。中堅・中小企業で最も関心があるのは「老朽サーバの延命」だ。
2015年7月に延長サポートが終了するWindows Server 2003ベースのシステム移行先に困っている企業も多いはず。やがてハード保守もなくなるのが目に見えているとはいえ、64ビット対応しかない最新版Windows Server 2012 R2に移行するにはハードルが高く、改修費用が捻出できない場合も多いのではないだろうか。
サーバ仮想化によりシステムをひとまず延命して、仮想化環境内で稼働させつつ予算化できるものから改修作業を進めていくのが得策だ。この目的に合致しやすい製品として、システムベンダーから仮想化環境をあらかじめ構築した垂直統合型の「サーバ仮想化オールインワンモデル」が次々に登場している。スイッチや、共有ストレージ、サーバ、仮想化ツール、複数の仮想マシン、それぞれに載るゲストOSの一式を全てそろえて1つの製品として提供するものだ。
そうした製品を導入すると、図6のようにユーザー企業はアプリケーションとデータだけを移行すればよく、極めて短期間でのシステム移行が可能になる。運用管理で特に問題になりがちなバックアップ設定も、バックアップツールで設定が施された状態で合わせて納入可能な製品もある。
サーバのクラスタリングによるHA機能も備えており、最も設定が難しい部分にユーザー企業はノータッチでよい。安定稼働が検証済みで、専用の管理ツールとインフラ全般にわたる手厚いサポートがワンストップで提供されるので、仮想化に関する知識やノウハウがなくても安心して導入・運用できるのがポイントだ。
単品個別導入よりコストはかかるが、運用管理コスト削減、移行期間の短縮、障害リスクの軽減などトータルでメリットがあるかどうかを考えたい。もちろんレガシー延命のためだけの製品ではないので、ハードウェア更新を含めて考えるときは、どのような目的であるにしろ一考に価しよう。
なお、サーバベンダーからサーバと合わせて購入する前提の中堅・中小企業向けの仮想化ツールライセンス(ノード固定型ライセンス)も日本限定で提供されている。1CPUサーバを5〜15台規模で統合できる製品で、上位ライセンスと機能面では同等でありながら、より低い価格設定になっている。
そもそもサーバの所有をしないという選択もあり得る。現在ではIaaS、PaaSが多くの業者から選択できる状況にあり、選び方によっては自社構築よりも格安なサーバ集約ができる可能性がある。
ただし、大量のデータをクラウドに預ける場合には自社側にもバックアップ設備が必要になるとともに、通信回線も広帯域なものを用意する必要が出てくる。かえって機器導入コストと通信コストを増やす結果になったり、運用管理を複雑化させてしまったりすることがあるので気を付けたい。
なお、海外サーバにデータが保管される場合、所在国の法律に従って取り扱われることになるため、セキュリティ上の問題が指摘されている。
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