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海のうねりが電力を生む「海流発電」とは?5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)

» 2014年05月21日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

メンテナンスしやすい「水中浮遊式」構造

 海流発電システムの原理は、風力発電をそのまま海の中に移したものをイメージすればよい。巨大なプロペラを海流の力で回して発電機を動かして電力を得る。

 かつては巨大な扇風機型の装置を海底に設置する方式や海面に浮かべた構造物に設置する方式が考えられた。しかし、長期間の運用を考えると暴風波浪などの自然条件への備えや、定期的あるいは臨時のメンテナンスが不可避だ。

 効率を考えると、発電時は海中にあり、必要に応じて海面で手入れを行う方式が合理的だ。そこで現在研究されているのが「水中浮遊式」構造だ。

 図2に見るように、海底に設置するのは係留索を固定するためのアンカーのみとし、発電装置は係留索につながれ、まるで凧のように海中を漂う。浮力を調整することにより、平常時は発電効力のよい水深で稼働し、メンテナンス時には海面に浮上させて作業を行う。

水中浮遊式海流発電システムのイメージ 図2 水中浮遊式海流発電システムのイメージ(出典:IHI)

発電効率に優れるタービン翼

 プロペラ(水平軸揚力型タービン翼)による発電システムの出力は、流速の3乗とタービン翼の掃過面積に比例して変化する。従って、プロペラサイズは大きければ大きいほど大電力が生み出せる。

タービン翼性能試験の様子 図3 タービン翼性能試験の様子(出典:IHI)

 しかし、プロペラ直径を大きくするほど回転数が遅くなり、発電効率低下、駆動軸トルクの増大、重量増加を引き起こしてしまう。ジレンマ解消のため、IHIでは数値流体力学解析(図4)と30分の1スケールの模型翼を用いた水槽試験(図3)によって最適なプロペラサイズや形状と出力の関係を割り出した。

 その結果、定格流速(秒速1.5メートル)の条件で1基1メガワットの発電を行うことを想定すると、プロペラ直径は約40メートルになることが分かった。また、低流速でも高速に回転して高出力が得られるように風力発電用のプロペラをベースにした形状から新しい形状に変えることにした。

数値流体力学解析の様子 図4 数値流体力学解析の様子。左:タービンの回転を再現した解析例、右:タービン翼に作用する加重分布の解析例(出典:IHI)

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