社外で社内文書を見ることができたらどれだけ便利か。しかし、問題となるのが安全面だ。モバイルデバイスを利用する「文書管理術」を紹介する。
文書管理ツールは「文書の電子化と整理整頓、セキュリティ確保、長期保管のためのもの」という認識はもう過去のものだ。モバイルデバイスとの併用により売り上げ拡大やコスト削減に直結する「攻め」のツールへと変身しているのが今どきの「モバドキュ」、つまりモバイルを活用した文書管理ツールだ。従来の「守り」の機能と「攻め」の機能とをどう両立しているのか、最新動向を見てみよう。
従来、文書管理ツールには、文書が安全に保管できること、文書の属性に応じた検索が迅速にできること、定められたユーザー権限に従って文書へのアクセス制御ができることの3点が追求されてきた。
契約書やISO文書、帳票、伝票を大量に扱う部署では厳密なアクセス制御や版管理が可能な点を生かし、文書管理ツールによる業務プロセスの合理化が進められてきたが、一方、外回りの販売や営業、建設などの現場業務、工場内など、PCの利用が制限される環境では文書が電子化されているにもかかわらずペーパーレス化が進まず、むしろ一時利用のプリントアウトを増やしてコストや作業を増やし、かつ情報漏えいリスクを高めてしまっているのも現実だ。
そこに登場したのが、どこでも簡単、便利、手軽に使えるスマートデバイスだ。これと文書管理が結び付けばペーパーレス化が本格化し、文書本来の価値を生かした売上拡大やコスト削減、ビジネススピード加速が可能になる。この考え方が、文書管理ツールの在り方を大きく変化させようとしている。
まずは新しい文書管理ツールの使い方の例を見てみよう。
従来の書類や図面などに加え、動画や音声、アニメーションを利用するリッチコンテンツの管理も可能にしているのが新しい文書管理ツールの1つの特長だ。HTML5を使った3D画像コンテンツやVRML技術などにより、例えば施設内ウォークスルーを客先でタブレットを使って疑似体験してもらい、営業成約率を高めた事例がある。商品のカラーバリエーションのシミュレーションやプラント内部の説明などにも活用されている。
CADソフトで作られた図面を自動でPDF化し、他の資料と同様に検索、利用が可能だ。中にはCADソフトのレイヤー表示/非表示などのUIを継承したPDFにより、CADビュワー同等の閲覧操作を可能にするオプションを組み込めるものもある。
社外の現場での日常的な打ち合わせに図面が必要だが、現場に図面を保管できない場合、社内に保管する図面を現場のタブレットで必要な都度閲覧し、打ち合わせ後はタブレット上に情報を残さない運用にすれば打ち合わせ業務の合理化が可能だ。
会議資料の準備や印刷、事後の廃棄の手間が会議コストを上げ、開催頻度が上げられない悩みには、タブレットの利用が解決になる。文書管理ツールによればデバイスに情報を残さない運用ができ、一時的な資料利用が簡単になる。従来、幹部の会議や人数の多い会議では、確実な資料配布のために原稿の締め切りが早く(例えば2日前に)設定されることが多く、締め切り後に変更があった場合の差し替えの手間も大変だったが、原稿の作成に時間的余裕を持たせることができるとともに、変更に要する手間も省けることから、開始前2時間で準備が完了可能になった例もある。
営業活動に必要な資料が客先など外部からでもタブレットで迅速に検索、閲覧できることにより営業、販売チャネルの効率化を図る事例も増えている。ある証券会社はタブレット8000台にモバイル文書管理ツールを導入、成約までの時間を大幅に短縮している。
社内に眠っている価値ある情報資産を掘り起こし、かつ日々追加されるコンテンツを管理、利用しやすい状態にして、「保管」というより「待機」状態で蓄積可能にするのが、文書管理ツールの新しい方向性だ。
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