インフラがクラウド移行する中、クラウド標準機能では困難な、詳細な検知機能を誇るHAクラスタリングソフトウェアがどう生かされるのか。徹底解説する。
企業のITインフラが次第にクラウドに移行する中で、基幹系を含めたミッションクリティカルなシステムの可用性をいかに確保するかが課題だ。そこで役立つのがクラウドサービスでの標準機能では困難な、詳細な検知機能を誇るHAクラスタリングソフトウェアだ。
今回は、仮想化やクラウド環境の中でHAクラスタリングソフトウェアがどう生かされるのか、連携手法と活用の効果を見ていくことでHAクラスタリングソフトウェアの必要性を考察する。
古くからミッションクリティカルなシステムの可用性を支えてきたHAクラスタリングソフトウェアは、高度なITサービスを継続的に提供する上で、今でも重要な位置付けにあり、安定した需要で推移する。最近では、オンプレミス対応製品のみならず、仮想化環境やクラウド対応製品が拡充してきた。
ほとんどの企業にとって、仮想化やクラウドはスタンダードな技術となった。基幹業務をはじめとするミッションクリティカルなシステムをパブリッククラウドに移行するという動きも最近では珍しくない。
背景には、OS以上のレイヤーを仮想化してハードウェアから分離することで可搬性が高まり、運用管理を簡素化すると同時に可用性も高めたいという思いがある。実際、IaaSやPaaSなどのサービスを提供している多くのクラウド事業者が、仮想化ならではのメリットを生かしたHA(High Availability:高可用性)機能のメニューを提供する。
ただし、特に高度な可用性が要求されるシステムでは、これだけでは不十分だ。仮想化ハイパーバイザーやクラウド事業者が提供するHA機能は、ゲストOSの応答を確認して死活状態を監視するが、アプリケーションの障害までは検知できないからだ。
ホストサーバやゲストOSは正常でも、その上で動作するアプリケーションが何らかの原因によってフリーズし、サービスが停止してしまうケースはいくらでもある。裏を返せば、そこにHAクラスタリングソフトウェアが必要とされ続ける理由がある。
端的に言えば、仮想化ハイパーバイザーやクラウドのHA機能とHAクラスタリングソフトウェアでは、障害検知の守備範囲がまったく異なる。
先述したように、仮想化ハイパーバイザーやクラウドのHA機能が対応するのは、ホストサーバやネットワーク、ゲストOSのレイヤーで起こる障害までだ。これに対してHAクラスタリングソフトウェアは、アプリケーションの不具合や操作ミスに至るまで、より幅広い障害をカバーし、復旧を図る。
また、仮想化ハイパーバイザーやクラウドのHA機能でフェイルオーバーを行う際は、移動先のホストサーバ上でゲストOSを再起動しなければならず、復旧までに数分を要する場合がある。これに対してHAクラスタリングソフトウェアでは、待機系ノードで既にOSが立ち上がった状態にあり、より短時間でフェイルオーバーを完了する。
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