ソリューションとしてのVDI導入、成功の秘訣（ひけつ）は？：IT導入完全ガイド（1/3 ページ）

サーバ仮想化に続き注目を集めるVDI。しかし、物理PCの買い替え費用の削減目的で導入すると失敗の可能性もある。導入コスト課題を克服した成功事例を紹介する。

[小山健治，キーマンズネット]

　サーバ仮想化に続く仮想化のターゲットとして注目が集まる「VDI」（Virtual Desktop Infrastructure）だが、物理PCの買い替え費用を抑えたいといったイニシャルコスト削減目的に導入すると失敗する。

　VDIを導入、運用するために必要となる総コストは、物理PCの調達コストを大きく上回るからだ。裏を返せば、多くの企業がVDIを求めるのは、単なる物理PCの代替ではない本当のメリットがあるからに他ならない。

　セキュリティ強化や運用管理の効率化、ワークスタイル変革など、今日の企業が抱えるさまざまな課題に応えるソリューションとして、VDIが実現するメリットにフォーカスを当て、導入成功のポイントを明らかにする。

VDIの導入メリットとは？　ソリューションとしてのVDI活用

　Windows XPのサポート切れによる移行対策として注目が集まったVDIだが、基本的にはITインフラの仮想化に向かう大きなトレンドの中で安定した需要が続く。当初は金融機関におけるセキュリティ強化や営業部門の生産性向上などを目的とした導入が目立ったが、現在では業界業種を問わず広がりを見せる。

　また、最近の傾向として、既にVDIを導入した企業が、さらにユーザーエクスペリエンスを向上するために基盤を再構築するという動きも見られるようになった。

　VDIは単なる物理PCの代替策ではない。VDIの導入によって得られるメリットをあらためて整理しておきたい。

セキュリティ強化

　VDIの最大のメリットであり、導入の動機となるのがセキュリティ強化だ。これまでのようにエンドユーザーが各自のPCのローカルディスクにデータを分散保存する状態では、ガバナンスを徹底することは難しい。

　また、社内アプリケーションにアクセスして取得したデータを、USBメモリにコピーして持ち出すといったことも容易にできてしまう。

　VDIを導入することで、簡単にゼロクライアント（シンクライアント）環境を構築できる。すなわち、端末側にデータを一切残すことなく、サーバ側でアプリケーションやデータの利用を集中管理できる。端末側でUSBメモリを使わせないといったコントロールも可能だ。

IT管理の負荷軽減

　物理PCにトラブルが発生した場合、その都度IT管理者が駆け付けて対応しなければならなかった。特にトラブルの原因が深刻なハードウェア故障にあった場合、代わりのPCを調達し、OSや必要なアプリケーションをインストールし、運用ポリシーにあわせた設定を施し、ユーザーのデータを復旧するといった煩雑な手間を要した。

　これに対してVDIでは、各ユーザーのデスクトップ環境と端末が完全に切り離されているため、単純に端末を交換するだけでほとんどのトラブルを解消できる。

ワークスタイル変革

　VDIを導入することで「場所」に依存しないIT活用によるワークスタイル変革を推進できる。下記のように、ステップを踏みながらVDIの利用範囲を拡大することも可能だ。

• 第1ステップ
  • 今まで自席のPC上でしか利用できなかった社内アプリケーションを、会議室や応接室、セミナールームなどに移った際にも利用できるようにする
• 第2ステップ
  • 離れた支社や事業所に出張した際や、営業活動で訪問した顧客先からも自分のデスクトップを利用できるようにする
• 第3ステップ
  • 災害などの影響で出勤できない場合には、自宅や避難先から社内と同じシステム環境にアクセスして仕事を遂行できるようにする
• 第4ステップ
  • 平常時のテレワークもサポートする

コラム：「リンククローン」の活用で管理工数をさらに削減

　通常VDIでは、ユーザーの人数分だけ個別のデスクトップ環境（フルクローン）を展開するが、「リンククローン」と呼ばれる機能を活用することで、1つのマスター（デスクトップイメージ）から複数ユーザーのデスクトップ環境を展開できる。

　この場合、OSのパッチ当てやウイルス対策ソフトのパターンファイルの更新、新規アプリケーションの配布といったメンテンナンス作業もマスターに対して一度だけ行うことで完了する。各ユーザーは、次回ログインした時点で最新のデスクトップ環境を利用できる。

図1 「フルクローン方式」と「リンククローン方式」