VDIは従来の物理PCを代替するものではなく、今日の企業が抱える課題を解決するための目的ありきのソリューションとして導入を検討すべきものだ。しかし、現実問題としてコストがハードルとなってVDI導入を諦めざるを得ないケースは少なくない。この課題を克服してきた企業の「工夫」を見てみよう。
導入背景
VDI上で各ユーザーが利用するデスクトップOSとしてWindows7やWindows 8などのクライアントOSを利用する場合、その台数分だけ3年固定のVDA(Virtual Desktop Access)ライセンスを購入しなければならない。大規模ユーザーにクライアント環境を展開する、ある企業ではコスト負担が重くVDI導入に二の足を踏んでいた。
成功のポイント
「Server VDI」と呼ばれる方法を利用し、各ユーザーに対してデスクトップOSとしてサーバOS(Windows Server環境)を提供した。Windows Serverであってもデスクトップエクスペリエンス機能を有効にすれば、クライアントOSと変わらない操作性を得られる。これにより、VDAライセンスの購入数を大幅に削減できた。
導入効果
500人以上の大規模なユーザー環境で5年間にかかるコストを比較した場合、通常のVDIに比べてServer VDIは、1500万円以上のコスト削減を実現できる可能性があることが明らかになった。
導入背景
ある医療機器メーカーは既にVDIを導入していたが、さまざまな病気の治療手段の研究、開発のために2500以上のアプリケーションと医療画像などの大容量データを扱う業務において、ブートストーム(サーバ・ストレージのデータ読み取りが集中する状態)が発生する他、月次のパッチ当てやウイルススキャン時のパフォーマンス不足の問題が顕在化した。また、容量増大に伴うデスクトップ当たりのコストの圧迫が性能不足への対処を困難にした。
成功のポイント
VDIの共有ストレージを、全容量がSSDで構成されたオールフラッシュストレージにリプレースすることで、I/Oパフォーマンスを改善した。また、同ストレージ装置に搭載されたインライン重複排除機能を有効活用することで、データの書き込みスピードを向上するとともに保存容量を大幅に削減し、従来よりもデスクトップ当たりのコストを抑えることに成功した。
導入効果
これまで性能に不満を持っていたユーザーから、「物理デスクトップよりもパフォーマンスが良くなった」という評価をもらうなど、ユーザーエクスペリエンスを向上した。
また、従来のストレージ環境では容量40GBの仮想デスクトップイメージを展開する際に、20〜150ミリ秒の遅延を伴いながら1台当たり8分間要したのに対し、オールフラッシュストレージの環境では1ミリ秒以下の遅延に抑えながら、わずか17秒に短縮することができた。つまり、性能影響のない仮想デスクトップの変更、展開などの運用ができることで、土日休日の作業の必要性がなくなった。
なお、従来は1500台の仮想デスクトップのために2ラック分のストレージ装置が必要だったが、オールフラッシュストレージにインライン重複排除機能を組み合わせて活用することで、わずか6U(27センチ)のサイズにまで削減できた。このこともVDI基盤の再構築コストの削減に大きく貢献した。
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