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日本ロボット産業の巻き返しが期待できる「ISO 13482」とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)

» 2014年09月03日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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ISO 13482を活用した生活支援ロボット開発の今後

 今回取材した専門家によれば「安全性の哲学で日本はドイツに20年遅れている」という。ドイツをはじめEU加盟国など多くの欧州諸国では、CEマークを多くの製品に付けて、EU加盟国の基準を全てクリアしたことをメーカーが保証し、製品を輸入する国も、消費者も安全性を確認して安心して購入、利用する仕組みができている。

 欧州の企業には、リスクと利益、社会責任を総合的に考え、コストをかけても安全性などに関連する認証を取得しようとする文化が根付いているが、日本では今でも「ブランド」が安心の基準になっている現実を憂いての言葉だ。これまでは一般消費者よりもメーカーが掲げる品質要求が高かったが、生産のグローバル化で必ずしも有名ブランドが安全安心の証とはいえなくなってきた。

 ISO 13482は、ブランド神話に基づく日本の安全に対する考え方に一石を投ずるものだ。どこまでのリスク低減を目標にするかはメーカー次第だが、試験方法=評価軸を標準規格でそろえ、軸がぶれない安全対策が図れるところに大きな意義がある。

 生活支援ロボット実用化プロジェクトは2013年で終了したが、経済産業省は2014年から「ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)」をスタートし、ロボット介護機器の市場創出を目指す。

 今後はISO 13482に基づく安全性確保を行いながら、現場での排せつや入浴支援、見守りなどの「ニーズ」「サービス」主導の生活支援ロボット開発が活発化するものと思われる。

関連するキーワード

ISO 12100

 機械類の安全性確保に関する国際規格。特にリスクとその重大度や波及範囲、発生頻度などを見積もる「リスクアセスメント」と、リスクを低減するためのプロセスについて記述される。

 機械類の用途(メーカーが意図した用途)に基づいたリスクアセスメントを行い、「本質的な安全設計」による危険源の除去などを行った上で、非常停止装置の実装などの安全防護策によりリスクを低減し、さらに「使用上の注意」表示を行って残留リスクの通知や警告を行うといった手順などがまとめられている。

「ISO 13482」との関連は?

 ISO 13482は生活支援ロボットに関するリスクアセスメントを前提にした規格であり、ISO 12100に準拠したリスクアセスメントが求められる。

ISO 13849-1、IEC 62061

 どちらも安全性能に関する国際規格。本質安全設計ができない部分は「制御」によってリスク低減を図ることになるが、その段階で利用される規格だ。

 ISO 13489-1は、機械類や電気機器、電子機器のハードウェアとソフトウェアの安全性能を「パフォーマンスレベル(PL)」として規定する。リスクアセスメントを行った結果、要求されるパフォーマンスレベル(PLr)よりも高い達成パフォーマンスレベル(PL)が求められる。

 IEC 62061は、電気機器や電子機器の安全性能をSIL(Safety integrity level、安全統合レベル)と呼ばれるリスク低減レベルの単位で表す。

「ISO 13482」との関連は?

 ISO 13482にのっとってリスクアセスメントした後、リスク低減プロセスでの保護方策として「制御」が必要な場合に、PLまたはSILを利用して、適切な安全性能のレベルを決められる。

日本品質保証機構

 一般財団法人日本品質保証機構(JQA、Japan Quality Assurance Organization)は、公正な第三者機関として、マネジメントシステム、製品、環境などに関する認証、試験、検査などを実施する。

 主にISO 9001やISO 14001などのマネジメントシステムの認証、電気製品や電子製品の試験と認証、計測器の校正、計量器の検定、建設材料や機械製品の試験と検査、JISマーク認証、情報セキュリティに関する認証と試験、地球環境に関する審査と検証、機能安全の評価と認証および支援を行う。

「ISO 13482」との関連は?

 ISO 13482への適合を認証する第三者認証機関。同機構はNEDOの「生活支援ロボット実用化プロジェクト」に参加して、生活支援ロボットの認証手法を開発した。

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