USB PDの給電能力が示唆するのは、DC給電方式の一大転換だ。例えば、次のような環境が実現する可能性がある。
AC電源アダプターが不要になる
壁面のコンセントにUSB PD端子が用意されれば、多くのDC駆動デバイスがそこから給電できる。また、対応するAC/DC変換機能を持つハブを利用して、1つのAC電源から多数のDC出力を取り出せる。デバイスからデバイスへの給電も理論的には可能なので、電源とデータケーブルの配線がずっとシンプルになる。
自動車や航空機の中でのPC利用やデバイスの充電にも利用できるため、いつでもどこでもデバイス利用や充電ができる環境が実現する可能性があるわけだ。
ちなみに家で眠っているAC電源アダプターの個数は、一説では国内で1〜1.5億個、世界では30億個という数にのぼる。USB PD対応のAC/DC変換装置が1個あれば、少なくともPCまわりの周辺機器の給電が全てまかなえることになり、世界規模では莫大な部材の節約が実現することにもつながりそうだ。
バッテリー充電時間が短縮する
大電力が利用できるため、バッテリー充電が短縮可能になる。現実的には対応機器の設計に依存する部分が大きいものの、試算では約30%の時間短縮ができるとされる。
外部結線と同様に内部結線もシンプルに
対応機器側の内部でも、電源用とデータ用の結線がひとまとめにできることになり、設計の自由度が増す。よりコンパクトかつ高密度な内部構造をとれる。
USB PDは、基本的には従来のUSBとの互換を保つが、1.5アンペアを超える用途、または5ボルトを超える用途の場合は、大電力給電に対応するためにケーブルは従来よりも容量の大きいものが必要だ。規格には盛り込まれなかったが、かつては次のような5つのプロファイルが考えられていた。用途の目安としてその仕様を表1に示す。
このような電圧と電流をどう選べばよいか、複雑そうに見えるかもしれない。しかし、USB PDの利用時にはユーザーはほとんど何も気にする必要がない。機器同士(正確にはUSB PD対応のコントローラー同士)が接続の時にネゴシエーションを行い、適切な給電を行うからだ。
図5に見るように、USB PDはデータ通信用の配線とは別に、給電用の電圧コントローラーを備える。接続する相手側に対応するコントローラーが搭載されていない場合は、従来通り5ボルトの給電を行うが、対応コントローラーがある場合には、接続の瞬間にお互いに情報を送り合い、適切な電圧での給電を行う手続きをとる。
この仕組みにより、相手先の仕様を確認しなくとも適切なプロファイルが自動選択され、利便性は従来のUSB利用時とほぼ変わりない。
こうした構成は、USB PDを給電専用のインタフェースとしても利用しやすくする。データ転送用の配線と給電用の配線が分離できるため、データ転送は必要なく、給電さえできればよい壁面DCコンセントやハブ(DC電源タップになる)がシンプルに構成できる。
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